従順なマシーン
幼い頃、僕は従順なマシーンだった。
通う塾から入る部活、入る高校など、すべて他人(とくに母親) の言いなりだった。
僕にとっての勉強は「親から与えられた参考書の中身をひたすら丸暗記する行為」だった。その行為を一度も楽しいと思ったことは無かった。なぜずっと言いなりになってきたか?
面倒くさかったからだ。
自分で決めるのが。
学生時代、僕はよく真面目だと言われた。そんなんじゃない。
怠惰で主体性がないだけだった。
親や教師の言ってることを何も考えずにハイハイ受け入れていれば褒められる。楽だった。しかしどこか気持ちはモヤモヤしていた。
当時の僕はなんとなく学校に行って、塾に通って、このまま大学に行って就職して、普通の人生を歩むのかな、なんて思っていた。たがそんな僕に転機が訪れる。
大学に落ちたのだ。だが「あー、落ちちゃったか」と思うくらいで、不思議とショックは感じなかった。そりゃそーだ、自分の意思じゃないんだから。
これからどうしようかと考えていた時、家族に勧められて建設関係の専門学校に進んだ。だが気持ちはモヤモヤしたままだった。
「このまま他人が決めた人生を歩むのか?」
そう考えると怖くなったのだ。
間もなく、周囲の反対を押し切り、専門学校を辞めた。それから僕は、上京して、無名芸能事務所に入ったり、ドラマや映画にエキストラで出たり、新聞配達をしたりホストをやったり…色々な経験をしたと思う。やっていくうちに、
「僕にとっての幸せは自分の道を進む事である。」
と気付いた。
何か失敗したとして、それが他人の決めたことだったら、他人のせいにできてしまう。しかし、それで後悔しても取り返す事は出来ない。
それが自分で決めたことなら、自分で責任を取らなければならない。が、全て自分で自由に決められるし、失敗を次に活かすことができる。
今の仕事も長く続けるつもりはない。単純に拘束時間が長いし、なにより代わりはいくらでもいるからだ。僕にしかできないことをしたい。しかし何をするにもある程度のまとまったお金が必要になる。なので今は将来への準備期間としてしばらくは続けるつもりだ。