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Twitter(現X)乗っ取りアプリを作った人を刑事罰に問うてみた

まえがき

私は診断ドットコムというクレイジーでイカれた診断コンテンツで遊べるサイトを運営しています。

私が1人で0から作ったサイトで、情熱を込めて育てた愛着のあるサイトです。2019年にリリースしてから今日までで1300個以上の診断コンテンツを作成しました。

まだXがTwitterだった2022年前後、Twitter界隈は乗っ取りアプリが大流行していました。
覚えている方も多くいると思いますが、乗っ取りアプリとアカウント連携してしまうと、第三者が自分のアカウントから勝手にツイートできるようになってしまうアレです。
たちの悪いことに、その勝手にツイートされる文面が、なんと診断ドットコムの診断コンテンツを装った文面になっているものが相当数確認されたのです。
心外にも「診断ドットコムとアカウント連携すると乗っ取られる」という風評が瞬く間に蔓延してしまいました。
言うまでもなく、私は乗っ取りアプリなど作成しておらず、そもそも診断ドットコムはアカウント連携無しで遊べるサイトなのでビショビショの濡れ衣を着せられた形です。

以下は、当時乗っ取りアプリに関しての注意喚起の文章を掲載した記事になります。

内容を読んでいただければ、どのような状況だったかがお分かりいただけると思います。
この乗っ取りアプリの行為は、私がとても大切にしていた診断ドットコムの名誉を棄損する悪質な行いです。
こんな理不尽を許していいはずがない!そう考えた私は、診断ドットコムになりすました乗っ取りアプリを拡散している犯人と徹底的に戦うことにしました。

目標は
犯人に刑事罰を与えること。

刑事罰を与えてその事実を世間に公表するとこで、このようなスパム行為の抑止力になりたいと考えました。
民事で手っ取り早くお金だけ請求するという考え方もありますが、「まさかこんな理不尽で悪質な行為を司法で裁けないとか言わないよな?日本!」という思いが強かったため、あくまでも刑事罰を求めることを優先させました。
この目標を掲げ各所に相談しながら、漸く警察に被害届を受理してもらうところまで漕ぎ着けました。
しかしながら、被害届を出すだけなのにも関わらず、膨大な時間と膨大な手間が掛かりました。
その一連の体験を記録に残そうと思います。

事象発見~被害届提出までの時系列

被害届提出に至るまでを時系列にまとめました。

2022年5月
ユーザーからの問い合わせにより、乗っ取りアプリが診断ドットコムを装っている事実が発覚、調査開始

2022年6月
弁護士に相談

2022年8月
裁判所へ訴状を提出(情報開示請求)
この時点では犯行に使われたサーバーしか分かりません。
サーバーの運営会社に情報開示請求をかけることで犯人の情報を開示させます。

2023年2月
勝訴判決 情報開示により犯人の情報を取得

2023年3月
警察に被害を相談(勝訴した判決文でもって事象を説明)

~その後、何回か警察署に出向きヒアリングを受ける~

2024年4月
警察が犯人にコンタクトを取る。乗っ取りアプリに使用されたプログラムを押収。

2024年6月
被害届受理 ←イマココ

情報開示請求で約半年。
警察への初回相談から被害届受理まで約1年3ヶ月。
事象発覚から被害届受理までトータル2年かかってます

世の中の仕組みが、ネット社会に全く追いついていないといって差し支えないくらい時間が掛かります。弁護士費用も掛かるし被害者が泣き寝入りしてしまうのも無理はありません。
現にこの乗っ取りアプリは診断ドットコムだけでなく、別のサイトを装ったツイートも行っていました。
しかし、警察が犯人を取り調べた際に、他から訴えられている様子は無かったと言っていました。
つまり他にも被害者がいるはずなのですが、
恐らく私以外、誰も訴えていません。
みんな泣き寝入りです。
こんなに時間とお金がかかること誰もやらないんです。
でも私は激オコプンプン丸だったので絶対許さない!という意気込みでした。

事象発見~被害届提出までにやった事

①乗っ取りアプリが使用しているサーバーを割り出す、被害の流れを動画で記録

まずは、犯人がどこのサーバーを使用して乗っ取りアプリを動作させているかを確認する必要がありました。
これはChromeのデベロッパーツールで通信ログを確認し、使用されているサーバーのIPアドレスからwhois情報というものを検索すれば、わりと簡単に割り出せるものです。

乗っ取りアプリは複数あり、そのうちの一つはG●Oペ●ボで動作していることが分かりました。
まずは国内企業であるG●Oペ●ボに対して犯人の情報を開示するよう情報開示請求をかけていくことになります。
これが外国企業のサーバーとなると開示請求のハードルがグッと上がってしまいます。

また、今回のような口で説明しにくい特殊な事象の場合は、一連の処理の流れを動画で記録することが大事でした。
説明しやすくなるし、弁護士が訴状を作成する時にスクショを取れるため役に立ちました。
特に警察官はアナログの人が多いので動画での説明が非常に有効でした。
動画と合わせて通信ログのharファイルも取得するとベストです。これもデベロッパーツールで簡単に取得できるものです。

あとから確認したらページが消されてて乗っ取り行為の証跡を取りたいのに再現ができないという事が起こる可能性も大いにあります。
証拠はその瞬間に面倒くさがらず全て自己責任で揃える気持ちでいた方が良いです。
現に、後工程の情報開示請求の途中で弁護士さんに「あのページが消えてしまっているのですが、スクショや動画ありますか?」と言われて、撮影していた動画が役に立ったことがあります。

②開示請求するために弁護士を探す

証拠をある程度揃えたら次は弁護士です。
私は法律の知識なんて無いので開示請求は弁護士にお願いすることにしました。今回は事象がややこしくネットリテラシーがある人じゃないと理解できないと思い、ネットに強そうな弁護士をネットで検索しました。
そして説明資料を作りメールで連絡しました。
開示請求するための弁護士費用は約20万円。
痛すぎる出費ですが激オコプンプンの私はなりふり構わず依頼しました。

③裁判所へ情報開示請求の訴状を提出

次は犯人が誰なのか特定するために情報開示請求を行いました。
前述の通りG●Oペ●ボのサーバーで乗っ取りアプリを動かしていたため、G●Oペ●ボに対して「おたくのサーバーで悪さしてるヤツがおるぞ、そいつの契約者情報を教えてや!」という感じで裁判を起こします。
相手が素直に「分かりました!」ということは無く、こちらが提出した訴状に対して反論してきます。その反論に対してさらに反論します。
そんなラリーが何回か繰り返されます。
実際この辺は弁護士さんにおまかせで私は報告を受けるだけという感じでした。
ただ、犯人が悪い事をしていることは明白なためG●Oペ●ボが反論してくること自体にムカつきました。弁護士には「反論するのは仕方のない事なので抑えてください」となだめられたのを覚えています。

あっ大事な事を言い忘れていましたが、今回の乗っ取りアプリの行為は偽計業務妨害に該当するという主張で訴状を作成しました。

④勝訴判決

訴状を裁判所に提出してから約半年後に判決が出て勝訴しました。
犯人の名前と住所と電話番号とメアドが開示されました。

犯人の情報はこんな感じで開示された


民事で損害賠償請求を行う場合は、ここから犯人にコンタクトを取って民事訴訟を起こしていくことになります。
しかし私は犯人に刑事罰を与えたかったので警察に相談しに行くことになります。

⑤警察に相談

情報開示請求も長期戦ですが、警察はもっと長期戦でした。
このような特殊なケースの被害相談は前例が無いとのことで、状況を説明するだけでも一苦労でした。

ただ、こちらには情報開示請求で勝訴しているという土台があるため、犯人が悪いことをしているということは警察の方もすぐに理解してくれました。後は今回のケースがどの犯罪に当てはまるのかを検討するという流れでした。
私は当然、訴状で主張している偽計業務妨害だろうと思っていたのですが、民事と刑事では考え方が違うらしくそんなに単純じゃないとのこと、また疑わしきは罰せずの原則があるため、証拠をガッチリ固めていく必要があるとのことでした。
そんなこんなで、警察署に何度も通って説明したり資料を提出したりしました。
早く刑事罰を与えてやりたいという私の気持ちとは裏腹に、警察から3~4ヶ月くらい音沙汰が無いこともあり「本当に進んでるのかな?」と心配になったこともあります。何回か状況確認の電話もしました。
状況確認をしていて感じたのは、進みは遅いが決して忘れ去られてるということは無く、着実に少しずつですが進めてはくれているんだということ。
警察組織とはそういうものなんだと思いました。
やはり警察にも案件の優先度というものがあり、重大な犯罪や世間が注目している犯罪などであれば動きが早いのです。
一方で、今回のような人命が掛かっている訳でもない一小市民の一サイトの業務が妨害されたといった小さな案件は優先度が下げられて当然なのです。
私は案件を進めてくれているだけでありがたいと思う事にしました。

途中で、「このまま進めても起訴できるかは分からない。むしろ可能性は低いと思います。民事でやったほうが良いのでは無いか。」と言われた事もありますが、私は頑として刑事罰を求めました。
もし起訴できなかったら、現状の日本はこのような行為を罪に問えない時代遅れの国なんだという悲しい証明になります。
これはある意味での社会実験なのです。

そして初回相談から約1年2か月後の2024年4月に、漸く警察が犯人と直接コンタクトを取り事情聴取と乗っ取りアプリに使用されたプログラムを押収してくれました。

⑥被害届の受理

プログラムを解析して実際に乗っ取りアプリを動作させていた事が確認できたので被害届を書いてほしいと警察から連絡があったのが2024年6月です。
初回相談から被害届を出したいという事を伝えてはいたのですが、やっぱり証拠ががっちり固まらないと簡単には受理できないようで、証拠をがっちり固めるのに1年3ヶ月ほど掛かったという形です。

被害届はあらかじめ担当警察官が作文した文章を確認し指印を押すという流れです。自分で文章を書くわけではありません。

蛇足ですが、私はここでwinny事件をふと思い出しました。
winnyで機密情報が漏えいしまくって政府関係の機密情報も漏えいしてしまい結果的にwinnyを作った人が逮捕されてしまった事件です。
winnyを使って情報を漏えいさせた人を逮捕するなら話は分かりますが、winnyを作った人を逮捕するという全く意味が分からない出来事でした。
包丁で人を刺した人を逮捕せず、包丁を作った人を逮捕するようなものです。
天才プログラマーでwinnyを作った金子勇さんは、警察の捜査に全面協力する姿勢で、警察官が作文した供述調書に印を押します。
しかし警察官の文章には「自分が(Winnyを)開発したのは、確信犯的だった 私の狙っていた革命は成功した」といった内容が含まれていました。
情報漏えいさせるためにwinnyを開発したということをでっち上げられ、この調書が逮捕の一因になったのは言うまでもありません。
(ちなみに金子勇さんはその後、高裁の判決で無罪となっています。)

だから私は超警戒して警察官の作文をくまなく確認しました。まぁ今回は被害届なので私に有利も不利もあまり関係ないんですが。
そして一部微修正してもらい被害届は完成しました。
コピーは貰えるのか確認したらNGとのこと。なんでやねんと思いましたが口には出さなかったです。

また、この時に警察から聞いた話によると、乗っ取りアプリにはTwitterラッシュというツールを使用していたらしいです。Twitterラッシュを使った類似の乗っ取りアプリが沢山出回っていたとのこと。
ただ検索してもそれらしい情報が出てこず、結局Twitterラッシュが何なのかは分かりませんでした。
詳しい方いたら是非教えてください。

現時点の進捗は、ここまでです。
ここから書類送検され起訴できるかできないかの分かれ道になります。
長い道のりでしたが、まだ終わりではありません。

犯行動機~なぜ乗っ取りアプリを拡散したか~

犯人は何故乗っ取りアプリを拡散させたのか。それは単純に生活費の足しにするためだそうです。
乗っ取ったアカウント経由でLineの友達登録に誘導する内容をツイートするのですが、ここがマネタイズポイントのようです。

乗っ取りアプリ調査用アカウントでわざと乗っ取りアプリと連携したら
Lineの友達追加に誘導するツイートがされた

恐らく友達追加1人につき何円という形態のアフィリエイトでしょう。
人気のあるコンテンツを装ったツイートで大勢のアカウントを乗っ取り、その乗っ取った大勢のアカウントからアフィリンクをツイートするというビジネスモデルです。
犯人はこれで実際にいくらくらい稼いでいたのかを警察に聞いてみたのですが、隠しているのか本当に知らないのかは分かりませんがハッキリと教えてはくれませんでした。

個人的な意見ですが、こういう多くの人に迷惑を掛ける商売は長続きしません。誰からも求められてないものが続くわけがないのです。その代表格が転売ヤーです。転売ヤーも必ず駆逐されていくことでしょう。
現にTwitter(現X)ではAPIが有料になったことにより、現状は乗っ取りアプリが激減しています。採算が合わなくなったのです。
API有料化については個人的にはイーロン最高~ありがとう~と思っています。

あとがき

ここまでご覧いただきありがとうございます。
あとは起訴されるかどうかです。
ここ最近、川口市で暴れてるクルド人やらマイナンバーカードの偽造カードを作っていた中国人など、明らかに逮捕すべきだろ!と思う人物が不自然に不起訴になっているので、今回の犯人も不起訴になってしまうのではないかと心配ですが、この犯人は一応日本人なのでそこは検察を信じたいと思います。

また進捗があれば記事にしたいと思います。

今回ご協力いただいた警察の方々、弁護士先生には大変お世話になりました。本当にありがとうございました。
この場を借りてお礼を申し上げます。
まだ終わりではないので、引き続きよろしくお願いいたします。

最後に、診断ドットコムは私1人で運営しているのですが、そろそろマンパワーの限界を感じているところです。
サポートいただけると大変励みになります!投げ銭してください!
サポートいただいたお金はありがたく診断ドットコムの運用費に充てさせていただきます!

それではみなさん
レッツ診断☆彡

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