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銀河フェニックス物語<出会い編> 第四十二話(2) 同級生が言うことには
ティリーはレイターの友人だというロッキーと初めて顔を合わせた。
・銀河フェニックス物語 総目次
・第四十二話(1)
* *
オレはティリーさんの実物を初めて見た。レイターに初めて彼女の話を聞いてから何年が経っただろう。
写真通りのかわいい子だ。レイターの見舞いに来た、っていう。
情報番組で見たぞ。彼女はレイターを振って、無敗の貴公子のエース・ギリアムとつきあってるんだよな。そりゃそうだよな。片や大企業の社長だもんな。
「レイターはどんな学生だったんですか?」
ティリーさんがオレに聞く。
レイターは、今もティリーさんのことが好きなんだよな。
あいつの印象を少しでも良くしておいてやるのが、友だちってもんだ。
「普通のハイスクールの生徒ですけど」
彼女が怪訝そうな顔をする。そうだよな、あいつ普通じゃないもんな。
振り回されて大変だ、って話をしたばかりだ。
「喧嘩の強い、普通の生徒っていうか」
う~ん、何て言えばいいんだ。
裏番張ってた、とか飛ばし屋仕切ってたとか、言っていいのかどうなのか。彼女はどこまで知ってるんだろう。
「普通の生徒、ですか?」
「いや、決して普通じゃないんだよ。それはわかってるんだけど、ほかに言いようがないんだ。オレにとっては普通のダチだから」
「そうなんですね」
*
アーサーから聞いていたとおりだった。
ティリーさんはアーサーの妹フローラに似てる。
見た目じゃなくて、雰囲気だ。一見おとなしそうなんだけど、結構はっきりと物を言う感じ。
オレには全然会わせてくれないのに、レイターは前にティリーさんを月の御屋敷に連れてきたことがある。その後、オレはバブさんに感想をたずねた。
「ティリーさんって、どんな子だった?」
「お嬢様に似てらしたよ」
「大丈夫かな」
「何がだい?」
「死んだ恋人に似てるなんて知ったら、彼女はいい気持ちしないよな」
「まあ、あのバカだけはお嬢様と似てると思っていないから、いいんじゃないかい」
*
ここの御屋敷には、フローラの写真がたくさん飾ってある。
ティリーさんから、フローラのことを聞かれたら面倒くさいぞ、と思っていたら、悪い予感は的中するものだ、案の定彼女が聞いてきた。
「ロッキーさんは、フローラさんのことご存じですよね」
結婚写真に一緒にばっちり写ってるもんな。知らないとは言えないな。
「え、ええ」
「どんな人でしたか?」
聞かれたくない質問だった。あなたと似ているなんて言えないし。
「かわいかったです。人見知りなんですけど、結構はっきりしてるところがあって」
当たり障りのないホントのことを伝える。
写真を見てると、あの頃のことが思い出されてくる。この屋敷で騒ぎまくった。楽しい思い出。
「あいつら、ほんとに仲が良くって」
って言ってあわてる。オレは一言多い。フローラの話から話題を変えたい。
「僕から質問してもいいですか?」
「はい」
「レイターがあなたのことを好きだ、ってことは知ってるんですよね?」
ティリーさんは首をかしげた。もしかして、伝わってないのか?
「あいつ、あなたのこと俺のティリーさん、って呼んでうるさいんですよ」
ティリーさんは困ったという顔をしながら答えた。
「レイターは特定の彼女は作らない主義だそうです」
ちょっとはぐらかされた。
「それは、そうなんだけど、違うんだよ。あいつの本心は」
レイターの女の話は色々聞いてきたけれど、ティリーさんは違う。あいつの不特定多数からはずれてる。
「わたしとつきあうつもりはないって、レイターからはっきり聞いてますから」
オレは驚いた。
「ええええっ?! なんで、そんなことを、あいつが言ったの? ほんとにレイターの奴、バカだよ、大バカ」
そんなことを言ってるから、エースに彼女を取られちゃったんだよ。って思ったら頭に衝撃が来た。
「人のいねぇところで、俺の悪口言ってんじゃねぇよ」
後ろにレイターが立っていた。こいつ、どこから聞いてたんだ? (3)へ続く
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