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銀河フェニックス物語<裏将軍編>最後の最後は逃げるが勝ち(2)
・銀河フェニックス物語 総目次
・裏将軍編のマガジン
・最後の最後は逃げるが勝ち(1)
* *
どうするよ。思うように船が動いてくれねぇ。
レイターはため息をついた。
こんなことは初めてだ。チューニングする先から自分の身体が大きくなる。感覚が追いついていかねぇ。
ああイライラする。背が伸びることを待ち焦がれてたっつぅのに。
喧嘩も間合いを取るのは楽になったが、大振りしてるのがわかる。身体全体がうまく連動してねぇ。
とにかく左の教官席をメインに繋ぎ変える。残り五日じゃ大改修はできねぇな。それでも今のままよりはマシだろう。西の老舗にやられる訳にはいかねぇ。
「大丈夫? 身体と操縦席のサイズがあってないんでしよ」
ヘレンが心配そうな顔で俺を見た。
「平気平気。俺は銀河一の操縦士になる男だぜ」
御台は誰よりも早く気づいていた。俺の操縦がおかしいことに。
「急に私より大きくなるんだもの。驚くわ。将軍様をチビって呼べないじゃない」
「フン」
俺自身驚いてるんだ。身体と神経が乖離している。指先の余った手袋で精密機器を整備してるようなもどかしさ。
集中できるはずの操縦ですら繋がらねぇとは。
* *
レイターは大丈夫だろうか。裏将軍の正室、御台所のヘレンは気が気ではなかった。
突風教習船の改造にかかりっきりで、ほとんど寝ていない。シートの繋ぎ換えには時間がかかる。試乗して微調整を繰り返して自分のものにする。
食事の時間も削っている。
「少し食べたほうがいいわよ」
「減量中なんだ」
本気とも冗談ともつかない笑顔を私に見せた。私に心配をかけまいとしているのがわかる。
あたしは誘ってみる。
「キスしても体重は増えないわよ」
「そうだな」
彼の顔があたしに近づく。
裏将軍とつきあっているふり。これが彼とあたしの契約。
レイターの背が急に伸びた。
キスをする時にあたしが上を向くようになった。レイターがあたしの身長にあわせて唇を重ねる。
見上げるレイターの顔は知らない人のようだ。
体つきも急にがっしりしてきた。少年がいきなり大人の男性になっていく。
レイターは知らない。
成長すればするほど、あたしの理想の男性に近づいていることを。
* *
銀河警察警備部のクリス警部は、カバのような大きな口から深いため息を吐いた。
本庁に呼び出された。俺の本来の任務とは関係ない交通部の暴走族取締り会議だ。
東のギャラクシー・フェニックスが、来週、西のウエスタンクロスとバトルをする、という情報は警備部にも入ってきている。
この一戦で銀河連邦の暴走族が統一される。警察としては奴らにこれ以上の力を持たせる訳にはいかない。だから、どちらが勝っても解体させる、という。
交通部も虫がいいよな。散々、裏将軍勅令を利用してきたくせに。流石にここまでの大規模組織になると見逃す訳には行かなくなったということか。
俺は裏将軍にツテがあると言うことで会議に招かれた。
裏将軍は一切素性を明かしていない。だが、銀河警察だってバカじゃない。証拠はないがレイターが、無免、いや仮免で飛ばしていることに気づいている。
レイターの後見人は銀河連邦軍のジャック・トライムス元帥だ。
家出中とは言え将軍家が絡んでいるから、無理に無免許で摘発するのは躊躇している。
「ギャラクシー・フェニックスが勝った場合は、クリス君に裏将軍との交渉を頼みたい」
面倒なことを頼まれてしまった。だが、レイターの奴を交通部に逮捕させるわけにもいかん。
俺は将軍家の天才少年、いやもう少年ではないな、に相談の連絡を入れた。
「私もレイターをこれ以上、飛ばし屋に深入りさせたくないのでご協力します」
とアーサーはある策を与えてくれた。 (3)へ続く
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