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ニート精神障害者28歳女、料理はじめました。

母は料理が好きだった。
日常における食事はもちろん、ぬか漬けを家で仕込んでみたり、イチゴジャムを作ってみたり。
大みそかにはお重を買って、たくさんの料理を作っていたのを思い出す。
そんな中、ふと私が料理を作ろうとすると、母は下ごしらえを全部やって、何なら煮込む段取りまでしてくれていた。

もういい大人なのだし、振り切って練習をすればよかったのだが、「やってくれるからいいや、私は料理が得意じゃないから」と言い訳をして、アラサーになるまで料理をしてこなかった。

父は料理人だ。
私が料理を作り始めるまでは、揚げ物なんかも上手に作っていたし、そもそも仕事で料理をしているから、手際が良かった。
姉も姉で調理師免許を持っているし、祖母は家庭科の先生で料理上手だったし、料理においてはサラブレッドではあったのだが、料理への忌避感を捨てられず、ここまできてしまった。

しかし、「精神障害を持っていたとしても、できる限り自分の人生においては責任を取らねばならない」と気づいたことにより、料理をはじめとした家事をこなすようになった。

始めるのが遅すぎるという懸念点はあったが、今始めなければ未来への自分に迷惑がかかる。
そこで私は以下の順序で料理をするための基盤を作った。


台所にある食材を把握する&掃除

まず、「他人の台所」になっている状態から脱しなくてはならない。
いきなり料理を作ろうとしても、材料の把握をしていなければ動き出すことはできないのだ。
私はまず、棚という棚を開け、リミッターというアプリを使用し、何がどこに入っているのかを管理することにした。
冷凍庫の謎肉は父に聞き、ジップロックに同じ肉はまとめ、『鶏もも肉』『豚バラ肉』と表記しておいた。
その後、台所の掃除を行い、父が家にいる日に冷蔵庫の中身を整理し、掃除をし、「他人の台所」に若干介入できるようになった。

正直、1日で終わる作業だと思っていた。
しかし現実は甘くない。
台所の整理、掃除だけで1週間かかった。
「掃除は一日にしてならず」を痛感し、日々の掃除の積み重ねがいかに重要かを思い知った1週間でもあった。

まずは冷蔵庫の中にあるものでレシピを組み立ててみる

贖罪は腐りやすいもの、そうでないものがある。
また、多少賞味期限が切れていても、加熱すれば何とかなるものもある。
でも、私は現時点でそういうTipsみたいなものは何も知らない。
とりあえず私は食材の賞味期限に従い、インターネットで『ナス 卵 レシピ』みたいな感じでレシピを検索した。

インターネットは本当にすごい。マジでどんなレシピでも出てくるぞ。

しかも、台所の整理をした労力が活きてくる。
「あ、このレシピ美味しそうだけど、この食材だけ家になかったな」という組み立てパズルみたいなことができるようになるのだ。
その食材だけ買えば、後は料理をすればいいってわけ。
1週間も掃除しなきゃいけないの!?そんなの無理だよ!!と思うかもしれないが、今やらないとマジで未来の自分が後悔するから、ちょっとずつでいいから、今やってください。

料理をしてみる

以前の私は料理のノウハウが無さすぎて、なぜかレシピ通りに調味料を入れなかったり、焼き時間や煮る時間を変更したりしていた。
「どうせ自分の作ったご飯は美味しくないから」という理由からだったと思うが、料理のプロが作ったレシピを無視して作ったら不味くなるに決まっているだろ。
過去の反省を生かし、私はレシピ通りに料理してみることにした。
しかし、謎のワードはどんどん出てくる。

煮詰める?煮立ったら?沸騰とは違うのか?めんつゆはどうして2倍と4倍を統一しないの?とろみが出たらって、どういうとろみなの?

一つ一つ調べ、恐る恐る料理をし、父にアドバイスをもらい、またチャレンジする。
料理はトライ&エラーの繰り返しだ。
味付けに失敗した時は落ち込むが、そもそも料理って何年も修行して職人になる人がいるのだから、最初からお店レベルの料理作る方が怖いことに気づいてからは、失敗しても気にしないことにした。
元々薄味にしがちなので、料理に失敗しても味を足せば何とかなることが多いのが救いだ。

素人が料理をする上でこれあってよかったなあと思ったのは「小さじ大さじ」「測り」「タイマー」だ。
きっちり計測して料理をすることで、成功確率が跳ね上がる。
料理に挑戦する人は絶対にこの2つは活用してほしい。

1週間分の献立を作成してみる

家事って別にやらなくても死なないものがほとんどだ。
しかし、料理に関しては誰かがやらないと飢えてしまうので、ある程度継続していかなければならない。
外食に頼る手もあるが、あまりに頼っていては栄養も偏るし、何より出費がかさんでしまう。
一人で生きていくにしても、誰かと一緒に暮らすにしても、料理スキルは持っておいて損はないだろう。

「料理ってこんなものか」となったら、次は1週間の献立を作成する。
例はこんな感じだ(テンプレートお借りしております)。

最初から無理に1週間分作らなくてよい

主に夜ご飯を作るので、冷蔵庫のものを確認しながら献立を組み立てていく。
レシピを検索し、すぐにスマホで確認できるようLINEの『Keepメモ』に送信しておく。
副菜は作り置きできる量を作成し、いつまでに食べなければならないか献立表に記載しておく。
1週間実際に作成した所感として、2人暮らしで副菜を毎日作っていると、結構冷蔵庫の中が渋滞してくるので、今後は『残っている副菜を消費する日』を設けることにした。
そして、買わなければならない食材は『お買い物リスト』を作成し、父に買い物を頼む。

ホワイトボードは冷蔵庫に献立を書いておく用のやつ

実際に一緒に買い物に行ってもいいが、調子が悪い日と父の休日が被るとなかなか行けないので、基本は父にお任せしている。
必要な食材と、安売りしていた食材なども買ってきてくれるので、レシピの幅が増えて助かっている。
いつかは1週間分の食材をまとめ買いして献立通りに料理をこなしていくのが目標だ。

実際の料理はこんな感じです

案外おいしそうで草

料理は実験と同じ。規定通りに作ればそれなりに美味しくなる。
昔の私は冷凍の鶏肉を死ぬほどレンチンして、カッサカサになったやつに塩を少し振りかけ、歯で引きちぎりながら食べていた。
別に今も料理が好きなわけではない。
ただ、完成するとすがすがしい気持ちになる。
食べてくれる人が美味しいと言ってくれると、嬉しくなる。
元々少食でご飯を食べることすら忘れる私だから、己の中に料理に対する原動力はほぼない。
必要なスキルだから習得するだけだ。

料理は写真を撮り、snapdishで記録を残している。
後で見返すと「意外と料理したなあ」と振り返ることができるのでオススメだ。

最後に

昔から私は指示待ち人間で、言われたことしかやらなかった。
分からないことは分からないままで放置することに抵抗がなかったのだ。
そうして「私はこれくらいしかできない」と決めつけて、人にお世話してもらうだけの人間に成り下がっていた。
精神障害になり、家にずっといながら、家事ができなかった時の私は、いつも心のどこかで、無力感や人の迷惑になっているという苦しさが漂っていた。
存在していてもいいんだよ、と言われても、その理由がどこにも見つからなくて、ただただ虚しかった。

しかし、ここ1か月で今までやってこなかった家事にも挑戦し、嫌いだった料理もするようになった。
繰り返すが、料理は今も好きではない。家事も特段好きという感情はない。
でも、やるとすがすがしい気持ちになる。人の役に立ったと思える。
些細なことかもしれないが、家族の一員として認めてもらえた気がした。
行動を起こすには勇気がいるが、一度歩みだしてしまえば、意外と歩き続けられるのかもしれない、とも思った。

今日も私は家事をこなしている。
天井を見つめ、SNSを触るしかなかったあの頃を思い出しながら。
休息と行動の配分を考えつつ、未来のために今できることをしたい。

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