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英検意見論述エッセイの出だしを考察しました

はじめに

自習に取り組んでいるみなさん、おつかれさまです。
カリスマではない英語講師です。
今回は英検2級の過去問の回答サンプルを共有するとともに、エッセイの出だし、つまりイントロダクションについて考察してみます。
準1級レベルのオープニングにも役立ちます。


英検2級 意見論述エッセイ

2024年から試験形式が新しくなっても意見を述べるエッセイは続くようですね。

2級の英作文は、80-100語の筆記量が目安とされています。

意見(Thesis)、理由とそのサポート(例、理屈など)を2セット、そして結句、のトータル6-7文の量が目安です。

さて、今回は少し古い、英検2級、2016年3回目の問題をお借りします。

設問の文言(Prompt)と理由に使ってよい「観点」(issues=論点/争点)は:

Nowadays, many Japanese people are doing volunteer work. Do you think the number of these people will increase in the future?

  • Community

  • Experience

  • Payment

これら「観点」は使ってもよいし、使わなくてもよいとのことですが、使った方がゼロから理由を考えるよりも断然、楽です。時間の節約にもなります。

サンプル回答

以下の例は「非カリスマ的」ですので、内容は大したことありません。ごく一般的な考えで、世間話で言われそうな内容です。論理的になるようには十分気を付けています。

CommunityとExperienceに関する理由を使ってみました。Communityのためになる、ということと、進路に役立つ経験となる、という理由です。それぞれに詳細を加えました。Communityのほうは、ごみを拾えばきれいになる、ということを例に使い、Experienceのほうは、進学や就職に有利だという理屈を加えました。

ひとつ目の理由はbecauseの文節で示しています。ふたつ目の理由はAlso, 以下の文章で述べました。例はもちろん、For example, 以下に述べ、ふたつ目の理由のサポートはつなぎ言葉なしでそのまま続けました。

文の構成はほとんどが単文(主語と述語の組み合わせがひとつだけ)です。becauseを使った副詞節(従属節)を用いた複文を2文だけ使用しています。2級でしたらこの程度で十分だと思われます。複文のかわりに、", and" や ", so" で文節をつなぐ重文でもよいので、複数文節の文章は使う方がよいでしょう。

I think more Japanese people will volunteer in the future. I feel this way because many Japanese people know that volunteering makes their communities better. For example, picking up trash from the streets can make city centers cleaner. Also, companies and universities want their applicants to have volunteer experience. Students with volunteer experience are more likely to be accepted. Because society will be a better place, and because young people want to go to a good school and work for a better company, more people will try volunteering in the future.
[91 words]

以下、オンラインアプリによる和訳です。語尾が不ぞろいだったので、少し調整しました。

将来的には、もっと多くの日本人がボランティアをするようになると思います。なぜなら、多くの日本人はボランティア活動が地域社会をより良くすることを知っているからです。例えば、街のゴミを拾うことで、街の中心部はよりきれいになりえます。また、企業や大学は志願者にボランティア経験を求めています。ボランティア経験のある学生はより受け入れられやすいでしょう。社会がより良い場所になるので、また、若者は良い学校に行き、より良い会社で働けるので、将来、ボランティアに挑戦する人が増えるでしょう。

サンプル回答の解説

結句の部分で要点をまとめた言いかえをおこないました。言いかえの作業は2級では少し難しいと感じるかもしれませんね。そういう場合には、『以上述べた2つの理由により、[主張の繰り返し]』という言い方が楽だとおもいます。その場合は、

Because of the above two reasons, I believe that more Japanese people will participate in volunteering in the future.

という風に書くことができます。論点を繰り返すときには一応promptのコピペではなく、言い換えを使用しています。トータルでは、すこし少なめの78語になります。

気になる、"I have two reasons" について

よく生徒さんが使うのが、「I have two reasons」というフレーズ。

このようなフレーズ、実際、使っていませんか?

I have two reasons.
I have two reasons to support my opinion.
There are two reasons why I feel this way.

こんな言い回しがどうも気持ち悪いのですが、あまりにも生徒さんの間に定着しすぎていて、「変だと思う」と言えない空気があります。テンプレートとして覚えてしまっていて、スラスラと使うのですから、どこかでならったのでしょうし、気が引けて「直してください」なんて言えません。英検の参考書や公式のサンプルにも使われているのですから、非カリスマの私のほうが絶対的に不利ですし。

本心は、大学、大学院修士課程、博士課程と文系学部で学んできて、そこそこの量の文献を読んできた(辛い)経験から得られたであろう感覚にもとづいて、主張の後に、2つの理由があります、という予告には強い違和感を感じていて、変だ、なのですが。

そこで、上のサンプルでは、2文目でこの手のフレーズを入れることなく、すぐに理由を述べました。

主張は理由でサポートする、というアカデミック議論の基本ルールの徹底にもつながるやり方です。

語数にこだわらなければ、文を分けずに、主張の後にすぐ because の文節をつなげても構いません。語数の確保より、議論の基本を定着させる方が優先順位は高いと考えます。

さて、I have two reasons という1文を節約したことになりますが、全体の語数は少なくありません。つまり、理由が2つあるという予告がなくても文字数はまあ大丈夫ということです。

理由のあとに続く例や理屈をよりしっかりと書く方がエッセイが豊かになりますし、その結果、より高い得点が期待できます。

意見論述エッセイのはじめかた

ここでは、意見を述べる議論をどのように始めるとよいか、提案してみたいと思います。I have two reasons に代わる、テンプレート化できる表現にも触れます。

2級のエッセイは1段落でよいですが、準1級からは複数段落で書かなければなりません。

基本的に英語の論文において、「一つの段落は複数の文章から成り立つ」ことになっていますので、一番最初の段落も2文必要になります。

つまり、“I have two reasons.”を使わないで、イントロダクションを2文にする必要があります。かといって、あまり凝ったオープニングを考えている時間はありません。エッセイの得点源である論理的な議論へ時間がかけられなくなりますから。

洋書のライティング・テキストにいろんなスタイルが紹介されているのですが、英検の英作文のような短いものに使えそうな2種類を紹介します。2級でも使えると思います。

1)自分の選ぶ立場ではない意見があることを認めたうえで、「しかし私は」と自分の意見を述べるパターン。

Some people think that the number of Japanese people who volunteer will decrease in the future. However, I believe that more Japanese people will participate in volunteering.

自分のものと異なる意見に先に触れてから、自分の意見を述べましょう。

2)世間一般に認められる事実で背景をあらわし、質問形式でトピックを提示するパターン。日本人の私たちにはなじみのないものかもしれませんが、プレゼンやエッセイのオープニングでよく紹介されているものです。クエスチョンがトピックと主張のつなぎの役割りをします。

Volunteering has been common among Japanese people these days. Will more Japanese people do volunteer work in the future? I think they will.

こちらはpromptの内容を活用できまるので便利ですが、全く同じ言い回しにならないようにだけ注意が必要です。

そして、ひとつ目の理由を述べるときは、それぞれのパターンの最後の文に "because many Japanese people know that volunteering makes their communities better" という副詞節(従属節)を加えればいいでしょう。

準1級、1級レベルではどのようになるか

上に提案したものは簡潔なバージョンですが、準1級にでも使えると思います。もう少し語数を多くしたものも提案しておきたいと思います。準1級や1級のエッセイに活用できるでしょう。

1)このパターンは本来、「~という考えの人がいる一方で、…という考え方もいます。私の考えはコレコレです」というものなので、うえで紹介したのは省略バージョンです。すべてを書くとこのようになります。ちなみに、Pro-Con Hook といわれたりもするようです。

Some people think that the number of Japanese people who volunteer will decrease in the future, while others think it will increase. In my opinion, more Japanese people will participate in volunteering.

質問されていることについて、賛成と反対の立場がありますよ、と述べた後に自分の意見を明示します。賛成と反対の立場を述べるときに複文を用いることができるのもいいところです。上では ", while" でつなげましたが、although/though や whereas も使うことができます。however を使って文節をつなぐ場合は "; however," のように句読点のルールを守りましょう。

2)のパターンは基本的に同じです。少し語彙を工夫してみました(AIクンがですが)。

Volunteering is becoming increasingly common in Japan these days. In my view, more Japanese people will participate in volunteering in the future.

第1文は prompt の内容が利用できるのですが、最近の話題ですから、広まってきていますよ、とか、議論の的になっていますよ、とか、世間の関心が広まっていることを示すとよいと思います。

おわりに

以上、英検英作文のエッセイについて考えてみました。

英検にとどまらず、留学した際にも役に立てばとイントロダクションに感じる違和感を扱いました。

イントロダクションについてのこだわりを述べておいてなんですが、一番大切なのは、本論の論理的な議論ですので、イントロダクションはサラッと仕上げたいですね。

ただし、違和感なく!

それでは、今後も継続して、自習がんばりましょう!

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