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銀河フェニックス物語<少年編> 第一話(7) 大きなネズミは小さなネズミ
乗組員とレイターが親しくなるにつれてアーサーの不安は募った。
・銀河フェニックス物語 総目次
・「大きなネズミは小さなネズミ」まとめ読み版
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・<少年編>のマガジン
*
その日は射撃訓練だった。
訓練は重要な任務だ。艦内の後部にある訓練場でシミュレーション機が浮かび上がらせる敵兵士を本物のレーザー銃で撃つ。
レイターは僕たちの訓練を待機区域でじっと見ていた。
十二歳の僕が言うのも変だが、十二歳の少年というものは銃に興味があるらしい。彼が参加したくてウズウズしているのが伝わってくる。隊員は皆、そのことに気が付いていた。だが、特段の事情無く一般人に銃を触らせてはならないと、内規で決まっているから声をかける者はいない。
ところが、
「お前もやってみるか」
訓練の休憩中にアレック艦長がレイターを誘った。
また、艦長の気まぐれが始まった。この艦ではアレック艦長の気まぐれは内規を超える特段の事情だ。
「いいの?」
レイターの目が輝いた。
「ま、どうせシミュレーションだからな」
民間人と敵兵士の三次元映像が次々と動き出す。軍服を着た兵士を撃てば得点が加算されるが、民間人を撃つと減点される。
「銃の使い方わかるか?」
「ゲーセンでやったことある」
確かにこの訓練はゲームセンターのゲームと似ている。だが、この訓練では扱うのは本物の銃で勝手が違う。ソラ系では銃の所持には免許が必要で、僕のような例外でなければ成人にしか許可は下りない。
アレック艦長が銃を渡す。突然、レイターが僕たちに銃を向けたらどうするつもりなのか。
僕は手にしていた銃の引き金に指をかけた。
僕の心配をよそに、レイターはシミュレーターに向かって銃を撃ち始めた。基本がまるでなっていない構えだ。
ゲームで慣れているというレイターは、いい反応をした。めったやたらに撃っているようで民間人を器用に避けている。
「ほう、なかなかやるじゃないか」
アレック艦長が楽しそうに声を上げた。
命中率六十五%。
何だろう、僕は彼の動きに不自然なものを感じた。説明できない違和感。
僕はもう、彼が何をしても怪しく感じてしまう。
*
「俺、大きくなったら『銀河一の操縦士』になるんだ」
レイターは艦の至るところで自分の夢を大人たちに話していた。
そんなレイターと戦闘機部隊が仲良くなるのは必然だ。彼は暇があると格納庫に顔を出した。カタパルト清掃の当番だけはさぼることがなかった。
レイターはシミュレーターを使った宙航戦闘機訓練をやりたがっていた。だが、戦闘機部隊の隊長を務めるモリノ副長は厳格な人だ。部外者に触らせたりしない。
ところが、射撃訓練をアレック艦長がレイターに解禁した事で、事情が変わった。
戦闘機シミュレーターの訓練にアレック艦長が顔を出した日のことだ。
「ねえねえ、触ってみていい?」
レイターが艦長に聞いた。あいつ、タイミングを狙っていたな。
「お前、操縦士になりたいんだって? やってみるか」
案の定、アレック艦長は簡単に了承した。
「やったぁ」
モリノ副長は眉をしかめたが、艦長の言葉は絶対だ。
レイターは実機の操縦席と同型のシミュレーターに乗り込んだ。身体が小さくて操縦桿に届かない。浅く不格好に腰掛けた。隊員たちから小さな笑い声が上がる。
モニターに甲板と宇宙空間が映し出された。
「見ててね」
と言うが早いか、一気にスタートさせた。これはゲームじゃない。あんな加速で飛び出すのは無理だ。
が、次の瞬間、僕はモニターに釘付けになった。綺麗にぶれずに飛んでいる。敵の迎撃機が飛んで来た。トリガーを引いて撃つ。命中。
「いやっほーい!」
次の敵機がミサイルを撃ってきた。交わしながら撃墜。
続いて制宙空戦闘機が接近戦を仕掛ける。 (8)へ続く
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