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教材「赤土の中の真実」を使った新しいタイプの授業!

道徳教材「赤土の中の真実」の新しいタイプの授業を紹介します。主人公が研究に打ち込む様子を取り挙げて、生き方を考えていきます。


 この教材は、在野の考古学者「相沢忠弘」の活躍の様子をまとめた話です。研究のきっかけ、生活の様子、発見への疑問、専門家との交流、人々からの批判、研究所の設立、石器の発見、岩宿遺跡の発見と幅広い内容が描かれています。内容項目は「真理の探究、創造」です。

 

 本稿で紹介するのは、「内容の抽出」「内容の考察」「全体の俯瞰」の3つの活動がある展開方法です。


 具体的には、主人公が生涯を懸けて研究に取り組む様子を知り、その取り組みの難しさや心の強さを考え、全体を俯瞰して「真理の探究」の価値を考える展開です。

「俯瞰の力で学びを深める」新しいタイプの授業を ぜひ 体験してみてください。


 まず、相沢さんの生活の様子と研究の様子を見つけて取り出します。
 
 はじめに、生活の様子を取り出します。相沢さんは、朝夕は行商し、昼は発掘、夜は研究という生活をします。周りからどう思われていたのかも確認します。例えば「相沢さんは、どんな日課で生活していましたか?」と問いかけて、生活の様子を取り出します。

 次に、相沢さんの研究とその成果、発見したものを教材から見つけて取り出します。発掘場所、専門家との交流、整理と記録、研究所設立、定型石器の発見、遺跡の発見など、さまざまなことが描かれています。これらを簡潔に整理して板書します。例えば「相沢さんは、どんな研究をして、どんなものを見つけましたか?」と問いかけて、研究の様子を取り出します。

 こうした活動は、豊富に描かれた内容を整理し、教材の全体像を捉えることにもなります。
 

 次に、相沢さんの生活や研究の様子について意見を述べ合います。

 相沢さんの生活や研究を確認し、「この出来事の時には、このような気持ちになったと思う」という想像や、「この行動はすごい、他の人にはできない」などの感想を発表させます。
 生活の様子では「こうした生活をどう思いますか?」と問いかけ、研究の様子では「このような研究の様子をどう思いますか?」と問いかけます。生活の様子と研究の様子をまとめて、「相沢さんの生き方で、心に残ることはありますか?」と問いかけることもできます。

 さまざまな意見が述べられるでしょう。例えば「『朝夕は行商、昼は発掘、夜は研究』のような生活は、普通の人には耐えられないと思う」や「中傷されたときは辛かったと思う」「大勢が見に来てくれた時はうれしかったと思う」などです。
 このような活動によって、相沢さんの考古学に懸ける強い気持ちが明らかになっていきます。ここには「真理の探究」の価値が含まれています。
 

 そして、相沢さんが生涯を懸けて研究に打ち込んだ理由を考えます。

 相沢さんの生活と研究の様子を改めて確認した後、「相沢さんは、なぜ、このよう生き方ができたのだと思いますか?」と問いかけます。
 生徒からは、「本当のことを知りたかったのだと思う」「好きだから続けられた」など、考古学への興味によって続けられとする意見が出ることと思います。
 さらに話し合いを深めるために、教師は、相沢さんが専門家から言われた「大切な基礎になります」や「着実におやりなさい」などの言葉、「そうしなければならないのだ」と考えたことを想起させます。
 すると生徒からは、「自分にできることをやろうとした」「自分の使命と考えた」「本当のことを明らかにしたい」など、「好きだから」という興味を超えた強い気持ちを想像した意見が出るようになります。「真理の探究」の価値が鮮明になっていきます。

 こうした話し合いの後、教師は「人はどんな職に就いても、職に応じた探究を生涯続けることになる」ことを例を挙げて話します。例えば、飲食業では美味しさを探究し続け、服飾業では時代に応じたデザインを考え続け、教師は学習方法を探究し続けるなどです。
 こうした教師の話によって、学習に深まりと広がりが出てきます。

 展開後段では、自分が将来どんな職に就きたいか、その職ではどんなことを探究し続けるのかを考える活動を行います。

 このような展開によって、「真理の探究、創造」の価値について深く考えることができます。


この授業では、次のような流れで学習が進みました。


1.教材に描かれた主人公の生活と研究の様子を確認して抽出する。

 はじめに、主人公の生活と研究の様子を教材文から見つけました。これによって、研究に懸ける相沢さんの様子が明らかになりました。

2.抽出した主人公の生活と研究の様子を批評する。

 次に、主人公の生活と研究の様子を批評しました。生徒は相沢さんのように生活することの難しさに気付き、その取り組みの「凄さ」について考えることができました。

3.全体を俯瞰して、主人公が生涯を懸けて探究を続けた理由を考える。

 そして、相沢さんが生涯を懸けて探究を続けた理由を想像しました。そこには、本当のことを究明したいという強い意志と興味、自分の使命を自覚して無心に取り組む生き方がありました。これによって、「真理の探究」の価値を考えました。

 この授業には、「内容の抽出」「内容の考察」「全体の俯瞰」の3つの活動があります。こうした展開方法を、「考察探究型の道徳授業」と呼んでいます。
 この授業は、「考察探究型」の授業類型の一つである「心の強さを考える展開」と呼ぶ展開パターンを利用した展開です。考察探究型の授業には、教材の特徴に合わせた17の授業類型があります。

 

いかかでしょうか? 
みなさんは、「赤土の中の真実」でどんな授業を行いますか


この授業は、次の授業案集に掲載しています。


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(主要指示、発問、板書案、教材作成の意図などを掲載しています)

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