【SW2.5】ブルライト南東部探訪(季節市鮮やかなコーカスタの街のすゝめ)
この作品は、「著:北沢慶/グループSNE、KADOKAWA」が権利を有する『ソード・ワールド2.0/2.5』の二次創作作品です。
(C)Group SNE 「ソード・ワールド2.0/2.5」
・はじめに
以下は、シロクニがGMをつとめるSW2.5のキャンペーン「理獣の牙」における舞台、ブルライト地方の南東部にある街、“商いの砦”コーカスタを紹介するコラム風記事&データ的説明となります。
公式に街の詳細があるものについては、ルールブックⅠ〜Ⅲ、(ユーシズやグランゼール等各街のサプリメント、)ブルライト博物誌をご確認ください。
この探訪記は「ブルライト博物誌」、「リプレイBIG 剣と荒野と放浪者1~2」等の雰囲気に触発されて書いたものです。
アグマヌス商会より読者への挨拶
はじめに。(筆者より読者の方へ)
この度は、我らがアグマヌス商会コーカスタ支部の発刊する紹介コラムに目を通していただき感謝する。
この後に紹介するのは、地方を象徴する名だたる都市の数々───────ではなく、ブルライト地方においては小都市にあたる“商いの砦”コーカスタ、並びにその周辺にある特徴的な土地や場所を主としている。
筆者が行ったことのない場所も含むため、噂や私的な見聞を多分に含めた紹介であることを、各々で理解してほしい。
このコラムによって、読者の方がコーカスタ周辺での快適な旅の一助ができれば幸いだ。
───────アグマヌス商会コーカスタ支部副長、ファグアグクス・グィ・アグマヌス。
(中略)〜鉄道計画について
ブルライト地方の都市を結ぶ鉄道計画があるのは、多くの人が知っているだろう。
この地方の西端、砂の都ラージャハ帝国までは既に魔動列車が開通しており、多くの人や物を運んでいると聞く。
それを受けてハーヴェスやユーシズも、これまで主に使っていた大街道沿いに線路を敷くことを決定している。この話はこの地方へ来たばかりでもなければ、大凡の人が連日耳にタコができるほど聞いているだろう。
とはいえ、どの都市も予算を組んだばかりで、まだ予定地を整備している途中だが。
コーカスタに支店を構える我がアグマヌス商会も、コーカスタからの出資に1枚噛んでいる。
利権について協議を挟むため詳細は伏せるが、このままいけば、コーカスタからグランゼール近郊駅までの線路が着工できる日も近いだろう。
列車事業が軌道に乗れば、物流の在り方も変わる。馬車の代わりに商会組合で貨物列車を借り上げて走らせる日も、そう遠くないのかもしれない。
コーカスタと周辺の地域
地方南部、特にハーヴェス近郊やグランゼール周辺の地域は、商人としての贔屓目もあるがブルライト地方の中で最も賑やかな地域だ。
魔動機文明時代の街道跡を再利用した大街道は往来する隊商や旅人の落とす金銭によってすこぶる快適に整えられており、徒歩で行き交う人々が休むための宿場町があちこちに点在している。
大小様々な宿場町があるが、その中で最も大きな街がここ、“商いの砦”コーカスタだと言えるだろう。
この街へ寄るためには途中で主要街道から逸れる必要はあるものの、この街は宿場町としては珍しく、夜も街に入ることが許されている。それもひとえに、“守りの剣”の守護があるお陰だ。
その安心を担保に諸国漫遊の貴族や裕福な蒐集家も多く集まるし、年3回の季節市は毎度驚くほど賑わう。
“黄色い絨毯”ファーベルト平原で遊牧民の織ったパマナ染めの鮮やかな布地が露天に並び、パマナビーの蜂蜜や蜂蜜酒が競りに出されては高値で売れていく。コーストラス丘陵近郊で育まれた新鮮な畜産物が街を訪れる多くの人の舌を満足させ、北の“迷宮王国”グランゼールから流れてくる迷宮の掘り出し物は老若男女問わず万人の好奇心を煽るだろう。
南のキュピー湿原で作られる魚の干物や妙薬は知る人ぞ知る珍品であり、アンダーエルフの作による工芸品などは“蒐集家が棚ごと攫っていく”と例えられるほど美しく貴重で人気だ。
多種多様な品が揃うことにより、1度として同じ市にはならない。さらに遠方から運ばれてくる珍品などが混じるゆえ、街を訪れた時には是非、当アグマヌス商会と季節市を見ていってほしい。
しかし、忘れてはならないのがふんばり剣溝を挟んだ反対側、東にある“はきだめの”魔動死骸区だろう。
あの場所は、このコーカスタにとって良い関係を築ける場所ではない。
地方のゴミ箱。はぐれ者が最後に流れ着く場所。浮浪者と盗賊が肩身を寄せては奪い合うスラム。
未だ停止していないという、古き狂った魔動巨兵に群がるトレジャーハンターと落ちぶれた者の集うあそこは、危険しかないからだ。
もちろん、そこ由来のものと思われる魔動機文明時代のアイテムも多少は流通してきているようだが、旨みと言えるほどの量ではない。
読者の方も近くを通られる時は、ふんばり剣溝の東部にはあまり近寄らないことをおすすめする。
・街のデータ〜“商いの砦”コーカスタ
【概要〜成り立ち】
アルフレイム大陸、ブルライト地方南東部。“迷宮王国”グランゼールから東へ進むと、ふんばり剣溝との間に広がるコーストラス丘陵のただ中に交易の要所と宿場街を兼ねたこの城塞都市がある。
この街は約60年ほど前、当時の名のある冒険者が新たな人族の拠点を得るために蛮族の根城にされていた魔動機文明の遺跡砦を攻略し、封印されていた守りの剣を取り戻して街として住めるように開拓したのが始まり。
当時は人族の町や国家を繋ぐ街道の開通や整備、ハーヴェスから東部(ユーシズ)への交通の便を高めるために開拓された。
しかし、この街の開拓から約20年後にグランゼールが建国されたことをきっかけに冒険者が集まらなくなり、浮いた利権や設備に目を付けた商人が代わりに発展させていき、現在は街道の整備を担いつつ交易所の利益で栄える、堅実でそれなりに治安のいい交易宿場町として栄えている。
【人々と生活〜詳細】
丘陵にあるため坂道が多い街ながら、道は舗装され石畳が敷かれており、遺跡の遺構を一部再利用しているため街にはマナを利用した魔導灯が大通り沿いに3機灯っている。交易で得た充分な資金が街の整備に回されており、街の外周と、街内部の内郭区を堅牢な石壁で取り囲んでいる。また、魔動機文明時代の地下遺構が一部残っており、そのうちの幾つかは施設や通路として現在も使用されている。
政治は合議制を取っており、街の整備・運営費を出資する有力な商人たちから選ばれた4人と、この街を開拓した冒険者が興した(この街で唯一の)冒険者ギルド、【理獣の牙】の長を加えた計5人の会議によって運営されている。
現在の人口は7000人ほど。加えて、最低でも常に数百人ほどは定住していない商人やその護衛、立ち寄った旅人などが街に宿を取り行き来している。
季節や天候、季節ごとに催される市によって街の人口が大きく変動するため、食料の取引や備蓄などは常に重要視されている。また、街の性質上人の入れ替わりが激しいため、治安維持の観点から古くから定住している人の多くは内郭(旧市街)区内に住んでおり、 それ以外の人々は内郭区の外、通称で外郭(新市街)区と呼ばれる場所にしか立ち入れないように制限されている。(当然、例外もあるが)
この街の重要施設は軒並み内郭区内にあるが、冒険者ギルド【理獣の牙】や各神殿は外郭区にあり、彼らのための住居も外郭区に建てられている。
【信仰】
この街における信仰は、多くの旅人が訪れるために“導きの星神”ハルーラを信仰している人が最も多く、商人が多いため貨幣神ガメルもよく信仰されている。(これらは利用者が多く、個々の神殿がそれぞれ外郭区に建てられている)
それ以外の神々は一区画にまとめて神殿を建てられており、それぞれ祀られている。ライフォス、ティダン、シーン、グレンダール、キルヒア、ミリッツァ等への参拝が可能になっている。(なお、盾神イーヴは星神ハルーラと一緒に祀られているため詣でる際はハルーラ神殿へ向かう必要がある)
【街中の地理】
外郭区は度重なる工事によって傾斜を削って比較的平坦に均されており、馬車の駐車場を備えた宿が立ち並ぶ大通りが旅人や商人を出迎える。また、交易所で取引された新鮮な食べ物或いは日用品などが、馬車用の大通りから宿を挟んだ向かいにある小売通りで売られる。小売通りの周辺には、宿に泊まる人々が徒歩で向かえる範囲に公園や神殿、娯楽施設などが立ち並んでおり、通りで問題が起きても対処できるよう、兵士の詰め所も併せて幾つか建てられている。
冒険者ギルド【理獣の牙】は、宿や食事処に混じって北門の入口近く、大通り沿いの一角に構えている。その横には広大な敷地を持つライダーギルドが建っており、その更に横にはバイク等を取り扱っているマギテックギルドが建っている。
大通りから続く坂道を登り東門近く、南東にある内門を潜ると内郭区に入る。
内郭区は外郭区より高台に当たり、坂道が多い。人通りは外郭区より少ないため外郭区よりも穏やかな雰囲気である。
古参の住民や裕福な商人の家が立ち並んでいるため住宅区が広がっており、学校や取引所で仕入れた品を取り扱う商店などが立ち並んでいる。また、行政を取り仕切る司政の館や兵士隊本部、商人のための会議所や、水の湧き出す池がある。
噂によると、現在は立ち入り禁止にされている魔動機文明時代の地下遺跡への入口は、内郭区の中にあるとも囁かれている。
コーカスタの市:【季節市】
商人や旅人の集う街であるため、年に3回、“市”が開催される。
梅雨が終わって夏至を過ぎた頃(7月)の夏市、麦の流通が安定して冬への備えをする頃(10月)の秋市、ディガット山脈麓の雪が解ける頃(4月)の春市の3つがあり、それぞれ特色の異なる催し物や季節の品がやり取りされる。
市はそれぞれ3日ほど開催され、その間は普段の数倍(一番大きな規模になる春市なら特に多く)の人が訪れることになる。商人たちの出資で街は飾り付けられ、出資者(商会)の意向によって各種催し物や武術大会が開かれたり、街主導で出品自由のフリーマーケットなどが催される。
珍しい品が大量に出回るため、それを目当てに足を運ぶ蒐集家や冒険者も多い。
冒険者ギルド【理獣の牙】
ブルライト地方南東にある街、“商いの砦”コーカスタにある冒険者ギルド。
ギルドの長はライオンのリカント、ウガンダ(リカント/女/40歳)。
冒険者上がりであり、父である初代支部長からギルドを受け継いだ銃使い。姉御肌。
ここは街の入口に近く、いつもそれなりに賑わっている。冒険者ギルドへの依頼目当ての人はもちろん、入口に近いため街外で有事の際は兵士の詰め所より先に声がかかるだろう。
ギルドの横に併設されているマギテック協会支部やライダーギルドへの利用が多いのもあり、夜以外は大抵賑やかだ。
しかし、コーカスタは人口のわりに兵士が多く、大きな街にありがちな「冒険者の力が頼られがちで兵士が働かない」という状況にはなりづらく、コーカスタ内で(特に駆け出しの)冒険者が活躍する場はあまり多くない。
それゆえ、【理獣の牙】はコーカスタの成り立ちに関わった由緒ある冒険者ギルドだが、所属する冒険者の数は多くはないのだ。
なぜそのようになってしまったかというと、街を発展させてきた時期の多くがグランゼール建国〜発展の時期と重なってしまい、折悪く冒険者の少ない時期が長かったことが挙げられる。
その間、【理獣の牙】の先代支部長(ウガンダの父)は商人たちと連携して街を取りまとめてきたが、街の治安維持を流れ移ろいやすい(そしてグランゼールへ向かいがちな)冒険者に任せることが出来ず、長らく流れ者の引退冒険者や定住先を求める傭兵を兵士として買い上げて、街で雇用することで解決してきた。(それを指してこの街の兵士職は“冒険者の墓場”と揶揄されることも)
そのため、軽い荒事や困り事なら兵士が解決してしまい、コーカスタ内での依頼は比較的回ってきにくい地盤がある。(もちろん、平和が1番だが)
【理獣の牙】に所属している冒険者たちの仕事の傾向としては、何らかの理由で兵士の代わりに(小回りが効く点を生かした)依頼をされる等を除けば、街の外に目を向けたものが主となっている。
最後に:【理獣の牙】の名前の由来
ウガンダの父、故リュガスタが名付けたもの。彼の生まれた土地では彼の故郷やリカントが差別されており、偏見に晒されて育ったため「知性なき獣(もしくは狡猾なライカンスロープなど)ではなく理性ある獣だ」という意思を込めて、現役時代に冒険者の二つ名として“理獣”と名乗ったのが由来。
「“理獣の牙”の冒険者よ、理性ある者を守るための牙であれ」
それが、生前のリュガスタがコーカスタの冒険者に言い続けた格言である。
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