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◆「なんかおかしい」と気付いてから身体が動くまでにかかるラグは短いに越したことはない
人がどんなことに、どんな時に違和感を感じるのかは、およそ経験則に左右される部分がその大半を占めると思うけれども、人によっては見た目、聴いた感じ、触った感じ、臭い、味といった五感の鋭敏さによって、「あれ?なんかいつもと違う」と気付くことがある。
例えば、壁に貼られているポスターの微妙な傾き、普段聴きなれない音、触った時の湿気や硬さ、普段嗅ぐことのない臭い、酸味や甘さの微妙な違い、といった具合いに、いつもと何かが違うことに気付けることがある。
そういう些細な異変に気付ける人たちというのは言うほど多いわけではない。また、ここが重要なのだけれども、「気付いていたとしてもその後に適切な行動ができない人」は多い。
ガスを使用していないビル2階バー店舗でのガス爆発、高速道路建設現場での倒壊事故、建設現場の足場崩落事故、ビル屋上のクレーン横転・転落事故、掘削工事現場での水蒸気噴出における基準値を大幅に超えるヒ素成分の飛散事故、今年記憶に新しい事故だけでもこれだけある。
ビルのガス爆発事故では、周辺の住民の話ではガス臭さに気付いている人たちは多く、爆発現場のバーの店長も気付いていながら煙草に火を着けてしまっている。これこそまさに、「異変に気付いていながら適切な行動ができない」典型例と言える。
ガス臭いところで火を扱えば爆発する、ということは誰もが理屈ではわかっているけれども、普段臭うことがないガス臭さに気付いていても日々の習慣でタバコに火を着けてしまうのは、理屈でもなんでもなく、ほとんど無意識の行動なのかもしれない。
異変に気付ける人は居たとしても、気付いた時の「異変の危険度」までは察知できなかったり、想像力が働かなかったりすれば、異変に対する適切な行動が伴うまでには時間がかかるだろうし、最悪、事が起きてしまうまで間に合わなかったりする。
「これってこのままじゃ危ないんじゃないかな」と思っていても、他人事程度にしか思ってなければ適切な行動が伴うことは極めて難しいと考えられる。
これは、空間やモノに対してだけではなく、人に対しても通ずる部分で、いつもと表情が違うとか、いつもと姿勢がちょっとおかしいとか、いつもと歩くスピードが遅いとか、肩で息をしているとか、いつもより声が小さいとか、普段と様子が違うことに気付けるか否かでその後の対処方法が全く別のものになり、それによって結果が異なってしまうことは往々にしてあること。
根性論はゴミのようである。
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