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教材「雨の日のバスていりゅう所で」を利用した新しいタイプの道徳授業!
道徳教材「雨の日のバスていりゅう所で」の新しいタイプの授業を紹介します。
この教材は、雨の日のバス停で、先に並ぼうとした主人公が、母に連れもどされる話です。内容項目は「規則の尊重」です。人物の発言がほとんど描かれていない特徴もあります。
一般的な展開では、主人公がバスの中で内省する場面に焦点を当てて、次のように授業を構成するのではないでしょうか?
まず、バスが見えて、主人公が駆け出して並んだ場面の主人公の気持ちを考えます。主人公は「バスに早く乗って座りたい」という気持ちでいっぱいなのでしょう。
次に、母親に連れもどされて困惑する主人公の気持ちを考えます。主人公は連れ戻された理由が分からず困惑します。列が進まないことにも苛立ちを感じます。結局、二人は席には座れませんでした。
そして、バスの中で自分の行動を内省する主人公の気持ちを考えます。お母さんはいつもの優しい感じではありません。主人公は内省を始めます。
はじめの場面でも、次の場面でも、最後の場面でも、「役割演技」を用いて主人公の立場を考えることができます。
このような展開が多いのではないでしょうか。
しかし、「規則の尊重」の価値に迫る別の展開方法があります!
それは、主人公、周りの人々、母親の三者の立場から教材の状況を考えて「規則の尊重」について考える方法です。三段階の活動があります。
「俯瞰の力で学びを深める」新しいタイプの授業を ぜひ 体験してみてください。
一つ目は、教材に描かれた状況を確認する活動をします。
雨の日のバス停、先客が雨宿りして待っている、主人公が先に並ぼうとする、母親が連れもどす、主人公が内省を始めるという状況です。関係者は、主人公、先に並んでいた客、母親です。
二つ目は、三者の立場を想像します。次の順に考えます。
「バスが見えて、よしこが一番先頭に並んだとき、誰がどんなことを考えていたでしょう?」と問いかけて、三者の立場を想像します。
まず、主人公の立場を考えます。
主人公は、早く並びたい、座りたいという気持ちでいっぱいです。
次に、周りの人々の立場を考えます。
周りの人々は、常識を知らない子だ、先客に気付かないのか、ルールが分からないのかなどと考えます。母親への非難もあるでしょう。
そして、母親の立場を考えます。
母親は、子どもの考えと、周りの人々の考えが良くわかります。そのため、娘を連れ戻しました。娘の常識のなさに嘆き、周りの客へ申し訳なく思い、周りの客の非難の気持ちを理解しています。
この順に考えることで、子どもたちは、連れもどした母親の気持ちが分かり、雨の日のバス停には暗黙のルールがあることを理解します。
三つ目は、暗黙のルールに気付く方法を考えます。
主人公が、このような暗黙のルールに気付く方法を話し合います。「よしこは、どうしたらルールにきづくようになると思いますか?」と問いかけます。
子どもたちは、母親が教えると良い、叱って気を付けるように話す、周りの様子を見ればわかる、周りの人の気持ちを考えると良いなどの意見を述べることでしょう。この意見には、暗黙のルールやマナーに気付き、それらを守る大切さが含まれています。
親が教えるべきという意見が多い場合には、「暗黙のルールをすべて教わることはできるのでしょうか?」と切り返すと良いです。
このように進めることで「規則の尊重」の価値を深く考えていきます。
展開後段では、日常生活にはどんなマナーや(暗黙の)ルールがあるか考えて発表し合う活動を行うと良いでしょう。現実社会を俯瞰して、考えを深めることができます。
この授業では、次のような流れで学習が進みました。
1.教材に描かれた状況を確認して抽出する。
はじめに、教材のあらすじと、登場する三者の状況を確認しました。
2.三者の立場を考察する。
先に並んだ主人公、その様子を見た周りの人々、両者の気持ちが分かる
母親の立場です。これによって、主人公の問題点と、暗黙のルールやマナ
ーを理解することができました。
3.全体を俯瞰して、価値について考える。
暗黙のルールに気付き、それらを尊重する方法を考えました。この活動
では、「規則の尊重」の価値を深く考えることができました。
これまでの道徳授業では、場面ごとに、主人公の内面(気持ち・考え)を話し合って、価値を考えました。
この授業には、「内容の抽出」「内容の考察」「全体の俯瞰」の3つの活動があります。これまでの道徳授業とは、展開が大きく異なっています。
こうした展開方法を、「考察探究型の道徳授業」と呼んでいます。
いかかでしょうか?
みなさんは、「雨の日のバスていりゅう所で」でどんな授業を行いますか?
この授業は、次の授業案集に掲載しています。
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*設定可能な最低価格にしています。
(主要指示、発問、板書案、教材作成の意図などを掲載しています)
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