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銀河フェニックス物語<少年編> 自由自在に宙を飛ぶ(5)
敵であるハゲタカ大尉の航行ログは美しい軌跡を描いていた。
・銀河フェニックス物語 総目次
・【自由自在に宙を飛ぶ】(1)(2)(3)(4)
レイターはモニターの前でブツブツとつぶやきだした。
「右六十三度旋回しながら、補助噴射。機体傾けたまま、発射…」
自分が作った航行ログを見ながらハゲタカ大尉の操縦をトレースしている。
「つぶやくのを止めてくれと言っただろう」
「あ、悪りぃ」
珍しくこいつが私に謝った。無意識のうちに口にしていたようだ。
「お前、これまでもそうやって操縦をイメージしてきたのか?」
「ああ、下手な奴を真似しても仕方ねぇからな。師匠のカーペンターのレースは、全部覚えてるぜ。ゲームで何度も再現した。テッグレスのコースはどうやってもうまくいかねぇんだけど」
ゲームか。僕は思いついた。
「タルバニア海戦のデータをシミュレーターにインプットしてみるか?」
「えっ? マジ?」
レイターの大きな目がさらに見開いた。
シミュレーターに入れればゲームの様に操縦桿を握って体験できる。
「お前がアリオロン側の航行ログも作ったからできなくはない。ただ、このデータは機密レベル四になっている。アレック艦長とハミルトン少尉の許可が必要だ」
「ハミルトンの…」
レイターの声が小さくなった。
アレック艦長の許可は取れそうだが、ハミルトン少尉から得るのは難しいだろう。自分が戦線離脱した記録だ。
だが、仕方がない手続きなのだから。
*
レイターが嬉しそうに部屋に入ってきた。
「アレックとハミルトンにOKをもらった」
「嘘じゃないだろうな」
私はレイターが嘘をついているのではないかと疑った。
「うそじゃねぇよ。ハミルトンに聞いてみろよ」
レイターが口を尖らせた。
ハミルトン少尉に確認をしたら驚いたことにちゃんと了解を取っていた。
「ああ、オーケーしたぜ。あいつは俺の恥ずかしい姿を晒したいらしいからな」
そう言ってフッと鼻で笑った。
「恥ずかしくありません。あなたの操縦は素晴らしい」
「坊ちゃんにそんな風に言われるとお世辞でもうれしいよ」
「お世辞ではありません」
レイターは、自分で作ったハゲタカ大尉の航行ログを見せながらハミルトンに交渉したのだという。
「頼むから一緒に考えて欲しいんだよぉ。ハゲタカ大尉の攻略法を」
レイターは自分の思いついた攻略法を、次から次へとハミルトン少尉に投げかけたという。
あいつはハゲタカ大尉の操縦をトレースしていただけじゃなかったのだ。自分だったらどう戦うか。ずっと考えていたのか。
「どれもダメだとダメ出ししておいた。あいつのやり方では、相打ちになるのが関の山だ」
逆を言えば、自分が生きて帰ることを考えなければ倒せる、ということか。
私の心を読んだかのようにハミルトン少尉が言った。
「坊ちゃん、死んだらおしまいなんだよ。ゲームじゃないんだ戦闘は」 (6)へ続く
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