4/24「着れる小説」作りました。
1.はじめに
僕らが普段楽しんでいる娯楽には慣れ親しまれた形があります。
例えば…
スポーツならば「する」。
映画ならば「観る」。
音楽ならば「聴く」。
このように娯楽の種類によって
後に続く行為を表す言葉は限られてきます。
であれば小説はどうでしょうか。
表すとすれば、
小説ならば当然、「読む」ですよね。
それを、
小説ならば「着る」に変えた話を
今からしたいと思います。
2. 「着る」小説ってなに?
今回、アパレルブランドkish clothing様(以下、kish様)の協力を経て実現したこの企画の内容について説明します。
上記の写真は実際に今日(2024年4月24日)発売されたTシャツ(商品名:NOVEL WEAR Ver.1.0)の画像です。
着目すべきはTシャツ中央にプリントされたコラボイラスト(デザインはスガノヨシカ様にしていただきました)の右下にあるQRコードです。
こちらの画像からは読み込めないように加工されているのですが、実際の商品は読み取れるようになっています。
そしてQRコードを読み込むと・・・
物語が読めるようになっています。
また、このTシャツに収録されている物語にはもう一人の主人公がいて、別の主人公視点で同じ時間軸を追った物語を昨日(2024年4月23日)投稿させていただきました。
もちろん、Tシャツに収録されている物語だけでも楽しめるようになっていますが、こちらも合わせて楽しんでいただければ幸いです。
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3. 「着る」小説を作った経緯と理由
それは・・・
「小説」という娯楽自体が
親しみにくいからです。
映画や音楽に漫画、絵画と、鑑賞する娯楽にもその形は様々あります。そんな中で小説というのは一番手に取りにくいものではないかと僕は常々、思ってきました。
まだ無名の自分が「小説」という概念に対してとやかく言うのは気が引けますが、あえてここは棚に上げて書かせていただきます。
鑑賞者への印象付けという観点において小説は最弱です。
なぜなら鑑賞するために必要な五感が圧倒的に少なく、鑑賞し切るまでに時間がかかるからです。
例えば、「音楽」をあげるのなら、その娯楽を鑑賞するために必要な語感は聴覚で、鑑賞時間でいうと長くとも7、8分程度でしょう。ヘビーローテーションという言葉が存在するように音楽という娯楽の特性は気軽で繰り返し鑑賞しやすいところが強みだと思います。
または「絵画」。この娯楽を鑑賞するために必要な五感は視覚であり、鑑賞時間でいうと音楽よりはるかに短いです。その一瞬で誰かを虜にしてしまうかもしれないそんな力を持っているのが絵画の強みだと思います。
そして、この二つを統合したのが「映画」です。描かれたものに音楽や声が当てられ、さらに動く。よって使われる五感は視覚と聴覚であり、また最近は4DXの導入などにより座席が揺れたり、匂いが嗅げたりもします。
つまり映画に至っては人間が持てる五感をフルに使っている娯楽であり、総合芸術といっても差し支えないでしょう。
それらに対して「小説」に使われるのは視覚のみで、また「漫画」のように絵がないので描写されている景色や登場人物の風貌、その場に漂っている雰囲気などを、鑑賞者が文章を読み取って想像しなければなりません。
つまり
小説は「半能動的な娯楽」といえます。
ですが、
鑑賞しにくい娯楽だからこそ
小説は楽しいのだと、僕は思います。
楽しむ鍵を握るのはやはり「想像力」です。
同じ小説を読んでいるとしても個々人で頭の中に描いた景色が違うのって、なんかワクワクしませんか。
それは娯楽に使う五感に余白があるからこそ、解釈に幅ができているからで、今あるものをただ受け取って楽しむのでは、頭の中で好きなように展開できません。
想像力によって魅力が増幅する。
それが小説の魅力だと僕は感じています。
また、「小説」は手に取りづらいからこそ「一番正直な娯楽」だと思っています。
例えば暴力描写ひとつとっても、これを映像でやる場合、鑑賞者は視覚、聴覚、あるいは嗅覚を使ってそのシーンを目の当たりにするため、表現者はどこかでぼかしたり、鑑賞者の興味を歪曲させなければなりません。
ですが、小説は文章でしかない。
その一要素で全てを表し、あとは受け手の思考にバトンを渡す。よって鑑賞者は好きなように描写の出力を調節できる。
だからなのか、小説はそういったタブー視される要素をふんだんに盛り込まれている作品がたくさんあります。そういった人間の暗部や真理を覗きたいなら小説は最も適していると感じています。
また、表現者が綴りたかった物語を同じ温度で味わえるのは小説の醍醐味です。
とはいえ、小説は手に取りにくい。
だから敬遠されがちです。
そんなことを思った時、僕は小説が出力される先をもっと親しみやすい形に変えてみれば面白いのではと思いつきました。
そして出来上がったのが
「着る」小説、
NOVEL WEAR Ver.1.0 です。
「手に取りにくいならばいっそ着用させてしまえばいい」
と思った僕は、アパレルブランドkish様の協力のもと、服にプリントされたQRコードを読み取った人々だけが小説を読めるという新しい文学体験を作ってみました。
それは読書体験そのものに新しさという付加価値がつけば「小説に興味はあるが読んでこなかった人々も活字に触れやすくなるのでは」と考えたからです。
つまり、この企画は、全く新しい読書体験を通して、文学と読者をもっとフランクに繋げようという目的があります。
4. 「文学を、着てみよう。」
NOVEL WEAR Ver.1.0
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5. 本製品の制作クルー紹介
協賛・アパレル製品提供
イラスト・デザイン
小説・企画・プロデュース