第11章 データドメインを使用したデータのガバナンスとスチュワード
はじめに
本記事はデータスチュワードシップの第11章を読んだ覚書です。
企業が持つビジネスデータ要素を論理的にグループ化する「データドメイン」という考え方を中心に、データ管理やデータガバナンスのアプローチについての内容。
データドメインとは?
定義と役割
データドメインは、ビジネスプロセス、トランザクション、参照データ、マスターデータ、製品などに基づいて、企業全体のデータを論理的にグループ化した構造。物理的なリポジトリではなく、データがどのように使われるかという観点から整理されるため、データの意味や利用に関する統一的なフレームワークが提供される。背景と必要性
従来のビジネス機能ベースの管理では、部門ごとに同じ用語が異なる意味で使われ、データの一貫性や整合性が失われるリスクがあった。データドメインの採用により、企業全体で統一された用語の定義やメタデータ管理が可能になり、意思決定の透明性や監査証跡の確保にも寄与する。
データドメインベースのデータスチュワードシップ
従来のアプローチとの違い
従来はビジネス機能ごとにデータ管理が行われ、各部門が独自にデータの定義や品質ルールを設定していた。一方、データドメインベースの手法は、データそのものの論理的グループに基づいて管理するため、より厳格で一貫性のあるデータガバナンスが実現でる。データドメイン評議会
データドメインの管理は、各データグループに関わるビジネスデータスチュワードによって運営される「データドメイン評議会」が担う。評議会は、リードデータスチュワードや専任のマネージャーの指導のもと、以下のような活動を行う。ビジネスデータ要素の定義やメタデータの管理
標準化されたデータコントロールフレームワークの適用
承認されたプロビジョニングポイント(APP)の特定と管理
データ品質問題や規制対応の管理
承認プロビジョニングポイント(APP)の意義
APPは、データドメインのニーズに応じた「信頼できる単一のデータソース」として機能する。データの元となる各種ソースを統合・整理し、ビジネスデータ要素レベルで完全に定義・品質管理されたデータを提供することで、データ利用の効率化や品質保証に貢献。
データドメイン設定と実装のポイント
ビジネスサブジェクトエリアの収集と整理
データドメインの設定は、まず企業が扱うビジネスサブジェクトエリア(例:住宅ローン、コレクションなど)の把握から始まる。これにより、どのビジネス用語がどのデータドメインに属するかを明確にでる。ビジネスデータ要素の管理
各ビジネスデータ要素は、明確な定義、データ品質ルール、コンプライアンスおよびプライバシーの評価などを伴って管理され、単一のデータドメインに関連付けられならない。階層構造の設定
データドメインは、必要に応じて階層的に設定することで、複雑なデータ管理を容易にし、例えば「パーティマスター」を「個人パーティ」と「非個人パーティ」に分割するなど、柔軟な運用が可能になる。
組織の成熟度と運用体制
データドメインベースのスチュワードシップは、単に概念を導入するだけではなく、成熟したデータガバナンス体制の上に成り立つ。以下の点が重要。
統一されたエンタープライズ用語集の整備
各部門が持つ用語のばらつきを統合し、全社的に共有することで、データの一貫性を担保。専門知識を持つビジネスデータスチュワードの配置
各データドメインに精通したスチュワードが、日常的なデータ管理の意思決定や問題解決に参加することが求められる。データドメイン評議会の運営と連携
評議会は、データガバナンスの中心的な役割を果たし、リードデータスチュワードやマネージャーの指導のもと、企業全体のデータ品質向上に寄与。
まとめ
データドメインは、データ管理の断片化を解消し、企業全体での統一的なデータガバナンスの実現に有力。
APPの活用やデータドメイン評議会の運営により、データの品質、透明性、効率性が向上。
効果的なデータドメインベースのデータスチュワードシップを実現するためには、組織全体での成熟度や専門知識、統一されたルールの整備が不可欠。