フリップフラッパーズ
今回は『フリップフラッパーズ』を紹介したいと思います。
本作品は押山清高監督の初監督作品です。そのためか、挑戦的な表現も多いように感じます。
制作会社であるStudio 3Hzは『プリンセス・プリンシパル』の元請けでもあります。
概要
中学校二年生の主人公、ココナは突然現れた天真爛漫な謎の少女パピカと、不思議な異空間「ピュアイリュージョン」へ出かけて、集めると何でも願いをかなえてくれる「ミミのかけら」を探しに行く……という筋立てです。
「ピュアイリュージョン」で起こる不思議な出来事はとても目まぐるしく、前回紹介した『少女革命ウテナ』に似て、抽象的です。
キャラクター
中学生が主人公ということもあり、等身大の女の子が多く出てきます。ココナは進路に悩む女の子ですが、心根はやさしいです。パピカは可愛らしいですが、中学生にしても幼いキャラ造形。
この二人は日曜朝の変身ヒロインのごとく、『フリップフラッピング』することで姿を変えることができます。変身前と変身後で髪の色が交換されるというキャラクターデザインは、二人の結びつきを強く示します。これはプリキュアでも行われたことはありません。
また、ココナの幼馴染ヤヤカは、敵側の組織でありながらココナへの甘さを捨てきれません。ヤヤカはめっちゃ可愛いです。
音楽
OPはZAQさん作詞・作曲・歌唱の『serendipity』、EDはTO-MASによる『FLIP FLAP FLIP FLAP』です。特に非常に疾走感のあるOPは必聴です。
TO-MASはミト、伊藤真澄、松井洋平によるアニメ音楽制作ユニットですが、ミトさんはアイドルマスターシンデレラガールズの楽曲、『FLIP FLOP』の作詞作曲を担当しているのが面白いですね。
TO-MASは劇伴も担当しています。
本作品の中で、BGMは不思議でパステルカラーな色使いの世界観の形成に役立っています。童謡のような、牧歌的な曲が多いですが、どこか耳に残ります。
ちなみに各話サブタイトルは『ピュアイコライゼーション』(四話)、『ピュアコンポーネント』(七話)のように、音楽用語からもじっていますが、これは監督の趣味だそうです。
学術的背景
本作品にはユクスキュルというマスコットキャラクターが現れますが、これはヤーコプ・フォン・ユクスキュルという環世界論を提唱した生物学・哲学者の名前から取っています。
環世界論とは、大雑把に言うと生物は外界の情報を取捨選択し、それぞれの種族にとって意味のある物質ばかり見たり聞いたりしているのだ……というような論です。
環世界とは言ってみれば、チョウを主人公にした世界、いもむしを主人公にした世界、そして人間を主人公にした世界、それぞれのことを指しています。この環世界は本作品内で説明されるピュアイリュージョンの正体です。
ピュアイリュージョンとは様々な主体を主人公にした世界、そしてココナとパピカはそこに潜って冒険する……という設定になっています。これは当然、本作品のテーマである『摩擦こそが世界の真理である』という命題に関わってくる設定です(これはキャラクターのセリフですが、後期ヴィトゲンシュタインが重んじた概念からの引用のようです)。
以上で『フリップフラッパーズ』の紹介を終わります。話の展開も手加減のない作品なので、次の回が気になって再生が止まらないタイプの作品です。とりあえず変身する三話まで視聴してみてはいかがでしょうか。