
銀河フェニックス物語 <ハイスクール編> 第一話(2) 転校生は将軍家?!
・銀河フェニックス物語【出会い編】スタート版
・<ハイスクール編> 第一話(1)
結局、レイターは裏山へ行かなかったようだ。
翌朝、登校したらすぐにわかった。
キーレンの手下が門のところで待ちかまえていた。
裏山だったら誰にも知られないけれど、あいつ、みんなの見てる目の前でボコボコにされちゃうぞ。始業時間前の中庭ってのは、教師は職員会議で誰も見ていない格好のリングなんだ。
*
オレは二階の教室の窓から中庭を見た。
キーレンたちに囲まれてレイターが入ってきた。
大人の中に子供が一人だけ混ざっているみたいだ。
オレだったら、それだけでびびっちまうのに、あいつは緊張感無くオレに手を振った。
「おはよぉ、ロッキー。おはよぉ、女子のみなさん。俺、レイター・フェニックス。よろしく」
あいつは自分の置かれてる立場、ってもんわかってるんだろか。
教室という教室の窓から生徒が群がって、中庭を見てる。
「こんな立派な歓迎会、ありがとう」
歓迎会と間違えてるのかよ。
「とくと歓迎してやる!」
あ~あ、キーレンの怒りのツボを刺激してるよ。
女共は心配そうな顔をして固まってる。
でも、誰も教師に連絡したりしない。そんなことしたら後で大変だってわかってるから。
向かい合ったレイターとキーレンは、身長が三十センチは違う。
一発殴られて倒れちまうのが一番いい。下手に抵抗するとキーレンの奴、歯止めがきかなくなっちまう。
中庭も教室内も、緊張で静まり返る。
もし、ほんとに危険な状態になったら、みんなオレに止めに行けって言うんだろうな。オレとキーレンは家が近くて、ガキの頃はよく遊んだ。
だから、今もタメ口で話す。
ああ、めんどくさい。オレが言ったってキーレンは止めないってわかってるのに。
とにかく一発でやられてくれ、とオレは祈った。
「お前の、歓迎会だ!」
笑ってるんだか怒ってるんだかわからない怖い顔で、キーレンがレイターに襲いかかった。
女共は目を手で覆いながら、指の隙間から見てやがる。
と、何が起こったのか、よくわからなかった。
レイターに触れるかどうか、ってところでキーレンの体が空中に吹っ飛び、ひっくり返った。転んだのか?
あわててほかの連中がレイターに向かっていく。
何なんだあいつ。手品を見ているようだ。
キーレンの手下たちが、バタバタと倒れていく。
一撃で的確に急所を狙ってる、ってことか。
十秒でけりが付いた。
「余興はこれで終わりかな?」
キーレンは嫌われ者だったから、みんなキーレンに見えないようにしてレイターに拍手を送った。
やっぱり将軍家の息子は普通じゃない。
レイターは、息一つ切らすことなく教室へ入ってきた。
そのまま何もなかったような顔で、オレの隣に座った。
「お前って、喧嘩強いんだな」
「っつうか、命かかってねぇ喧嘩って久しぶりだったから、あんなもんだろ」
こいつの言ってる意味が、よくわかんない。 (3)へ続く
・第一話からの連載をまとめたマガジン
・イラスト集のマガジン
いいなと思ったら応援しよう!
