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銀河フェニックス物語 <ハイスクール編> 第一話(6) 転校生は将軍家?!
・銀河フェニックス物語【出会い編】スタート版
・ハイスクール編:第一話 (1)(2)(3)(4)(5)
・ハイスクール編 マガジン
スタートランプが消えると同時に、オレは船をスタートさせた。
隣のレイターの奴、最初からめちゃくちゃ飛ばしてやがる。あっと言う間に置いて行かれた。
このコース、初めてじゃないのか?
あんなペースで飛ばしたら事故るぞ、って他人のことを気にしてる余裕はオレにはない。オレの腕前はそこそこだ。
早いところチェックポイントを通過しないと、ゲームが終わる。
よし、最初のレース街道を抜けた。
次は小惑星帯だ。げっ、前のバージョンより惑星間が短い。よけらんない。
気がついたら小惑星に激突していた。
あーあ、ゲームオーバーだ。
ま、初めてにしてはよくやった方じゃないの。
レイターはどうしてるだろう。
一号機をモニターに映す。
マジかよ? あいつ、もうとっくに小惑星帯の先の流星群も抜けてる。
その横に、もう一機飛んでいた。そんなバカな。
ゼロ号機だ?!
ソフトに内蔵されてるゼロ号機と競り合ってる。
この目で初めてみた。
トップスピードで飛んでいるとゼロ号機が出てくる、ってことは知ってるし、情報ネットで見たことがあるけど、街のゲーセンで出たなんて話、聞いたことがないぞ。
ゼロ号機が出てきて完走したら、コインが何枚出てくるんだっけ?
しかも、もう最終コースへ入ってる。
す、すげぇ。
ゼロ号機が振り切られそうだ。レイターの奴、めちゃくちゃ上手い。
ゼロ号機に勝つと、すごいことが起こるって伝説がある。
何が起こるかは情報ネットにもあがってない。
もしかしてその瞬間が見られるかも知れない。オレはモニターを凝視した。
こいつ『銀河一の操縦士』とか言ってたけど、とりあえず『銀河一のゲーマー』かよ。
うわっ、横から事故船が突っ込んできた。レイターは、きれいにかわしたけどゼロ号機に抜かれた。
そして、ゼロ号機がゴール、レイターは二着。
伝説の瞬間は見られなかったけど、完走だ。す、すげえ。
操縦席からレイターが降りてきた。
コインがじゃらじゃらと十枚出てきた。
レイターは二枚だけ抜き取った。
「ロッキー、あとはやるよ」
「え? いいのか」
「これで投資回収できただろ」
あ、ああ。そんなことより俺は興奮していた。
「お前。ゼロ号機見たか」
「見た、っつうかバトルしてただろがっ。あんたに元本保証するっつったから、ゼロ号機抜くの止めたんだ」
「へ?」
「最後、事故船が突っ込んできて、ゼロ号機に抜かれただろ」
「ああ」
「あの後、追い越しかけようか悩んだんだ」
「どうして?」
「追い越すと、さらなるアクシデントが襲ってくるから、完走できねぇリスクが高まる。自分の金ならいいが、あんたの金だからな、安全策をとったんだ」
「お前、ゼロ号機、抜いたことあるのか?」
「あるぜ」
「どうなるんだ?」
レイターはニヤリと笑った。
「ヒ・ミ・ツ」
「そんなことを言うと、もう金貸さないぞ」
その一言で、レイターは手のひらを返したようになった。
「悪い、許してくれ。この二枚でゼロ号機抜くから、明日からもよろしく頼む」
そう言ってあいつは、もう一度一号機に乗り込んだ。
すごいな、こいつの操縦は。
ゲーム実況あげたら、とんでもないことになるぞ。
そして、言葉通り、レイターはゼロ号機を押さえて一着でゴールした。
伝説の瞬間だ。
(7)へ続く
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