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あなたに

 きっとあなたには届かないのを良いことに、思うままに綴ることにするね。

 あなたを、あなたの痛みを、幸福を。分かりたいと思うのは傲慢なのかな。あなたは、そんなこと分かってほしくなどないと突き放すかな。

 同じ痛みを抱えられるわけでもなければ、その痛みを全部取り去ってあげられるわけでもない。きっと私にできることなんてほとんどない。それでも、その痛みや幸福を知りたいと思う。こんな気持ちは、エゴだなんて言われてしまうかな。

 私は分かりたいと思うことを愛だと思っているし、誰かが私の痛みや幸福を分かろうとしてくれることが嬉しく感じられる。だけどそれも人それぞれで、あなたにとっては不要なことかもしれないと思うと、何もかもが利己的に感じられてしまう。ごめんね。これは単なる私の願いで、決してあなたに押し付けたいことではないから、どうかそれだけはわかって欲しい。

 こんなことを言いながらあなたと生きたいなんて大層なことを言ってみる勇気がどこにもないのは、私が私であるからで、あなたにとって価値のある人間になれる自信がないから。こんな後ろ向きな気持ちも愛と呼ぶなら、私の愛にも価値などきっとない。それでも、分かっていても想い続けてしまう。恋って難しいね。

 だけど実はね、私はあなたの全部、何もかも、愛せる自信があります。自分には自信がないくせに、この愛には自信があるなんて恥ずかしいね。でも本当だよ。どんなあなたでも愛せる自信がある。証明なんて出来ないけれど、本当なんだよ。私が見ているほんの少しのあなたを好きになったから、私が見ていない沢山のあなたも好きになれるし、愛することができると思っている。本当に。

 あなたや私がそれぞれ抱えるもの、一緒に抱えることなんて出来なくても、隣を歩いて、重いねって笑っていたかったな。

 あなたが他人に愛されないなんてきっと間違っているから、私が正しい世界に変えたかった、こんなに愛しているよって言いたかった。自分勝手かな。

 今度会えたら渡したいものがあって、まだ何も考えてないんだけどね、告白なんて出来ないけれど、こんな気持ちが、ただこの愛が、少しでも伝わったらって思っています。

 恋じゃなくて、愛さえ伝わればそれでいいよ。私の抱く恋心は醜いから、きっとあなたにだって軽蔑されてしまう。何も気付かないで、私があなたを好意的に思っていることだけ知ってほしい。

 幸せにさせてほしいのにな。矛盾だらけのこんな感情をも愛と呼ぶなら、これは多分、ラブレターです。

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