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103万円の壁撤廃によるGDP増加について考える
前回の記事では、政府の試算する基礎控除等を引き上げることによる税収減7兆~8兆円について検証してみました。
この検証により、税収減の計算は、単純に現在の給与所得階級別人数に、それぞれの減税額を掛け合わせて試算しているのではないかとの推測ができました。
今回は、この減税策により消費が増え経済活性化が図られることにより、税収が増える効果について考えてみました。
1.パート、アルバイトの労働時間、所得の増加
学生アルバイトの場合
103万円の壁がなくなることにより、学生アルバイトが親の扶養のまま働ける所得の上限が178万円になり、どの程度所得が増えるのかについて考えます。
前回紹介したブログhttps://ameblo.jp/teru0789/entry-12873341386.html
では、これについて考察されています。
このブログによると、
「マイナビ調べでは、年収の壁が無ければもっと働きたいと考えている大学生が73.3%もいることがわかりました。引用:マイナビ:https://career-research.mynavi.jp/wp-content/uploads/2023/04/2023_daigaku-baito.pdf」
「マイナビ調べでは、実体年収(60~90万)と希望年収(90~103万)が20万円ほど分布がずれています。」
とのことです。希望年収20万円アップとして、年収103万円から120万円まで正規分布として、平均給与111.5万円とすると、所得増加額は
(アルバイト人口)×(もっと働きたい割合)×(111.5-103)
=431.4万人×0.733×(111.5-103)=3953億円
となります。このアンケートと希望年収20万円アップに対して所得増が平均12.5万円というのは、納得できる条件と思われます。
パート主婦の場合
ブログでは
「パートでは、103万、130万の壁で就労調整をしている人が全体の13.4%であることがわかっています。
引用:厚労省:https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/170-1/2021/dl/2_02.pdf 」
となっていますが、この調査の設問は「現在の就業形態を選んだ理由」となっており、就労調整をしている割合を表していないのではと考えました。
株式会社野村総合研究所の「「年収の壁」を意識して年収を一定額以下に抑える有配偶パート女性の割合は約6割で、2年前と変わらず」というアンケート調査では、年収の壁を意識して年収を一定額以下に抑える有配偶パートは、61.5%という結果となっています。
また、社会保険適用の壁130万円があることから、当面は120万円程度までの労働時間を増やすことを想定して、所得増加額は、
(パート労働者数1035.5万人)×0.615×(120-103)=10826億円
アルバイトとパートで約1兆4779億円の所得増になります。
2.所得税減税分のGDP押上効果
政府試算の7.6兆円の減税はGDP増加にどのように寄与するかというと、減税による乗数効果を考えることになります。減税によるGDP増加は乗数効果により大きくなるはずですが、内閣府などの短期日本経済マクロ計量モデル(2022年版)では、GDP1%の所得税減税よるGDP増加は1年目0.21%、2年目0.33%となっており、乗数効果は0.21としています。
この数値は、減税分が貯蓄に回り消費に回る分が少ないためとされていますが、減税をしたくない政府の数値として捉えた方がよいかもしれません。
他に公な数値がないので、この数値を使うと減税7.6兆円によるGDP増加は1.6兆円となります。
3.GDP増加による税収増加分
次に、GDPと税収の関係については、政府は税収弾性率を1.1としていますが、過去15年間のデータでは1.28と約3倍の効果となっていることが報告されています。
直近4年間ではGDPが1兆円増加すると税収は0.21兆円の増加になっていますので、この数値を使うと、所得増加分1.5兆円と所得税減税によるGDP増加分1.6兆円を加えたGDP増加分3.1兆円による税収増は0.651兆円にしかなりません。
7.6兆円の減税による税収増はたったの0.651兆円?
4.103万円の壁撤廃による、デフレからの脱却
これらの試算は減税による乗数効果とGDP増加による税収弾性率の置き方により大きく変化しますが、政府試算ではこの数値を低くとらえているため、このような試算となりました。
政府は、国民の手取りを増やすことによる経済活性化については消極的でではないかと考えられます。
所得税減税を所得が増えることによる景気浮揚策とすれば、上記試算よりGDP増加の効果が大きくなり、GDPが増加することによる税収も増えるものと思われます。
しかし、所得減税を単なる低所得層に向けた救済策とすれば、上記試算のようにGDP増加の効果は低く、単なる税収減となってしまうのではないかというのが私の考えです。
今回の議論は、基礎控除を引き上げることにより、国民の手取りを確実に増やして、デフレからの脱却をはかる機絶好の機会です。
与党も野党も国民の手取りを増やす方向で協力してもらいたいものです。