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「好き」「嫌い」「得意」「苦手」の関係性②

2年半くらい前に現在の建物を使わせていただくことが決まり、旅人宿を運営することになって、夏の終わりで開業から2年になります。

最初の半年くらいは、自分のやりたいことと実際に入ってくる予約の相違に悩まされたり、売り出し方などもよく分かっていなかったりでしたが、少しずつ経験を積み重ねたことで方向性が定まり、「客層」としては理想的な感じになりつつあります。
経営に関する才覚や経験は全くなく、はっきり言って「苦手」なので、まだ採算ラインで考えると7割程度。貯金を切り崩す一方なので、このままでは来年以降、厳しい現実と直面する感じではあります。
それでも、予約ルールを緩めて雰囲気が壊れるほうが嫌ですし、また、「口コミを頼んで書いていただく」といった作為的な宣伝はしたくありません。
気持ちの問題ですが、そこは「正攻法」で、「内容を読んで宿のコンセプトを理解していただき、予約の際に必要事項を記載していただく」→「詳細を再連絡し、確認をいただいてから予約成立」という「堅実」な流れは譲れない思いがあります。

金銭的な問題から、おしゃれさや美しさを追求するのは限界です。
現状で、どれだけ満足していただくか。そう考えるしかありません。
そのために自分が重視しているのは「事前やり取りを丁寧に行うこと」と「相性が良い状況をつくること」。
文章を書くこと、読むことは「得意」でもあり「好き」でもあると自負していますので「メールでの事前やり取り」は全く苦になりませんし、この段階で丁寧に応じることで「相性」を鑑みた雰囲気づくりもできます。宿泊者同士が集い語らう「コミュニティ」は大切にしたいので、特に繁忙期は客層を絞り、「相性が合わない状態」をつくらないようにしています。
設備面で劣っても不評を買わないために、たどり着いたことです。

少し話を戻しますと、①でも記したように「読むことが『苦手』な人にも、読みやすく工夫すること」は大切です。間違えて捉えられては、お互いに困るだけですから。
ただ「読むことが『嫌い』な人」だと、一つ前の段階で停滞します。一般的には「そこは電話などで臨機応変に」となるのでしょうが、うちは「相性」を大切にしたいので「文章での事前やり取り」は必須条件。「苦手」のうちは対処法次第だと言えますが、それが「嫌い」な人は「仕方ない」と割り切るほうが、お互いに良いと思っています。
予約が成立する際「メールは苦手なので」と書かれていることも多々ありますが、「苦手」の中で最低限のことをしてくださっていれば、次からやり取りが必要になれば、それは電話でも構わない、となります。既に信頼関係は出来上がっていると言えますから。
しかし、最初から「ホームページなどを読まずに電話をかけてくる人」は、大抵が「ゲストハウスに対する固定観念」によるもので、突き詰めるとその殆どが「読む、書くといった行為が『嫌い』」だという事実に行き当たります。

自分は「『嫌い』と『好き』との間では、簡単に信頼関係を結ぶことはできない」と思っています。「苦手」には誠意がありますが、「嫌い」にはありません。
なので、「文章でのやり取りが必須」という“線引き”は大切にします。「言った、言わない」の議論になってもいけないですし、意思の疎通も図れません。ましてや予約の段階では「未知の人」ですから、そこは意思を「文章で示せるか」が重要だと思います。

自分が今の宿を運営しているのは「水木しげるロードのまちづくりの原点が『好き』だから」で「水木しげるロードを“純粋に”楽しみに来られている人の姿を見るのが『好き』だから」です。なので、地域の観光客層的に女子旅とファミリーを中心にすることで、自分が目指す空間に合い、うちの雰囲気を「好き」と言ってもらえます。
今、主流となっている一般的なゲストハウスとしては、亜流かもしれません。あくまでも、自分にとっての、そして境港・水木しげるロードの観光客にとっての「好き」「嫌い」「得意」「苦手」の関係性から形づくった宿です。
集客だけのために「嫌い」な空間はつくれません。批判や非難もありますが、そこは固定観念を持ち込まないでほしいと願っています。

子どものころに「苦手(嫌い)」なことに、もっと一生懸命に取り組んでいたほうが良かったのか――。
今となっては、よく分かりません。
ずっと、「好き」か「得意」を基準に物事を考えてきたので、「嫌い」「苦手」に対する辛抱強さはないですし、表面的に取り繕う“大人社会の生き方”ができず“社会不適応”だと言われることもありました。一方で、周りの人ほど、ストレスに苛まれはしなかったと思っています。

結局、何事も「好き」の延長になければ、「楽しい」と言えないと思います。
殆ど「好き」なことだけをやって生きてきたとは言えるので、その結晶を今に生かし、うちの宿を見つけて来てくださった旅人さんに楽しんでいただければ幸いです。


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