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銀河フェニックス物語 <恋愛編> 第三話 大切なことの順番(4)
レイターのことを話していたロッキーが、まずいことをしゃべったという顔をした。
・銀河フェニックス物語 総目次
・<恋愛編>第二話「麻薬王の摘発」まとめ読み版
「そうしたらレイターは何て言ったんですか?」
「え、えっと、忘れちゃったなぁ」
ロッキーさんは嘘をつくのが下手だ。
多分、核心に触れる何かをレイターは言ったんだ。
そして、それはわたしに聞かれたくない何かなんだ。
すごぉく知りたい。ロッキーさんを追及した。
「ちゃんと教えてくださいっ!」
* *
ロッキーは後悔していた。
オレってどうしてこう、一言多いんだろう。昔からレイターに指摘されているが、口にした後にそのことに気づく。
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『たかが船』ってくだりで止めておけばよかった。
ティリーさんは、聞かずには帰らないって顔でオレをにらんでる。困った。でも、ま、いいか。昔の話だし。誤解さえされなきゃ悪い話じゃない。
「言っておくけどこれは、レイターがティリーさんと出会う前に聞いた、古い話なんだ」
と前置きして話した。
「あいつはオレに言ったんだ。『俺の人生で一番幸せだった時、隣に船は無かった』って」
* *
わたしは、頭をガツンと殴られたような衝撃を受けた。
レイターの隣に船が無い頃って、ちょうどロッキーさんと一緒にハイスクールに通っていた時のことだ。
レイターは仮免しかなくて宇宙船を操縦できないでいた。
九歳の時から船に乗っていた彼が、人生の中で唯一船に乗れないでいた時間。
それが、船なしでは生きられないと豪語する彼が、一番幸せな時だったと。
レイターの言葉の続きが聞こえるようだ『隣に船はなかった。だけど隣にフローラがいた。それが自分の人生で一番幸せな時だった』と。
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フローラさん……今はもうこの世にいないレイターの前の彼女。
「あいつはちゃんとわかってるんだよ、船が無くても生きていけるってことを」
ロッキーさんがわたしに伝えたいことはわかった。
レイターの優先順位には、宇宙船より上に人があると。
でも、素直に受け入れられない。
現にわたしとの約束は、パーツの取り付けより後回しにされたのだ。
人物によるのだ。
フローラさんとの約束だったら、レイターはそれを優先したに違いない。
「だから今はティリーさんと一緒にいる時が、レイターにとって一番幸せなんだよ」
力説するロッキーさんの言葉は、もう耳に入ってこなかった。
「わたしといるより、船のパーツといる方があの人は幸せなんです!」
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苦しい。息をするのが。
情けなくて涙が次から次へと溢れてくる。どうやって止めていいのかわからない。
「オレって、どうしてこう一言多いんだろ」
ロッキーさんが、力無くつぶやく声が遠くに聞こえた。 最終回へ続く
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