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芸能人の宿泊に思うこと

10月末、TV番組のロケで2人の芸能人にご宿泊いただきました(本日19日夜、放映です)。

まず、芸能人のご宿泊は素直に感謝しています。頂いたメッセージカードは宿泊者の目を引きますし、同じ部屋をご利用いただくだけで喜ばれることもあります。
が、個人的にTVに映りたくはなかったですし、マスコミを使って宣伝するつもりはありませんので、複雑な心境です。「芸能人が泊まられたこと」と「TV放映」は切り離して考えたい、と思っています。

正直なところ、ほかの宿泊者がいなかったら、またTV東京系でなかったら「撮影は不可」にしたかもしれません。今回の番組については、一切、打ち合わせもなく素のままの対応が放送されており、いわゆる“演出”はありませんが(お見送りのシーンも、すべての宿泊者を玄関先で見送っていますので、特別なことではありません)、これが事前に“つくられた”「取材」だったら受けなかったかもしれません。
自分がその番組を見たことがなかったうえにTV東京系だったので、失礼ながら注目度は低いだろうと思ったのと、地元などでロケや取材に接した際もTV東京系はほかの局に比べて“作為感”がなく好印象で、今回も取材班や制作部の対応が良かったのと、その日の宿泊者が歓迎されたのもあって受けた感じです。
これによって今後、意図しないことが起きる可能性もありますが、放映時およびその後の対応におけるこちらの要望は受け入れられているので、納得はしています。

宿としては普段どおりの対応しか行っておりませんし、宣伝の意図もありません。宿の方向性としては、あくまでも「『予約ルール』に基づいて対応し、コンセプトをご理解いただいた上でのご宿泊」が基軸です(そのため、番組サイドへ問い合わせがあった際も、電話番号は公開せず公式ホームページを案内する約束を交わしています)。
宿泊に至った経緯は、ロケ当日は教職員関係の大きな催しがあり「近隣の宿が、どこも満室だったため」ですが、受け入れる前に「宿の主旨、特徴、基本ルール」について説明し、ご理解をいただいているだけでなく、スタッフさんらに事前確認もしていただいております(そのあたり放映上では分からないかもしれません)。
行程の関係上、スタッフは事前に松江の宿を取っており、21時以降~翌朝は撮影が回っていません。「あくまでも“3人の旅人”として迎えた」ので、TVに映っていない通常の会話は、うちの宿らしい空気感になり、そこに「特別」なものはありません。また上記のとおり「ほか2軒が満室だったため来られただけ」で、単なる偶然の出来事です。

自分は新聞社に2社12年勤めていたので、ある程度は「マスコミ業界」に詳しいです。自分が在職していた10年~20年前と「現代」とは“報道の在り方”が違い、役割や捉え方は変化していますが、読者・視聴者に対する「影響力」は変わらない、いや「ブームをつくる」という点に限れば、大きくなっていると思います。
この、マスコミの「影響力」については、考えさせられるものがあります。
現実的な話をしますが、「真実を報道する」のではなく「報道されたことが真実だと思わせる」のが、マスコミの存在。大抵の人は「報道された内容に対して、疑ってかからない」ので、「検証されない情報だけが独り歩きしてしまうこと」もあるのです。
今は特に「ブーム」をつくって“誘導”する傾向があるので「本質」に行き届いていないと感じることが多々あります。新聞各社やTV局は、昔は各社ごとで「見解」「方向性」に「違い」を示すことでライバル視する傾向がありましたが、今は「同じ方向に飛びつき、流れに早く乗るのを競う」という感じです(すべて一概には言えないですが、ライバル関係の捉え方が「内容」よりも「早さ」にある感じになりつつあると思います)。そして、良くも悪くも「熱しやすく冷めやすい報道」で、見る側もそうなりがちです。
特に新聞においては「見出しやキャッチコピーしか読まない人」が多く、年齢が低くなるにつれて「活字をじっくり読む習慣」がなくなってきていることもあって、記事内容も「要点だけを短くまとめる傾向」が強まっています。「掘り下げる報道」は、TVのワイドショー的な番組か週刊誌が主で、新聞では見られなくなりました。
個人的には、TVで放送されたものよりも、歴史や経緯、そして“想い”といった「本質的」なものを大切にしたい、とは思っていますが・・・。

TV番組だと、例えば「生番組なのに数日前から何度もリハーサルし、台詞も一字一句決めている。しかも天候不良などで観光客が歩いていなかったりして映像と台詞が合わず――」。といった放送があるのが事実ですが、今回、そういう要素は一切ありませんでした。TV番組というよりも「旅人」として捉えることができたのは、良かったと思っています。
なので、「芸能人が泊まったから」ではなく、あくまでも「宿の特徴に共感して」来てくださる人が増えてくだされば幸いです。

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