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銀河フェニックス物語<少年編> 第十五話(11) 量産型ひまわりの七日間
銀河フェニックス物語 総目次
<少年編>第十五話「量産型ひまわりの七日間」(1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10)
<少年編>マガジン
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ベッドの上の段から聞こえるうめき声で目が覚めた。
レイターがうなされている。
「ダグ、やめろ」
微かに言葉が聞き取れる。また悪夢を見ているのか。レイターによれば、ダグと自分に殺される『赤い夢』。
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ストレス障害の症状だ。このところ落ち着いていたのに、あいつに何かあったのか?
目を覚まさせてやったほうがいいが、身体を起こすのが面倒くさい。
このところ捕虜への対応が忙しく疲れている。部屋には寝るために戻るぐらいだ。せめて睡眠で体調を整えておきたいのに、と思ったところで唸り声が途切れた。眠ったのか。
レイターのせいで眼が冴えてしまった。二段ベッドの天井を見つめていると、昨日の会議が思い出された。
モリノ副長は真面目で規律を重んじる。僕とヌイ軍曹が行ったグリロット中尉の尋問議事録を読んで「意義あり」と声を上げた。
「グリロット中尉にトレーニングルームの利用を認めるべきだ。捕虜に関する規程では基本的に要望を叶えることになっている」
僕は反論した。
「一週間の拘束であればトレーニングルームを使わせなかったとしても、人権委員会で問題になることはありません。拘束室内でも運動を認めています」
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「いや、人道的な見地から、利用させることが無理難題かどうかという視点で考えるべきだ」
「彼が逃走した場合には、V五型機を爆破もしくはデータを消去する恐れがありリスクが高すぎます」
僕の発言を受けて、メカニックのカナリア少尉が発言した。
「爆破を避けるために、ひまわりのエネルギーは抜いておいた方がいいですね。物理的にエネルギータンクに穴をあける必要がありますが、構いませんか?」
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「そうだな、作業を進めてくれ」
それだけでは不十分だ。
「データの消去については防ぎようがありません」
「トライムス少尉、ロックを解除されないように彼を機体に近づけなければいいだけだ。拘束室とトレーニングルームの距離は近く、見張りの負担も少ない。断る理由にはならない。捕虜に関する規程を守ることは、今、敵の捕虜になっている連邦軍人たちの待遇改善にもつながる。長期的な視点からも必要だ」
モリノ副長に根回しをしておくべきだった。正論を崩すことができない。
ひまわりに機密データが隠されている。しかも、最高機密である亜空間破壊兵器に関する情報の可能性がある。そのことはアレック艦長にしか報告していない。会議に艦長が出席していれば流れは変わったかもしれないが、仕方ない。
とにかく、グリロット中尉の移動時には細心の注意を注ごう。
万一、データが消去された時のためにもひまわりがどんな種類の情報を持っているのか手がかりだけでも知っておきたい。
ヌイ軍曹は黙秘の砦に穴を開けた。そして、カナリア少尉がヒントをくれた。中継地点まで残り四日。何とか手繰り出さなくては。
考えている間にいつしか眠っていたようだ。朝起きるとレイターの姿はなかった。
(12)へ続く
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