高校演劇『もしイタ』がすごい!
ここ数回高校演劇の投稿ばかりですみません。
一度語りだしたら止まらなくなってしまいました。
今回は私が観てものすごく感動した高校演劇『もしイタ ~もし高校野球の女子マネージャーが青森の「イタコ」を呼んだら』をご紹介します。
(『もしイタ ~もし高校野球の女子マネージャーが青森の「イタコ」を呼んだら』 舞台写真)
あらすじ
2011年5月。青森市にある某県立高校。その野球部に一人の女子マネージャーが入部します。彼女は1年生の頃、陸上部に入部しており、やり投げでインターハイに出場したほどの選手でしたが怪我のため現役を断念し、しかも陸上部が廃部になったため、2年生のこの時期に野球部に入部したのです。しかし肝心の野球部は部員が8人しかおらず、やる気のかけらもありません。一念発起した新人マネージャーは部員勧誘に乗り出し、ある転校生に目を留めます。彼は被災地の学校からこの春転校してきたばかりで、前の学校では野球部に所属していたというのです。「野球は辞めた」と言いはる彼をなんとか説得した彼女は「今度はちゃんとしたコーチに来て貰おう」と学校に掛け合います。しかしやってきたコーチはなんと、盲目の老婆、イタコでした。「ワの言うことを聞げば絶対甲子園さ行げる」と宣言する老婆。野球部はいったいどうなってしまうのでしょうか?
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この作品は2012年に行われた第58回全国高等学校演劇大会で最優秀賞を受賞。日本一になり、国立劇場で上演されています。
私はこの様子が放送された『青春舞台』という番組を顧問の先生がDVDに焼いてくれたことでこの作品と出会いました。
初めて観たときに、「生で観たかった」と心の底から思いました。
それほどいい作品だったのです。
『もしイタ』の魅力
この作品最大の魅力は、舞台装置も小道具も、音響照明も一切使われていないところです。演劇部員全員が舞台を駆け回り、劇中歌を歌い、効果音を肉声で発します。全て役者の体ひとつで表現されているのです。
その体の在り方が、エネルギーの在り方が、ものすごく美しいのです。
全員が常に舞台に出ずっぱり。常に観客の目にさらされています。たとえ60分だとしても、そこで消費されるエネルギーはとてつもないものだと思います。
ひとつの作品を全員でつくり上げるために訓練された身体、そして思いがひとつになり客席に届く瞬間、涙があふれてきます。
たくさんの人に愛される作品
2012年に日本一になった後、2014年11月には国内最大規模の国際舞台芸術祭「フェスティバル/トーキョー」、2014年4月には韓国ソウルで行われる国際芸術祭「フェスティバル・ボム」に招待され、好評を得ました。また、2015年の映画「幕が上がる」で取り上げられ、全国的な話題となりました。
NHKでも繰り返し放送され、本当にたくさんの人に愛され、多くの人に勇気と希望を与えている作品なのです。
震災当時、青森市は二日間余の停電と灯油不足程度の被害状況で、津波の被害を被った八戸市や、福島県、岩手県、宮城県と比べればその被害はとても小さなものでした。
そんな中で、「演劇で被災地を元気づけることはできないだろうか』と必死で考えたのだそうです。被害は少ないといえ、自分たちも被害にあった身でありながら。
そうしてうまれたのが東日本大震災によってチームメイトや家族を失い、青森に転校してきた主人公の成長を描く『もしイタ~もし高校野球のマネージャーが青森の「イタコ」を呼んだら』でした。
そして実際に八戸市、気仙沼市、大船渡市、釜石市、久慈市、仙台市、利府町、宮古市、盛岡市、陸前高田市、石巻市、山元町、塩竃市(野々島)、郡山市、いわき市、女川町、熊本市で被災地応援公演が行われました。
高校生たちが力を合わせるとこんなに素晴らしいことができるのだと、作品だけでなく行動力に感動しました。
演劇でこんなにたくさんの人を元気づけ、力になることができるのだと思いました。
もう何年も前の作品ですが、この作品はまさに演劇の原点であり、演劇の希望だと、私は思います。
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