苦みに抗い、甘さに媚びず、実った果実に君を見る
BLUEGOATS 『パンクエール』に関してつらつらと。
エールであることの意味①:製法(その期間)
この曲は、「新曲完成するまで出れない部屋」という突如生まれた企画がきっかけとなっている。
5日間で「歌詞+振付の完成」までが求められた状況。
プロであることの意味は、「一定以上のレベル(何かしらの対価を正当に要求することが可能な、という意味において)」であることも必然となってくる。
「短期間で完成品に育て上げる」
短い期間で発酵させる上面発酵を主たる製造法とするエールが、この曲に冠するのは、至極当然とも言える。
そして、「3年で横浜アリーナを目指す」BLUEGOATSにこそ相応しいタイトルではないか。
エールであることの意味②:製法(その温度)
ラガー(下面発酵)ではなく、エールであることのもう1つの大きな特徴は、その発酵温度の高さである。
その結果、エールはビールとしての苦みだけでなく、果実のような甘みを包含するに至るのである。
「短期間かつ高温で生み出されたそれは、苦くて甘い」
彼女の熱情が、短期間にあの場所で込められたからこそ、この歌詞が生まれたのだと信じたい。
パンクであることの意味①:反「これまでのもの」感
歌詞全体からまさに「溢れ」でてくるイメージは、インタビューでの彼女の語りから伝わるものと通底している。
「これまでの自分」からの脱却。
それはまさに、長く自分の内に築かれてきた「体制」への反骨心なのだろう。
パンクであることの意味②:「DIY」の精神
カルチャーとしての「パンク」には、「Do It Yourself」がその構成要素として挙げられることが多い。
「自分(たち)の信念のためなら、恐れず、他者に依存せず、自分(たち)から動き出し、自分(たち)の手でつかみ取れ」
その意味において、あの一室で自分自身を曝け出そうと奮闘した彼女は、まさにパンクだったし、BLUEGOATSそれ自体も、「DIY」精神で駆動する反骨グループなのであろう。
パンクエールであることの意味:聴いて感じろこの野郎
以上。
としても良いのだが、極薄パンクな感じなのでもう少し。
エールにおける「苦さ」は、その「甘さ」を際立たせる役割を担っている。
「理想や夢」までの道程が、ただの苦痛だと感じさせないように。
それは、「苦しむことそれ自体が快楽である」という、表面的なマゾヒズム理解では決してなく。
これまでの「苦さ」を、単なる「苦痛」とはしない。
そういう「決意」を自ずから湧き立たせて躍動する、その姿こそが、まさに「パンク」であり、それに共感する聴き手と、彼女自身への高温の「エール」となっているのである。
「弱気なりの強がり」は、彼女自身を魅力的に発酵させる。