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青春納め

大学生の時にでんぱ組.incを好きになった。
バリ3共和国から入り、曲の多くはアップテンポで元気が出る、でも歌詞はどこか自信なさげで、優しく語りかけてくるようなメッセージ性に惚れ込んだ。

ライブに行こうと思いチケットを取ったものの体調を崩して行けず、そうこうするうちに最上もがが脱退した。
その時「ライブは生き物だ」と強く痛感した。

その後、5人体制でのアー写が発表された。
美少女戦士のように力強く感じられるその写真は、最上もがを失った彼女たちの決意の表れだと思った。
まあ、その後ねもぺろがすんなりと加入し、そうでもなかったのか?とも思ったりしたが……。

今でも6人体制の時のライブを見たかったなと思う。
でも全ては巡り合わせで、私がやっとでんぱ組.incをちゃんと目視で確認したのはねもぺろ加入後であった。

時間は待ってはくれず、刻々とアイドル自身も変わってゆく。
そこからできる限りライブに足を運ぼうと思うようになった。

とはいえアイドルのライブはロックバンドのライブよりチケ代も高く、学生の身としては無闇にお金をかけられるものではなかった。
それでも夢眠ねむの卒コンは絶対に行くぞと思って、チケ争奪戦に勝ち、豆粒のような彼女たちを涙ながらに見守った。

色とりどりに舞う彼女たちは美しかった。
さながら万華鏡のようであった。

そこからメンバーの加入や脱退が繰り返され、「でんぱ組.incってどうなるんだろう」と思うこともあった。
卒コンの時にえいたそが「夢を持つ!」と目標を掲げた時にも思ったのだ。
彼女たちの夢は、もうあらかた叶ってしまったのかもしれないと。
次第に追う事も無くなり、数年が経った。

「でんぱ組.incは、エンディングを迎えます」
みりんちゃんが強張った顔で客席に語り掛けていた。
ああ、でんぱ組.incもう終わるんだ。まあ色々あったし、最近の事を知らないけど、大変そうだったしなあ。
ラストツアーでは名古屋にも来てくれるということで、数年ぶりにライブへ行くことにした。
チケ番は最後尾に近く、オールスタンディングの狭いライブハウスでは彼女たちの姿を目視するのは非常に難しかった。
ただ、1分ほど奇跡的に視界が開け、彼女たちが全力で舞い踊る姿が見えた。

どんな箱でも、どんな状況でも、彼女たちは全力だった。
美しい万華鏡のような煌めきは今もなお健在だった。

ライブが終わり、私は若干の後悔をしていた。
彼女たちは何も変わっていなかった。
メンバーが変わろうと環境が変わろうと、いつでもずっと彼女たちは全力だった。
そんな彼女たちが、1月初めのライブでエンディングを迎える。

オタクの中ではライト層であったと思うし、古参でもない。
彼女たちの事を深く知っているという自負もない。
でも、それでも。
離れていくオタク達を見送りながら「最後は全員に来てほしい」と何度も呼び掛けてくれた彼女たちの強さには頭が上がらない。
あの呼びかけが無ければ今回のラストツアーに足を運ぶことも無かったと思う。
私たちが思うより、彼女たちはずっと強くなっていたのだろう。


栄枯盛衰、諸行無常。始まりがあれば終わりがある。
でんぱ組.inc。青春を支えてくれてありがとう。
思い出としてグッズを買い、いつでも見える位置に飾った。
またこれだけ熱狂できるアイドルに出会えたらいいな、と思いながら、私は青春納めを終えたのであった。

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