第1章 データスチュワードシップとデータガバナンス 双方をどう連携させるか

データスチュワードシップを読み始めたので覚書として残しています。


データガバナンスとデータスチュワードシップ

データガバナンスとは

データガバナンス、そしてデータスチュワードシップとは、データを理解し、信頼し、高品質にし、最終的に企業の目的に適し、利用できるようにするために、人々が適切な組織を作り、正しい行動をするように保証することである。

第1章 - データガバナンスとは

データガバナンスの定義について上記のように記載されている。これはDMBOKData Governanceで述べられている内容と大きな違いはなく、特に類似点として以下があると感じた。

  • データは資産として管理されるべきである

  • ポリシーとプロセスの重要性

一方でDMBOKData Governanceではデータスチュワードの位置づけにはほとんど触れておらず、この点が本書で詳細に記載されるものになりそう。

データスチュワードシップとは

データスチュワードシップは、適切に指名されたスチュワードにガバナンスされるデータの責任を確実に担わせるために必要な人材、組織、プロセスで構成される。

「第1章 - データスチュワードシップとは」より要約

本文中にも記載があるが、データスチュワードがデータの所有者に代わってデータを管理することはよく言われていること。

他の文献と比べると実践的な役割であることをより強調しており、データガバナンスの日常業務の大半が行われると述べられている。

考えてみれば当たり前のことではあるが、データガバナンス推進において重要な(不可欠な)役割を果たすのがデータスチュワードシップということである。

データスチュワードシップの全体的目標

データスチュワードシッププログラムの目標は企業が達成すると決めた成熟度の最高レベルに沿ったものであり、以下を含む必要がある。
・データスチュワードシップ評議会が円滑に機能している。
(省略)

「第1章 - データスチュワードシップの全体目標」より要約

データマネジメント自体が経営戦略など、組織の目標に従うものと理解しているため大きな違和感はない。

一方で、データスチュワードプログラムとして実施すべき内容にデータスチュワード評議会なるモノが含まれる。DMBOKの第3章 データガバナンスにはデータガバナンス評議会の記載があったはずである。

ここについては次のデータガバナンスプログラムの構造に記載がある。

データガバナンスプログラムの構造


  • 実行運営委員会: プログラムを推進するためのサポート、必要な文化の変更、推進力を提供。

  • データ・ガバナンス委員会: ビジネス機能を代表し、ビジネス・データ・スチュワードを任命し、ビジネス・データ・スチュワードの推奨事項に基づいて意思決定を行う。

  • データ・スチュワードシップ評議会: データの使用方法、データの変更による影響、データに適用する必要があるルールを理解して、データがバナーが決定を下せるように提言を作成する。

  • ITサポート: データガバナンスをサポートするために必要なツールを提供する。

  • データガバナンスプログラムオフィス: データガバナンスの取り組みを管理し、調整する。

ここまでの内容からデータスチュワード評議会は実践的・運用的、データガバナンス評議会は戦略的と理解した。

おそらく連邦型のデータマネジメント組織を採用しているのを前提としているのではないだろうか?そうでなくても大きな組織を想定している内容と思われる。

データガバナンスの参加者の関係

データガバナンスの取り組みは、データガバナンスプログラムオフィス(DGPO)によって運営される。DGPOは少なくともフルタイムのデータガバナンスマネジャーを含む、業務を遂行するための十分なリソースを配置する必要がある。DGPOを設置せず、十分な人材を配置しなかったり、他の職務を持つパートタイムのリソースに依存したりすると確実に失敗する。だから絶対にやめること

第1章 - データスチュワードシップをデータガバナンスにどう連携させるか

DGPOには専任を置くことと言っているが、具体的にはデータガバナー、データガバナンスマネージャー、エンタープライズデータスチュワードと思われる。

これだけ専任にリソースを割くのも大変だが、実は兼任のビジネスデータスチュワードの選出が大変だと思っている。

新しくポジションを作って担当してくださいでは負担が増す。実はすでに業務の一部を担っている人にお願いするにしても新しい概念になるため、なかなか理解されない。特に上司の理解が得られないケースが多いように感じる。この悩みはいつになってもなかなか解決できん…

データをガバナンスされた状態にする

そもそもガバナンスされたデータとは

ガバナンスされたデータとは信頼され、理解されているデータであり、データそのものとデータに関する問題への対処の両方について、誰かが説明責任を負っているデータである。

第1章 - データをガバナンスされた状態へ移行

そして完全にガバナンスされたデータは以下の要素をすべて満たす。

・ビジネスデータエレメントの標準化されたビジネス名
・ビジネスデータエレメントの標準化されたビジネス定義
・計算または導出されたビジネスデータエレメントの計算または導出ルール
・データベース / システムにおけるビジネスデータエレメントの物理的な所在
・文脈にあったデータ品質ルール
・ビジネス / 物理データエレメントを作成するためのルール
・ビジネス / 物理データエレメントの使用ルール
・ビジネスデータエレメントの責任者

第1章 - データをガバナンスされた状態へ移行

これらを見るとメタデータ管理が非常に重要であり、それらが運用されている状態がガバナンスされたデータとも受け取れるように思える。

実際、本文中にも以下のような記述がある。

つまり、データエレメントのメタデータがすべて周知されていても、そのデータをマネジメントするためのガバナンスプロセスや手順が使用されていなければ、そのデータは「ガバナンスされた」ものではない。

第1章 - データをガバナンスされた状態へ移行

データをガバナンスされた状態へ移行するドライバー

データをガバナンスされた状態にするためには以下図の通り多くのドライバー(推進要因)が必要。

これらの取り組みはすべて、これまでも行われてきたように、データガバナンスとデータスチュワードシップなしで可能だが、遅延、低品質な結果、失敗の危険性がはるかに高くなる。なぜならデータに関する明確な意思決定者がいないと、多くの場合、IT担当者が調査と期限内の提供に最善を尽くそうとする中で、多くの推測が行われるからだ。

第1章 - データをガバナンスされた状態へ移行

この辺りがビジネス部門、IT部門双方で認識できないと感じる。

ビジネス部門もIT部門も「データはIT」と考えており、IT担当者が善意で推測してアレコレやっている。目の前のことに対して懸命にやっているので、全体でみるとガバナンスが取れなくなる。また、目の前しか見えていないので、自らの行いが全体に悪影響を与えているというのを認識できていなかったりする。

規模の小さな組織なら何とかなりそうだが、大組織ではこれをどのように伝えていくかがポイントになりそう。その伝え方として次の3つのPが述べられている。

3つのP: ポリシー・プロセス・プロシージャ

効果的なデータガバナンスとデータスチュワードシップのためには3つのP、 すなわち、 ポリシー・プ ロセスプロシージャ (手順) を用意する必要がある。 これらの事項の策定はデータガバナンスの取り 組みから得られる重要な初期成果の1つである。

第1章 - 3つのP: ポリシー・プロセス・プロシージャ
  • ポリシー(Why): 企業レベルで「なすべきこと」を規定するもの

  • プロセス(What): ポリシーを遵守するために何が必要かを記述するもの

  • プロシージャ(How): タスクの具体的な実行方法を詳細に記述したもの

3つのPと言っているが以下のようにWhy・What・Howと理解しても問題ないと思う。Whyが企業レベルのWhatになっているが、経営戦略などから目的がカスケードしていると捉えればさほど問題はなさそう。

所感

データガバナンスの推進には組織や人の配置が重要ということが強く述べられており、その中でもデータスチュワードがデータガバナンスの実践的な役割を担うため非常に重要ということが強調されていた。

このことについては認識していたが、想定以上に多くの役割や組織が登場していた。これらの具体的な役割や導入方法について次章以降に記載があるので、引き続き整理を進める。

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