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メタバース美術展覧会のつくりかた【第4章:たくさんの人に来てもらうために】

この章では、来場者を増やすために行っていた広報活動や、協力してもらえる人を募るなどの渉外活動について紹介していきます。


広報活動について

広報班の活動は主に、SNSアカウントの運営、ハガキDMとチラシ作成、メインビジュアルの考案です。このページでは、各活動においてどのようなことを考え、どの時期に活動していたのかを詳細に説明させていただきます。広報に力を入れていきたい方には必見の内容となっておりますので、ぜひご一読ください。

広報活動の目的

メタバースという新しい形の展示方法は珍しいでしょう。そこで広報活動を始めるにあたって、実際に参加してくれるであろう人の目的や来場を阻害する要素を考え、広報を通じてそれらを解消するということが大切だと話しました。では、来場を阻害する要素とは何でしょうか?私たちは、主に3つであると結論づけました。

1.メタバースへのハードル
メタバースの使い方がわからない、メタバースでアートを公開することのメリットを感じない人たちにとっては非常に高い壁になるでしょう。

2.作家に関する問題
有名な作家ではない人の展示なので名前だけではどのような展示か分からない、作家さんと実際に会うことができないことに価値を感じない人も一定数いるのではないでしょうか。

3.作品に関する問題
作品を実際に見たいと考える人や、作品が買えなかったりコレクター向けではないということに違和感を感じる人も多いのではないかという意見も出ました。

4.展示過程のアーカイブ化
4rootsがメタバース美術展の先行事例となるために、
・展覧会制作の過程
・展示室制作の際の技術的な知識
を投稿することを心がけていました。

これらの阻害要因を少しでも緩和すること、そして展示に来てもらう(さらに口コミで広めてもらう)ために広報活動をすれば良いのだと考えました。

そこで、私たちはSNS投稿、メインビジュアル、DM(ビラ)での告知に力を入れることに決定しました。SNS投稿では阻害要因の緩和を、DMでは口コミを広げるため、メインビジュアルはSNS投稿やDMをより魅力的にするための施策として活用しました。

SNSアカウント投稿

SNSアカウント投稿にあたって、必要なステップは3つです。
1つめは、アカウント設計
2つめは、投稿内容の剪定
3つめは、SNS投稿のルール作りとスケジュール管理です。

今回は、アカウント設計のやり方について説明していきます。

◎アカウント設計

実際に分析している様子

6か月前には、まず大枠のアカウント設計をしました。
ターゲットの課題やそもそもターゲットのペルソナの再確認などをしつつ以下の表のようにまとめることが一番最初の手順です。この課題設定などを大きく外してしまうと、それに伴い投稿の方向性がずれてしまう可能性が高くなるのでより意識して取り組まれることをお勧めします。

私たちは、instagram, X, Facebookを運用することに決定しました。各SNSの特徴と弊団体が利用した理由は以下の通りです。

・instagram:利用者に作家さんが多いから(作家さんに対する認知度の向上)
・X:利用者に日常的にメタバースを使用している層が多いと推測。
・Facebook:特定のグループ(美術に関心がある人たち、メタバースに関心がある人たち等々)にリーチできる機能がある。

展覧会開始5か月前にはは、アカウントのMVP(Minimum Viable Product)を作りました。
アカウントの方向性がある程度決まっている中で、「アカウント運営における経験値や運営方法が定められない」という課題を解決するために、鍵垢で疑似投稿などをすることにより、投稿スケジュールや役割分担を決定するようにしました。

疑似運用を重ねたことで、一定の経験値が溜まったので、実際に運用を開始する8月に向けてさらに「どのような投稿をすべきか」の議論を再開することにしました。

(参考)他アカウントから参考にしたインサイトをまとめ
・アカウントの人格や色を統一する。
・表紙を揃える。
・明度は低めでも彩度を落とさないことで華やかを出す。
・文字量 < 画像からの情報量 であること
・1回の取材で、画像投稿とリール投稿のネタを持ってくる
→取材から投稿づくりがテンプレ化されることによってとても計画的に投稿づくりすることが可能になっている
・文字の入れかた
空間の見せ方の参考になる(基本一点透視図法)
基本は目の高さ、たまに高さをずらす(上からにする)

メインビジュアルの作成

メインビジュアルは、そのビジュアルを見た人たちがメタバースを連想させるもの、興味を喚起させる画像を作ろうという観点から作成しました。そして、展示物を制作する上で、原点となる共通イメージとなるようなものにしております。

実際に作成したメインビジュアル

【メインビジュアル絵コンテ制作】
・「すり」の程度:細かくてシーグラスのような、粗くて「肌理は見えるけど変則的(ドットにならない)」
・ガラス棒を積み上げる(手が映っても面白い)(立体的に展開する空間を)
・ガラス棒を積み上げた上に人が入っているもの(仮)
・ガラス棒は箱(半透明のプラケースなど)でも可能。
・ガラスの後ろに見えるのは具象物(なんらかの特性をもつ物)でない方が良い
・縦向きか横向きか
・メインビジュアルは磨りガラス的な質感の立体物を使用して撮影

渉外活動について

渉外班の活動は主に2つです。

・作家さんや技術に長けている人(大学の技術センターの職員の方や教授)との接触/連絡
団体の活動に賛同して、参加してくれる作家さんとの交渉(募集をかけ、企画への参加の交渉や、出品作品などの相談)を行いました。実際に企画班のメンバーと展示室制作のペアでの活動を開始するまでが渉外チームの担当領域としています。

・資金や機材の調達
私たちは、必要な機材や資金をILOVEYOUプロジェクトという東京芸術大学主催の助成金プロジェクトに参加することで賄いました。しかし、読者様の中でそのプロジェクトを利用できるケースは限られていると考えていますので、割愛させていただきます。

この項目では、団体の活動に関わる作家さんとの交渉についてをメインに「どのような議論をして、どのような行動を取ったのか」についてお話しさせていただきます。

4rootsという展覧会のコンセプトから、”自らのルーツに関連する作品コンセプトを軸に制作し、その作品を置く展示室構想に意欲的であること”を基準に声をかけていきました。

当初ざっくり、団体としてスケジュールはこんな感じだよねというものを決めつつ、それを対外交渉用に修正しました。

【大まかなスケジュール】
・5ヶ月前:作品コンセプトを固める、展示計画決定
・4ヶ月前:作品制作開始
・3ヶ月前:展示室作成開始
・2ヶ月前:作品制作完了
・1ヶ月前:展示室作成完了
・直前:作品データを展示室に搬入

この進捗表をもとに、どこのチームが遅れているかや、やりとりの可視化を図ろうとしています。

作家さんの決定が滞ったり、スキャンの機材が使えない期間があったりとトラブルもありました。展示室の作成も苦戦したペアは直前まで(合計で3ヶ月かかる)チームもありました。

制作前の作家さんへのインタビュー

制作前に作家さんへのインタビューを行うことで、運営サイドが作家さんの作った作品や生まれた背景や思想、創作のプロセスについて深く理解すること、そして作家さん自身の人となりや生き方に共感することでより良い作品作りができるだろうと考えました。

以下が当時のインタビュー事項です。

【制作場所・撮影場所について】
・撮影場所は?
・自身で撮影可能か?(撮影方法)
・アトリエでのエピソードは?
・特に見せたい部分
  案ex) ・作家自身が映り込む
      ・モノにキャプションをつける

【制作過程】
・3Dスキャンしたい道具など
・過程をどのような媒体で見せたいか(映像や写真、イラスト、文章等)
・制作する上での拘り
・普段どんな手順、スケジュールで制作しているのか

【作品展示室】
・作品情報(種類・サイズ・材質・制作時期)
・どんな空間で見てほしいか
・鑑賞者の感想を残すことの可否
・鑑賞時にほしい仕掛け(動かせる、音声が出る、中に入れる、変化する等)

【着想のきっかけ】
・インスピレーション元となったモノはあるか
・これまでで紹介したい作品(今回に繋がるものなど)
・個人的な関心事(ニュースなど?)
・制作のきっかけとなる経験、エピソード
・制作スケジュール

【作家情報】
・来歴
・個人のプロフィールに飛べるリンクはあるか
・販売プラットフォーム等への案内(任意)をするか

インタビューを通じて、相性を考え、企画チームと作家さんのペアを作成しました。

実際に行動していたわけではありませんが、技術者やメタバースに関する有識者を集めるために、以下のような資料を作成していました。読者様の中で同様のケースで「どう人集めをしよう」と悩まれている方に少しでも参考にしてほしいと思っているので、興味がありましたらぜひご一読ください。

技術者向けステートメント

ここまでお読みいただきありがとうございました。
何かお役に立てれば幸いです。

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