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銀河フェニックス物語 <ハイスクール編>火事の日の約束(2)
火事の現場が崩れ出した。ロッキーはレイターが無事か心配になった。
・銀河フェニックス物語 総目次
・<ハイスクール編>マガジン
・<ハイスクール編>「火事の日の約束」(1)
オレが焦ったその時、
「ロッキー、あとは頼む」
レイターの声が聞こえた。
よかった、あいつは近くにいる。オレはきょろきょろと見回した。レイターの奴、野次馬と一緒になって規制線の外にいた。
オレに手を振っている。
「お、おい」
あとは頼むってなんだよ。レイターに近づこうとした、その時、
「エリーゼ!!」
半狂乱になった女性がオレに突進してきた。オレからひったくるようにして女の子を抱く。
「ママ~」
女の子の母親だった。
「ありがとうございます。ほんとにありがとうございます」
母親はオレにペコペコと何度も頭を下げた。
エリーゼという女の子は母親の腕の中でうれしそうだ。
「君、立派だったな。話を聞かせてくれたまえ」
警察官から呼び止められた。
「あ、あのオレじゃなくて…」
振り向くとレイターの奴、姿を消していた。逃げたんだ。オレは知っている。あいつが警察嫌いだということを。あとは頼む、ってそういうことか。
オレはレイターのことは黙っていた。
オレは、人命救助をした勇気ある感心な学生ということで、警察と消防から表彰を受けることになった。
一通り手続きが終わると外は暗くなっていた。疲れていたけれどオレは家へ帰る前にレイターの家っていうか居候宅へ寄ることにした。きょうはレイターの部屋で遊ぶ予定だった。
将軍家の『月の御屋敷』
この屋敷は厳重に警備されているけれどレイターに教えてもらった抜け道がある。勝手口から屋敷へ入る。
「レイター帰ってますか?」
侍従頭のバブさんが出てきた。
「ロッキー。ニュースで見たよ。わたしゃあんたのこと見直したよ」
「えっと、いえ、あの…」
答えに困る。
「あのバカなら部屋にいるよ。一緒に帰ってくるようなことを言ってたのに、ほんと、あんたの爪の垢でも煎じて飲ませてやりたいよ」
「いや、そんなことないです。レイターのがすごいです」
バブさんがさえぎるように言った。
「いいんだよ、あのバカをかばわなくても」
俺は反論するのがめんどくさくなった。
レイターの部屋に入ろうとしたら、隣の部屋からフローラが出てきて手招きした。
美人でかわいいフローラは将軍家のお嬢様だ。そして、今はレイターの彼女。身体が弱くて学校へは行っていない。というか、天才だから学校へ行く必要がない。
フローラが一人でいるのは珍しい。いつも看病と称してレイターがべったりくっついている。俺は呼ばれるままにフローラの部屋へ入った。
いつ見ても女の子の部屋とは思えないほどシンプルだ。部屋の隅に医療機器が置かれていて病室のようだ。
「レイターね、今、隣で寝てるの」
「寝てる?」
まだ寝るには早い時間だ。
「ええ。さっき腕に大火傷を負って帰ってきた」
「だ、 大丈夫なのか」
オレは心臓がドキドキしはじめた。火事の現場で見た時は元気そうだったけど、よく考えたら、あの火の中で無傷ってのは考えられない。
「うふ、わたしが手当てしたの。だから大丈夫よ。バブさんにも気づかれていないわ」
フローラが何だか嬉しそうだ。
「わたし、医学書も全部読んだし、医師免許試験も全問正解しているのよ。一度、その知識を使ってみたかったの」
フローラがアーサーと同じ高知能民族の末裔だってことは知ってるが、お医者さんごっこと間違えていないか?
「あなたがニュースに出ているのを見て、火傷の理由がすぐわかったわ。勇気ある感心な学生さん」
フローラが笑った。俺は笑えなかった。
「女の子を助けたのは、ほんとはオレじゃないんだよ」
「でも、レイターはロッキーに助けられたって喜んでたわ」
「オレに助けられた?」
オレは誰も助けてないぞ。女の子だってあいつが救ったんだし。
「レイターはニュースで顔が表に出ると殺されるんですって」
殺される? 最終回へ続く
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