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教材「かれてしまったヒマワリ」を利用した新しいタイプの道徳授業!
道徳教材「かれてしまったヒマワリ」の新しいタイプの授業を紹介します。人間の「心の弱さ」に焦点を当てた授業です。
この教材は、自分が担当するヒマワリの水やりをさぼって反省する話です。内容項目は「よりよい学校生活、集団生活の充実」で、「役割」を自覚することを考える教材です。
一般的な展開では、主人公が水やりをさぼったことを思い出した場面や枯れたヒマワリを見て反省する場面に焦点を当てて、次のように授業を構成するのではないでしょうか?
まず、仕事を引き受けた場面の主人公の気持ちを考えます。主人公は「仕事がしやすい」「みんなが通る」という気持ちでヒマワリ担当を引き受けました。
次に、様々な理由で水かけをさぼった場面の主人公の気持ちを考えます。サッカーや遊びに誘われ、塾があり、「雨が降れば大丈夫だろう」と軽く考えています。
続いて、水やりをさぼっていたことを思い出し、ヒマワリのところに走る主人公の気持ちを考えます。友達の責任ある行動に刺激され、自分が無責任だったことを考えながら、「枯れていたらどうしよう」と考えながら走っていると想像されます。
最後に、ヒマワリが三本も枯れてしまった場面の主人公の反省する気持ちを考えます。
このような展開で授業を進めることが多いのではないでしょうか。
失敗したことから、内省を迫ることで価値について考えを深める展開です。
しかし、「よりよい学校生活、集団生活の充実」の価値に迫る別の展開方法があります!
それは、教材文から役割を果たせなくなった「きっかけ」を見つけて、そこから役割を果たさなくなる「本当の理由」を考える方法です。人間の「心の弱さ」に焦点を当てる展開です。
「俯瞰の力で学びを深める」新しいタイプの授業を ぜひ 体験してみてください。
まず、水かけをしなかった「きっかけ」や「理由」を見つけます。
例えば、「主人公は、どんなときに、役割を果たしませんでしたか?」と問いかけます。児童は、役割を果たさなかった場面を見つけて発表することができます。これらには、自分勝手な考えが含まれています。
水かけをしなかった「きっかけ」や「理由」はたくさん描かれています。サッカーや遊びに誘われる、塾がある、雨が降れば大丈夫と考える、面倒になるなどです。これらを教材文から見つけて取り上げます。
そして、子どもたちは、これらの行動や考えを批評します。
「こうした主人公の様子をどう思いますか?」と問いかけます。
主人公に対して、さまざまな批評がされることでしょう。例えば「誘われても、水をかけてから遊べばよいのだから、遊んだのは悪い」「塾があるなら、先にやればよい」などです。
批評によって、抽出した「きっかけ」や「理由」は、主人公の自分勝手な考えであることが浮かび上がってきます。
次に、水かけをしなくなった「本当の理由」を考えます。
前の活動で取り上げた「きっかけ」や「理由」を検討して、本当の理由を考えます。一つ例を挙げて、考え方を示すと良いです。「こうした場面では、なぜ、役割を果たせなかったのだと思いますか?」と問いかけます。問いかけが少し難しいので、答え方の例を一つ示すと良いです。活動がスムーズになります。
さまざまな意見が出ます。例えば「サッカーに誘われた」は「楽しみを優先した」「楽な方を選んだ」「遊びの誘惑に負けた」など、「雨が降れば大丈夫」は「都合よく考える」「さぼる理由を考える」「やりたくないことを正当化した」などです。これらを詳しく話し合わせます。
理由を詳しく述べさせると考えが深まります。
子どもたちは、主人公が水かけをしなかった「きっかけ」や「理由」は本当の理由ではないことに気付きます。そして「水かけをさぼる」のは、「怠けたい」「さぼりたい」「めんどうくさい」といった「心の弱さ」に負けたことを理解していきます。
教師は、このような「心の弱さ」は誰の心にも浮かぶことを確認します。
続いて、主人公は「どうすればよかったか?」を考えます。
具体的な方策を考える活動です。グループ活動が良いでしょう。
「主人公は、これらの場面で、どうすれば良かったでしょう?」と問いかけます。
児童は、行動面での方策を考えると思います。「毎日、時間を決めてやる」「水をかけてから遊ぶ」「遊ぶ友達と一緒にやる」などです。
これまでの活動で、子どもたちは、心の中にもさぼってしまう理由があることを理解しています。そのため「さぼる気持ちに負けない」「やらなくて良い理由を考えない」「さぼる考えた浮かんだら否定する」などの内面的な方策を考えることもできるでしょう。
このような展開で授業を進めることで、人間の「心の弱さ」を踏まえて、「よりよい学校生活、集団生活の充実」の価値、特に「役割」を果たすことの大切さについて、考えを深めることができます。
この授業では、次のような流れで学習が進みました。
1.教材に描かれた状況を確認して抽出する。
はじめに、水かけをさぼった「きっかけ」や「理由」を見つけました。
2.抽出した「きっかけ」や「理由」考察する。
次に、「きっかけ」や「理由」を批評しました。
そして、「きっかけ」や「理由」から、水かけをさぼった「本当の理由」を考えました。
3.全体を俯瞰して、価値を実現する方策を考える。
主人公の行動への批評と、水かけをさぼる「本当の理由」の考察を踏まえて、価値を実行に移す方法と、「心の弱さ」という「本当の理由」を克服する方法を考えました。
これまでの道徳授業では、場面ごとに、主人公の内面(気持ち・考え)を話し合って、価値を考えました。
この授業には、「内容の抽出」「内容の考察」「全体の俯瞰」の3つの活動があります。これまでの道徳授業とは、展開が大きく異なっています。
こうした展開方法を、「考察探究型の道徳授業」と呼んでいます。
いかかでしょうか?
みなさんは、「かれてしまったヒマワリ」でどんな授業を行いますか?
この授業は、次の授業案集に掲載しています。
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(主要指示、発問、板書案、教材作成の意図などを掲載しています)
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