銀河フェニックス物語 <ハイスクール編> 第一話(4) 転校生は将軍家?!
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「このチビ!」
キーレンの手下が木刀でレイターに襲いかかった。
レイターが、すっとかわしながら蹴りを入れる。
「チビっつうな」
手下は地面に倒れたまま動かなくなった。
オレは少しずつ後ろへ下がった。
悪いが、オレには一緒に戦うだけの能力はない。逃げないのが精一杯の抵抗だ。
ほかの連中も武器を使って、次々と攻撃を仕掛ける。
チビだし素手だし、どう見ても、よってたかってレイターをいじめているようにしか見えないんだけれど、あいつの動き、普通じゃない。カンフー映画みたいだ。
相手の動きを見切ってる、っていうのか、一人、また一人と倒れていく。
キーレンがあせってる。
ナイフを取り出して、レイターの背後から狙うのが見えた。
オレは叫んだ。
「レイター、後ろ!」
レイターは振り向きざまに、キーレンの手首をつかんで捻った。
あいつ、身体が柔らかい。自分の頭より上に足が上がる。
そのまま、キーレンの顔面に蹴りを入れる。
一瞬の出来事。
キーレンが鼻血を出して倒れた。
そのままキーレンの腕をねじあげて背中の上で踏みつけると、レイターはキーレンの首筋に取り上げたナイフをあてた。
レーザーナイフだ。
キーレンのうなじあたりの毛が、じりじりと焦げて煙があがる。
「苦しんで死ぬのと、苦しまないで死ぬのとどっちがいい?」
抑揚のないレイターの言葉に、その場にいた全員が凍り付いた。
こいつ、何の迷いもなく平気で人を殺せるんじゃないか。
そう思わせる空気がそこにあった。
「や、やめろレイター」
オレはかろうじて声を出した。
「あん? ロッキー。俺はただ質問してるだけだぜ」
口調はやわらかかったが、緊張感は溶けない。
レイターはレーザーナイフを手のひらの上でくるくると回した。
一体、どうやってキーレンの身体を押さえつけているのだろう。体重はキーレンの半分ぐらいにしか見えないのに。
「じゃあ、次の質問。キーレン、あんた『番』を俺に譲る気あるか?」
「ゆ、譲る」
キーレンが絞り出すようにして答えた。
あのキーレンが、ライオンに捕まった小動物のようだった。どうあがいても勝てない。格の違いが周りにいる全員にも伝わる。
「譲るって言われても、いらねぇんだけどさ」
おいおい、言ってる意味がわかんないぞ。
レイターは押さえつけたままキーレンのポケットをまさぐると、レーザーナイフの鞘を抜き取った。
「ま、譲られてやるよ。その代わり、意味のねぇ喧嘩はするな。このナイフは証文の代わりにもらっとく」
「わ、わかった」
「わかりゃいいんだ」
レイターは立ち上がった。
「あと、手下を殴るな」
転がっているキーレンのわき腹を軽く蹴ると、レイターはオレたちを呼びにきた奴をチラリと見た。
キーレンに殴られたら俺に言え、って目で言っていた。
レイターは『番はいらねぇ』って言いながら、完全にキーレンの裏番におさまった。
「さってと、行こうぜロッキー」
「あ、ああ」
オレたちは裏山を後にした。 (5)へ続く
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