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銀河フェニックス物語<出会い編> 第四十二話(4) 同級生が言うことには

ロッキーはレイターとティリーのやり取りを見ながらフローラのことを思い出した。
第一話のスタート版 
第四十二話(1)(2)(3

「わたし、ちゃんとレイターに伝えてなかったわよね」
 ティリーさんが真面目な顔をしてレイターに話しかけた。

 オレは、どきっとしながら二人を見る。
「S1すごかった。『銀河一の操縦士』の操縦は、文句なしに銀河一だったわ」

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 レイターは学生時代、『銀河一の操縦士』を目指してS1のレーシングゲームで最高得点をたたき出しまくり、ハイスクールを中退した後は飛ばし屋の『裏将軍』を隠れてやってた

 そんなあいつが、昨シーズンついに本物のS1最終戦に出場して、無敗の貴公子と戦った。ティリーさんの言う通りすごかった。

 最後までどっちが勝つかわからず、S1史上に残るバトルと騒がれた。

外向き真面目

 勝負はエース・ギリアムが制したけれど、コースレコードはレイターが出した。

「ありがとよ。ティリーさんにほめられるなんて、なかなかねぇからな、お世辞でもうれしいぜ」

「お世辞じゃないわ」
 レイターは宇宙船オタクだ。本気で喜んでやがる。

紅葉レイター@ネクタイなし微笑

「でも、『あの感覚』には入れなかったんだ」
「そうなの? あれだけのすごいバトルだったのに…」
 ティリーさんがちょっと驚いた。

 その話、オレも前に聞いたことあるぞ。
「あの感覚、ってレイターが昔言ってた、とにかくすげぇ、ってやつ?」
「とにかくすげぇ、って何だよ、もうちょっと、ちゃんと伝えただろ。全知全能とか」
「いや、お前、すげぇしか言ってないぞ」
 ティリーさんが笑った。また、昔を思い出す。

「あれだろ、『あの感覚』って一回目は戦闘機に乗ってた頃に降ってきて、もう一回はフローラと一緒に旅行へ行った時に感じた、ってヤツだろ」

横顔笑顔同じ向き

 フローラが死んで、飛ばし屋になったあいつはいつ死んでもおかしくない勢いで小惑星帯を飛ばしてた。それでも『あの感覚』には辿り着けなくて、フローラがいないとだめだ、って泣きそうになってたことをオレは忘れてないぞ。

 ティリーさんがオレを見て思わぬことを口にした。

わたしも『あの感覚』を感じたことがあるんですよ」
「え? 本当マジ?」
「ええ、レイターの助手席に乗っていたんです。そうしたら世界が真っ白になって」

 おいおい、初耳だ。レイターからそんな話は聞いてない。
 レイターが首をかしげている。
「わかんねぇんだよな。どうしてあの時、白魔とのバトルで『あの感覚』に入れたのか」

 なんでわかんないんだ? こいつバカじゃないの? オレにはわかるよ。ティリーさんと一緒だったからに決まってるだろが。

 この部屋にフローラとレイターが相思相愛ん時と、同じ空気が漂ってる。

相思相愛

 ティリーさんとレイター。絶対、二人はお互いが好きだ。

「納得いかないよ」
 オレはもう止められない。
「あん? どうした、ロッキー」
 レイターの代わりに、オレが友人として言ってやる。

「ティリーさん、エース・ギリアムのどこがいいんですか? 大企業の社長だからですか。こいつ変な奴だけど、いい奴だってこと、あなたもわかってますよね」

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 ティリーさんが目を丸くしてオレを見た。
「エースと別れて、こいつとつきあってやってくれませんか?」

 レイターが大声を上げた。

「ロッキー! あんたは馬鹿か。ティリーさんはなぁ、筋金入りの無敗の貴公子オタクなんだぜ。推しのエース追いかけてクロノスに入社したんだ」

「え?」
 知らなかった。そんな情報は聞いてなかったぞ。
 レイターの奴、この恋は最初からうまくいかない、ってわかってた、ってことかよ。

 オレはあわてて頭を下げた。レイターが言う通り一言多かった。
「ご、ごめんなさい。差し出がましいこと言ってすみません。忘れてください」

 ティリーさんが困った顔をしながら言った。
「謝らないでください。わたし、エースとつきあってませんから」

「あん?」

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 オレはめずらしいものを見た。レイターが明らかに動揺した。隣の家が爆発しても慌てない奴なのに。

「オレ、おつきあいしてる、って会見をニュースで見ましたよ」 
エースは会見でいいおつきあい、って言いましたけど、あれは友人という意味だったんです」

正面前向きスーツ微笑

「え? そうだったんですか?」
 こいつは朗報だ。

「……」
 レイターの奴が固まってる。
 面白過ぎる。あいつも 知らなかったんだ。  

「レイター、よかったじゃん。チャンスだぜ。お前ティリーさんのこと好きなんだろ」
 オレはレイターの肩を叩いた。   (5)へ続く

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48ノ月(ヨハノツキ)
ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」 レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」 ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」 レイター「なんか、すげぇな……」

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