【日記 #3】坊っちゃん文学賞に応募した

昨日、坊っちゃん文学賞に応募した。

書いたのは、たったの四千に収まる文字で作られる物語。

すっきりとした達成感とは少し違う、終えたことへの寂しさなども含ませた、この何とも言えない、初めての感覚。

書いて終わりではない。それはそうなのだ。
今からこんなことではどうしようもないのだが、なんだか誇らしい気分。

昔から文章を書くことは好きであったが、それはたとえば、思いのままに浮かんだ場面をざーっと書き起こしてみたり、表現や言葉遊びをしてみたりといった具合だ。
物語を書くという体験はしたことがなかった。
したこともないのに、小説を読まなくても小説は書けると思っていたのだ。
おそらく小説の後ろには、"なんか" "くらい" が隠れ付いていただろう。

それはもう「うわ、書けちまったよ。やはり天才だったか」と、分かりやすく調子に乗ったわけだ。

しかし、問題はそこからだった。
最終チェックをと頭から読み返してみると、驚くほどの仕上がり。
そう、面白くなかった。
つまらない文章のパレードに、本当に自分が書いたものなのか疑った。
そこに至るまでも「なるほど、改行後は一マス空けるんだな」などと一から手探りで、わずか数千字にしては有り余るほどの時間を費やし、丁寧に書き進めたつもりであったのに。
気がつくと、天井を見つめる行動に自然と出ていた。

執筆ガイドのようなものを読んでいると、小説を書くためには構成とやらを考える必要があるらしい。だが、手抜き癖のある私は当然のようにこの文字数なら必要ないだろうと高を括っていた。
あとになって、ようやくその重要性を理解した。

"たったの"四千と書いたが、むしろこの制限が難易度を爆上げしている。
少ない文字数の中でどのような表現を使うか、どの情報を入れ込むか、考えることがめちゃくちゃ多い。
今回私が挑戦した所謂ショートショートと呼ばれるものは、初心者に最適だという情報を見かけ、それが書くきっかけにもなったのだが、正直「お主のスキルを見せてみよ」と言わんばかりの難題であった。

けれども、残った記憶は「とてもわくわくした」ということ。
とにかく書くことが楽しくて仕方なかった。理由はわからないが、変なゾーンに入り、にやにやしながら文字を打っていた。

結局、納得のいく仕上がりになるまで二ヶ月かかった。
後になってみれば、この時間のかけ方では小説家として厳しいものがある。と思うところではあるが、とりあえず今は気づいていないふりで決め込むことにしよう。

小説家になりたいと思ったのは高校生の頃。
それ以前にも似たような思いはあったが、将来が現実味を持ち始め、職業としてそれがふっと現れたのはそのあたりである。
とはいえ、それ以上にもそれ以下にもならず、文章を書くことで生活できたらいいなとぼんやり思う程度に長い間とどまることになったわけだ。

先日、今後は小説を読むことにしたといった内容の日記をあげたが、このような決意を固めるのも別に初めてのことではない。
こんな気はとうの昔から何度も起こしていて、その度に、
本屋へ行き、読めそうな本を買い、買ったことに満足し、しばらくの放置期間を経て、思い出したかのように本を開く。そして、冒頭の数ページで閉じるが最後、再び開かれることはなく本は眠るのだ。

新年になると「今年の目標は ━━━ 」などと定め、そのうち色々と理由をつけ、時には理由付けさえされずに、果たされることなく年の瀬を迎えるなどよくある話だろう。

そんな私がどうだ。
本を二冊読み切り、今も三冊目を読み進めている。
ペースは遅すぎるが、それでも毎日仕事が終わると必ず読書時間をもうけている。小説家のための入門書とやらを手に取り、小学生用の文法ドリルをこつこつとこなしている。
そして今回、ひとつ作品を創作できた。
ショートショートくらいで大袈裟だと思われるかもしれないが、随分と大きな一歩ではないだろうか。
自信を持って、私は今の自分が好きである。

実際に体験してみると、小説を書いたことがあるすべての者へ尊敬の念を覚えた。好きなんて気持ちを優に超える険しさではないか。
あえて崩し表すとするならば、" やばすぎ "

書き始めるまでも、書き始めてからも、いくつもの都合のいいタイミングがやってくる。
そこで手を止めなかった者が、「小説を書いた」に到達するのだ。

今の私はまだ、小説らしきものを書いたに他ならないだろう。
引き続き、多くを学び、力をつけていこうと思う。

今回の応募作だが、完璧な出来とはとても言えない。そこには、初めて書いたから、慣れていないから、そんなみっともない保険もかけられている。

しかしだ。自信はある。本当だ。

主催されている方にも、他の作品を応募された方にも失礼にならないよう
今回私が応募したものは、今の私が書ける最高の作品だと言える。

応募した事実だけで満足などとかっこよく終わらせたくはない。
言い訳せず、堂々と期待しようと思う。
結果が出る日は、汗が滲むくらい本気で手を合わせて祈ろうと思う。

受賞、したいな。

賞金もらったら果物めっちゃ食べたい！
かごに色んな果物入ってるやつ買ってみたい！