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銀河フェニックス物語<少年編> 第一話(11) 大きなネズミは小さなネズミ
モリノ副長が指揮する中型船が間もなく到着すると連絡が入った。
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「危ねぇ!」
レイターが僕の体を突き飛ばした。青白い光が横をかすめる。レーザー弾だ。レイターが倒れた。肩から血が流れていた。
「レイター!」
レーザー小銃を手にした海賊たちが近づいてくる。レイターの体を引っ張って岩陰に隠れる。
「あいつらに、とどめをささねぇからだぞ……」
レイターは僕に文句を言ったが、その声に力がない。
船の装甲は丈夫だ。入り口はすぐそこだ。中へ入ってしまえば何とかなる。だが、レイターは自力では動けない。
バリバリバリバリッツ
爆音と共に戦闘機が近づいてきた。この音は味方だ。
「援護する」
モリノ副長の声が通信機から聞こえた。
「アーサー、すぐ船へ戻れ。レイターはその岩陰へ置いていけ。これは命令だ」
命令? 無理だそんなことはできない。出血がひどい。彼は僕をかばって撃たれたのだ。倒れたレイターの体を背負う。
「置いて、いけよ。命令だろ……」
それだけ言うと彼の体から力が抜けた。意識を失ったようだ。とにかく急がなくては。彼の身体は軽い。味方の援護さえあれば何とかなる。
僕は生まれて初めて命令を無視した。彼の体を背負ったまま走り、船へと飛び込んだ。
ドアを閉める。
ダッ、ドンッ。
ドアにレーザー弾の当たる音がして船が揺れた。間に合った。
レイターのシャツを引き裂き、士官学校で習った止血の手当てをする。
バルダン軍曹ら白兵戦部隊が小惑星に上陸した。
海賊たちは抵抗を続けたが、バルダン軍曹らの敵ではなかった。
「小手調べにもならんな」
見る間に制圧し人工重力を解除した。
僕たちはアレクサンドリア号へと戻った。
*
医務室に入ると、青白い顔をしたレイターがベッドで眠っていた。
医官のジェームズがその横で治療にあたっている。ジェームズは年齢は僕より十歳上だが、士官学校の同期で僕と同じ少尉だ。
「レイターの具合は?」
「傷はそれほどでもないが、かなり出血したからね。君の応急処置が適切で助かったよ。彼は純正地球人だったんだ。輸血が足りなくなるところだった。この艦に純正地球人なんて乗っていないからね。元気になったら自己血を保存させないと」
地球人というのはわかっていたが純正地球人とは知らなかった。
「それから彼のDNAを鑑定にかけた。レイター・フェニックスは偽名じゃなかったよ。住民登録ではマフィアの抗争に巻き込まれて死んだことになっていた」
それは知っている。ジェームズが僕の顔を見た。
「驚かないところを見ると、やっぱり知っていたんだね。アレック艦長は、彼をこの船で面倒見ると決めたようだよ。親も亡くなっていて、帰る家がないというのが本当だってわかったからね」
ジェームズは視線をレイターの幼い顔に落として続けた。
「彼のいた町はマフィアに荒らされて、それこそ前線のような状態だったらしい。本物の前線とどっちがマシかよくわからないが、彼が地球に帰りたがらない理由もわかったし」
アレック艦長は詰めが甘い。裏情報までは調べていないだろう。
マフィアが街を荒らした原因が十億リルの懸賞金を懸けられたレイターの存在だということや、彼自身そこで銃を持って戦っていたということは。 最終回へ続く
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