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銀河フェニックス物語 <恋愛編> 第三話 大切なことの順番(最終回)
ロッキーの話を聞いたティリーは情けなくなり涙が止まらなかった。
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・<恋愛編>第二話「麻薬王の摘発」まとめ読み版
*
体が揺れている。
ほんわりと温かさが染みてきて、気持ちいい。
頭の奥に、わたしの大好きな声が響いている。
その声が怒っていた。
「ったく、酔いつぶれるまで飲ませて、どうする気だったんだよ」
わたしの大好きなレイターの声だ。
「どうかする気なら、お前を呼んだりしないよ」
ロッキーさんの困ったような声が、隣から聞こえた。
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わたしは、レイターの背中におぶられていた。
ひんやりとした夜風で目が覚めてきた。
どうやらわたしは、あのまま店で眠ってしまったらしい。
どうしたものかと悩んだロッキーさんが、レイターを呼び出したということのようだ。
「ふん。俺のカネだと思って散々飲み食いしやがって、何でボトルなんかいれてんだよ」
「でも、お前が悪いんだぞ」
ロッキーさんがレイターに詰め寄った。
そうだそうだ。レイターが悪いんだ。
「俺が? 何で?」
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「船に変なパーツ取り付けてたんだろ」
「変じゃねぇよ」
「それは、今日付けなきゃダメだったのか?」
「あん? そうだよ。明日、ティリーさんが仕事で船使うから、ガレガレの船貸してくれって言われてんだ」
思い出した。
明日、部長の使いで出かけるのに、操縦がしやすいガレガレさんの小型船を貸して欲しい、って頼んでいたことを。
「客乗せるっつってたから、大急ぎで振動を抑えるパーツ買ったんだ。ティリーさんの操縦は、乗ってる人が酔っちまうからな。あそこまで下手な操縦を補正できるパーツってないんだぜ」
「それ、ティリーさんに言ったのか?」
「言ったさ」
力説していたレイターを思い出す。
振動を抑えることに優れていて、船酔いにもならないって、確かに言っていた。
でも、わたしはレイターの操縦には必要ない無駄なものだ、と思ったから聞き流していた。
だって、レイターはわたしの為のパーツだなんて、一言も言わなかった。
今、気がついた。値段が高いパーツで、わたしが「お金の無駄だ」なんて言ったからだ。
だからわたしの為のものだ、って言わなかったんだ。
わたしに気を使って……
「ほんとは試し乗りして欲しかったんだよな」
つぶやくレイターの声を聞いたら、夕方、自宅のモニターに映ったレイターを思い出した。
『パーツの取り付けにつきあって欲しいんだけどな』って寂しそうな顔をしたレイターを。
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レイターだって、わたしと一緒にいたかったんだ。それに気がつかなかったわたしがバカだった。
「ばかっ!」
わたしはレイターの背中を叩いた。
「およ。ティリーさん起きたのか?」
「ばかばかばかばか」
ちゃんと伝えないレイターが悪いのよ。
「あん?」
「船とわたしの、どっちが大事なの?」
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「船に決まってるだろが」
即答だ。むかつく。
どうしてわたしだ、って言ってくれないのよ。
「ったく、こんなぐだぐだになるまで飲みやがって!」
腹を立てたレイターの声。
「折角のおしゃれが、台無しじゃねぇかよ」
あ、……レイターの一言で気持ちがはずんだ。素直にうれしい。
やっぱり、レイターは気づいてくれたんだ。
「俺以外の男との食事に、気合いをいれやがって」
もしかして妬いてる? 本気で怒ってる?
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「あんたこそ、俺とロッキーのどっちが大事なんだ?」
あなたのためにおしゃれをしたのよ。どれだけ時間がかかったと思ってるのよ。
バカなことを聞かないで。
「ロッキーさんに決まってるでしょ!」
隣でロッキーさんが頭を抱えた。
「あちゃあ。お前たちって、どうしてそうなんだよ」
どうしてこうなんだろう。
また、涙が出てきた。愛しいわたしの彼氏。
あなたより大切なものはどこにもない。優先リストの一番上だ。
「く、苦じい。はなせっ。俺を殺す気か! この酔っぱらい!」
「離さないから、覚悟しなさいっ!」
わたしは思いっきり力を込めて、レイターの首を抱きしめた。
(おしまい)
<恋愛編>「ジョーカーは切られた」へ続く
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