中小企業の補助金活用
こんにちは、中小企業診断士の長谷川です。
今回の記事は中小企業支援関連の記事です。
中小企業が補助金を活用する際の参考にしてください。
補助金・助成金とは
補助金・助成金は国や地方公共団体が政策を推進するために提供する返済する必要のない資金です。
補助金や助成金は、税金なので、次のような制約があります。
・政策目的に合った使い方(事業計画)か?
生産性向上、販路開拓、IT化推進、雇用の維持、事業承継の円滑化、働き方改革など行政の政策に合致した使い方かどうかを事業計画を見て判断します。
・支給対象者の確認 (提出書類)
提出書類により、補助金を受け取る資格があるかどうかを判断します。
・不正はないか? 資金使途(帳票類)後払い
資金の使い道に不正はないかを見るために、仕様書、見積書、契約書、発注書、納品書、請求書、支払い証明書、領収書、現物写真などの帳票類をチェックしてから、後払いになります。
・資金を有効に活かせる事業者に提供(審査)
雇用や働き方に関する厚生労働省の助成金などは、上記条件に合致すれば予算がある限り支給されますが、経済活性化のための補助金は申請すれば誰でももらえる訳ではなく、事業計画がしっかりできていて、行政の産業振興政策に合致したものの上位が採択されます。
補助金と助成金では何が違うのか
■ 国の補助金・助成金は一般的に経済産業省と厚生労働省で名称が分かれるようです
補助金 は経済産業省の政策で設けるものです
申請した補助事業に対して審査があり、政策目的にあった優秀な案件が採択されます
助成金 は厚生労働省が雇用の維持や拡大を目的に設けるものです
雇用などに関するものは、条件が合えばもらえます
■ 東京都の扱うものは産業・労働関連とも助成金としていますが、目的は同じです
主な補助金
1.事業再構築補助金
コロナ禍で経営に大きな影響を受けた事業者が、これらの経済社会の変化に対応するために行う思い切った事業再構築の取組を支援する補助金です。
令和2年度に1兆1480億円という今までにない大規模な補正予算が組まれ、通常枠でも最大8000万円の補助上限額だったため、多くの事業者がこの補助金にチャレンジしています。
2.ものづくり補助金
生産性向上に資する革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資を支援する補助金です。
平成24年度の補正予算で新たに導入された補助金で、最初は製造業の革新的なものづくり技術の設備投資を促す補助金でしたが、のちに革新的なサービスに対しても対象となり、幅広く機械設備、システム開発などの設備投資に活用できる補助金となっています。
3.IT導入補助金
中小企業・小規模事業者等が自社の課題やニーズに合ったITツールの導入を支援する補助金です。
中小企業ではITツールの活用が進まないため、生産性の向上を図るためにITツール導入を支援する補助金です。
ITベンダーを通して補助金申請をするために、ITベンダーの営業ツールとなりやすく、本当に最適なITツール導入ができるのかという課題がこの補助金にはあると筆者は考えています。
4.小規模事業者持続化補助金
小規模事業者が取り組む販路開拓の取組に対して支援する補助金です。
事業者の90%近くが小規模事業者なので、多くの事業者が活用できる補助金です。
経営計画作成のハードルに対して補助上限金額が少ないですが、経営計画を作るきっかけとなるため、企業経営にとっては非常に有効な支援策だと思っています。
補助金を活用する際の課題
1.目的に合った補助金・助成金を探すのが大変
どのような補助金・助成金があるのかを知っている経営者は少ないと思います。また、設備投資資金として使えるのかなど、どのような取り組みに活用できるのかもわかりにくいということも活用の際のハードルとなっています。
2.補助金の募集期間が短く、常にチェックしておく必要がある
補助金の募集はいつでも行われているわけではありません。また募集期間が短いため気が付いた時には募集が終わっているなんていうこともあります。
令和2年度から始まっているものづくり補助金・小規模事業者持続化補助金・IT導入補助金は、この点を改善して年間で何回かの応募スケジュールが設定されることにより、使いやすくなっています。
3.募集条件、対象経費など制度の内容が複雑
この補助金は活用できそうだと思っても、募集条件や対象経費などが細かく設定されていて、本当に活用できるのかわかりにくくなっているのもハードルとなっています。
4.提出書類作成が大変
事業者にとって一番のハードルは、いずれの補助金も提出書類の作成が大変なことがあります。何回か申請書を作成した事業者の中には申請書の書き方に慣れている方もいますが、はじめて申請書を書く事業者には、何を書いていいのかわからないというのが、現状だと思われます。
5.補助金は申請しても採択されない場合が多い(採択率)
補助金は応募のあった申請に対して審査があり、優秀な取り組みに対して採択される仕組みになっています。事業者の取り組みが、競争力強化につながるのか、市場のニーズに沿ったものか、実現可能な取り組みなのか、費用対効果はどうかなどの基準に沿って審査されるために、申請しても採択されない場合もあります。採択率はその時の応募者数や予算額により変動するため運により左右される面もあります。
6.採択後の報告義務が面倒
採択されても、計画に沿った事業の実施についての報告が必要です。特に補助金をどのように使ったのかを証明する帳票類を間違いなく報告する必要があり、この実績報告が非常に大変です。
7.補助金・助成金は後払い
補助金・助成金は後払いとなるため、十分な自己資金を用意するか、金融機関からの融資を受け必要があります。補助金を申請する際には金融機関にも相談の上、資金繰りの目途を立てておく必要があります。
補助金活用術
補助金をもらうこと自体が目的になっては意味がない
いくら返さなくてもよいお金だからと言って、もらうことが目的になっては意味がありません。 例えば
いらない設備を無理やり申請
自分で進んで取り組みたい事ではない計画
など補助金をもらうことが目的になっては意味がありません。
補助金は、事業を有利に進めるための手段に活用することが重要
新たな取り組みや設備導入には資金が必要です。
このような新たな取り組みを自己資金だけで進めることができない場合に補助金を活用することが有効です。
補助金活用の目的
・販路開拓 ・設備増強 ・新製品開発
・生産性向上 ・IT活用
・人材育成 ・人材採用 ・職場環境改善
使い勝手の良い補助金とは
1.申請が簡単
補助金・助成金の中には申請が複雑で必要書類も多かったりするものがあります。
2.金額が大きい
金額の多さも重要です。大変な思いをして補助金申請をして実績報告をしても、それらの苦労に見合う金額かどうかも重要です。
3.自己資金負担が小さい
補助金は必ず自己資金が必要になります。対象の事業にかかる金額に対する助成金の割合が高い方が、やる気が出ます。
3.採択率が高い
採択率の低い補助金もあり、申請した補助事業がどんなに優れたものでも、採択される確率が低いと応募する気もなくなってしまいます。
4.対象経費の制約が少ない
通常の補助金ではパソコンや自動車などの汎用性の高いものは補助対象にならないことも多いです。人件費が対象になるか、設備投資が対象になるかなど制約が少ない方が使いやすい補助金だと言えるでしょう。
補助金の募集-ここがポイント
補助金の募集要項をよく確認して下記のような項目について確認するようにしましょう
▪補助金額 申請の手間と補助金額とのバランスもチェック
▪助成率(重要) 1/2か2/3かで自己資金負担が違う
▪採択率(重要) せっかく応募しても採択されなければ意味がない
▪申請書の様式 なるべく簡単なものがよい
▪補助事業期間 期間が短いと、できることが限られてしまう
▪対象経費(重要) 設備費、人件費、家賃が含まれるか
▪採択後の報告義務 これが結構大変
▪予算額 予算が少ないと採択率が低く、すぐに終了
▪面接の有無 面接のない補助金が最近多い
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