抜けた歯の行方
世の親御さんは子どもの歯が抜けたらどうしているのだろう。
我が家では初めて抜けた乳歯は枕元に置いておくと、トゥースフェアリーがその乳歯を持ち帰りその代わりにお金を置いていってくれる。
聞いたところによるとトゥースフェアリーは初めて抜けた乳歯を買い取り、その乳歯でお城を建設しているらしい。夢がありそうで、そうでもない話である。
次男なんぞは自分の歯にいくらの値が付くのかをワクワクしながら枕の下に歯を置いていた。
トゥースフェアリーのお仕事は大変である。真っ暗闇の中で小さな歯を探さねばならない。小さな袋に入れて保管するように伝えておいたのでまだ良かったものの、それでも子どもを起こさないようにそっと乳歯を回収し、代わりにお金を置いておかなければならない。
我が家のトゥースフェアリーは外国のコインを置いていってくれる。朝起きて見たこともない国のコインを見つけたときの子どもの顔は何とも言えない。
南国にいた頃、めでたく三男の乳歯が抜けた。長男・次男は「グラグラしてきた!」「まだかな」「もうちょっと!」と報告してきており、トゥースフェアリーもそれなりに心の準備ができていた。
が、三男のそれは突然だった。もともと三男は存在感が薄いのでもしかするとアピールしていたにも関わらずスルーしてしまっていたのかもしれない。いずれにせよトゥースフェアリーは相当焦った。
なぜなら使う予定のないものは日本の家に置いてきたから。
若い頃に訪れた国のコインなど、誰が駐在先に持って行こうなどと思うのか。
トゥースフェアリーたちはコソコソ相談した。
「今手元にあるのは南国のお金と日本円だけだ」「今から町のマネーチェンジャーに両替に行こうか」「いや、使う予定もない国のコイン1枚のためにその労力をかけるのはどうかと思う」「トゥースフェアリーは廃業したことにするか」
答えが出ないまま三男は抜けた乳歯を大切に枕の下に入れて寝た。トゥースフェアリーたちは相談の結果、コインの代わりにお札をいれておいたらなんとかなるのではないかという結論に達し、お年玉よろしくお札を袋入れて乳歯と交換した。
朝起きてトゥースフェアリーが置いていった袋をみた三男は何とも言えない顔をしていた。それを見たほかの兄弟たちも何とも言えない顔をしていた。
全員が全員、「思てたんと違う…。でも結構な高値がついてる…。」と思っているのが手に取るようにわかった。
無事に四男の乳歯も抜け、もう我が家にトゥースフェアリーが来ることはなくなってしまったが、4回も子どもたちのあんな顔を見れたのは幸せだと思う。子どもの反応は面白い。
どうでもよいことだが、トップの写真は全身姪っ子の服を着せられてる三男。
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