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教材「埴生の宿」を使った新しいタイプの道徳授業!

道徳教材「埴生の宿」の新しいタイプの授業を紹介します。心に残ったことを話し合って考えを深める展開です。


 この教材では、小さい頃の出来事で感情と言葉を失った生徒に対して、学級全員が一緒になって励まし続けます。一人の生徒のために、勝ち負けを捨てて、心を込めて行動する感動的な話です。文章は担任教師の目線から綴られています。内容項目は「思いやり、感謝」です。教材のすばらしさを最大限に活かす授業を目指しています。

 

 本稿で紹介するのは、「内容の抽出」「内容の考察」「全体の俯瞰」の3つの活動がある展開方法です。


  具体的には、教材文からすばらしい活動の様子を取り出し、そうした様子を知った感想を発表し合います。そして、全体を俯瞰して、人が勝ち負けを超えて、人のために行動できる理由を考える展開です。

「俯瞰の力で学びを深める」新しいタイプの授業をぜひ体験してみてください。

 
 まず、心に傷を負っている生徒の様子と、その生徒を励ます学級生徒の様子を取り出します。そして、そうした様子に対する感想を述べ合います。
 
 本教材は長文のため、場面に分けて、教材を読んで心に残った様子を発表し、感想を述べ合う活動を行います。本教材は5つの場面に分けることができます。
 それぞれの場面で「この部分で心に残ったことはありましたか?」と発問して内容を取り出し、続いて「心に残ったのはなぜですか?」と発問して、理由を発表し合います。

 はじめの場面では、傷ついた生徒の痛ましい様子が描かれています。生徒は「言葉を失うなんて信じられない、よほどつらいことがあったのだろう」「首を振るだけの反応とはひどい。誰もが心配する」「掃除や当番が免除されるのも当然た、何とかしてあげたい」などの意見が述べることでしょう。この活動によって「その生徒を励ましたい」と誰もが考えることでしょう。

 次の場面では、その生徒のために担任と有志が「埴生の宿」を歌い始めます。その曲の一部を聴かせた上で、教材文を読んで話し合います。生徒は「一人のために歌を歌いのはすごい」「みんなが協力するのがすごい」などの意見を述べることでしょう。三週間後にその生徒に変化が見られるようになったことにも感動することでしょう。

 このような「感動した内容と感動した理由を発表し合う活動」を、合唱コンクールの場面、運動会のリレーの場面、成長してから場面でも行います。描かれた内容の素晴らしさがダイレクトに伝わる活動だと思います。

 こうした活動によって、「思いやり」の大切さと、その効果のすばらしさについて、学級生徒は深く考え、心が動かされることでしょう。

 

 そして、全体を俯瞰して、人が勝ち負けを超えて、人のために行動できる理由を話し合います。

 まず、この学級生徒は、勝ち負けを超えて一人の生徒のためにできる限り尽くしたことを確認します。
 そして、教師は「人が勝ち負けを超えて、人のために尽くすことができるのはなぜなのか?」を問いかけます。難しい問いですが、この教材のすばらしさによって、それは可能になります。
 
 生徒は、当初は「友達だから」「何かしてあげたい」「人は優しい」などの一般的な意見を述べることでしょう。しかし、話合いが進むと、「つらい様子を見ると、放っておけないのだと思う」「何かしてあげないと、気が済まない」「何かしないと、人として自分はダメだと思ったのではないか?」など、深く考えた意見が述べられるようになります。

 教師は、そうした意見に共感した上で「そんな経験あったのかな?」などと、生徒の経験を想起させ、経験とリンクさせて意見を述べるように促します。そうすると生徒からは「こんな時があって、その時、放っておくなんてできなかった」など、具体的な経験に基づいた意見が述べられるようになります。「思いやり」の価値について、具体的な経験や行動を踏まえた考察が始まります。

 このように話合いを導くことによって、生徒は「思いやり」の価値について、さらに深く、具体的に、経験を想起しながら、そうした場面を想像しながら話し合うことができ、考えを深めることができるのです。


 展開後段では、人の「思いやる力」を感じた経験を発表し合う活動を行うと良いでしょう。例えば「今までに、人の思いやる力を感じた経験はありますか?」と問いかけます。生徒は、いろいろな経験を話してくれることでしょう。
 その後、「皆さんは、人とどのように関わって生ていきたいと思いますか?」と問い、思いやりに関して自分のこれからの在り方を考え、発表し合います。これによって、価値を自分ごととして考えることができます。

 このような展開によって、「思いやり、感謝」の価値について深く考えることができます。


この授業では、次のような流れで学習が進みました。


1.教材から学級の様子を抽出する。

 はじめに、「傷ついた生徒」と「その学級の生徒」の様子を確認し、その様子を教材文から取り上げました。

2.抽出した「生徒たちの様子」を考察する。

 次に、それらの様子について感想を述べ合いました。

*本教材は長文のため、1と2の活動を場面ごとに行いました。

3.全体を俯瞰して「人が人を思いやる理由」について話し合いました。

 生徒にとって大切な合唱コンクールと学級リレーの勝負を捨ててまで、一人の生徒を励ます活動を続けたことを例に、人が人のために行動できる理由を考えました。

 以上のように、この授業には、「内容の抽出」「内容の考察」「全体の俯瞰」の3つの活動があります。こうした展開方法を「考察探究型の道徳授業」と呼んでいます。
 この授業は、考察探究型の授業類型の一つである「心に残ったことを考える展開」と呼ぶ展開パターンを利用した展開です。考察探究型の授業には、教材の特徴に合わせた17の授業類型があります。

 

いかかでしょうか? 
みなさんは、「埴生の宿」でどんな授業を行いますか


この授業は、次の授業案集に掲載しています。

「埴生の宿」の授業案(B5版2頁)を購入したい方は、有料でPDFファイルをダウンロードできます。  *設定可能な最低価格にしています。
(主要指示、発問、板書案、教材作成の意図などを掲載しています)

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