母の葬式【第1章 別れ編】その4
母が棺で帰宅した当時、私は小学四年生で一年生の妹と私は、遺体に触れた時の悲しい冷たさを理解でき泣いたのですが、妹と年子で幼稚園の年長だった弟は死を理解できなかったのか、ヘラヘラ笑っており「悲しいことだから泣かなきゃいけないんだよ!」と私と妹説明されていたのがより一層哀れなのでした。
もう1人、父親も泣かずにいたので、子供心にお父さんが悲しくないか心配していたのですが「悲しいことなんだよ!」と説明する訳にもいかず父親に注目していました。出棺の時に突然泣きはじめ遺体にすがりつく父親の姿を見て「ああ、それなら良いかな」と父親と母親の愛を理解しました。
私は母親が成仏できるようにお坊さんの念仏を一緒に唱える間に、摩訶般若波羅蜜心経の「空即是色 色即是空」と、母親を失った喪失感の中、何というか喉が渇いた時に水が欲しくなるような感覚で初めて唱える念仏に没頭していたのでした。
そんな感じで、あっと言う間に葬式は終わってしまい、母はお墓に入り、シングルファーザーと三兄弟は毎晩川の字で夜を過ごすことで寂しくならないように工夫したのでした。
続く