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銀河フェニックス物語 <恋愛編>ジョーカーは切られた(26)

パリス警部は『裏将軍勅令』が出たと本庁から報告を受けた。
銀河フェニックス物語 総目次 
<恋愛編>「ジョーカーは切られた」まとめ読み版①  

「勅令を受けて、我が方の対策はどうなっている?」

 勅令や直制裁という言葉は、聞いたことがないけれど、想像はつく。
「交通部が緊急配備につきました。各地で小競り合いが発生する恐れがあります」
「ふむ」
「ただ、フェニックス号の警護はかなり楽になるとみられます」
「『裏将軍勅令』と『緋の回状』の対決か。小規模マフィアならギャラクシー連合会が押さえ込むだろうな。わかった」
 パリス警部がため息をつきながら通信を切った。

「やっぱりあいつは『裏将軍』に復活したのか」
 わたしは即座に反論した。
「違います」

忍者ティリーワンピやや口

「あなたは知らないかもしれないが、レイターは昔『裏将軍』と呼ばれる暴走族の総長だったんだ。それが最近、御台所とともに復活した」
「だから違いますってば」

 この話は本人たちから話を聞いている。
「レイターに言わせると普通の社会人だから、飛ばし屋をやっている暇はないんです」
「普通の社会人?」
「『裏将軍』は実在しないけれど、名義をアレグロさんとヘレンさんに貸しているんです」

「連合会総長のアレグロ・ハサムと御台所のヘレン・ベルベロッタか」

アレグロとヘレン逆

 二人の名前をだして良かっただろうか。パリスさんは警察官だった。
「では聞こう、大規模暴走族のジャイアントが裏将軍の直制裁によって傘下に下ったというのはどう説明するのかね。マーシーの報告によれば、レイターがジャイアントの頭と決闘したそうだ」
「決闘?!」

 またあの人はそんなことをやって。大丈夫なのだろうか。安静にしていないと失明の恐れだってある。
 わたしがレイターの側にいたら無理させないのに。いや、無理させなかったら殺されてしまうかもしれない。
 無力さに押しつぶされそうだ。 

「かつて、ギャラクシー・フェニックスが行った裏将軍の直制裁は、死ぬより怖いと暴走族はもとよりマフィアからも恐れられるほど危険だった」

パリス横顔

 死ぬより怖い危険な制裁……わたしの知らないレイターが顔を出す。
「船をただ壊すだけじゃない。生命維持装置が動かなくなった船に相手を取り残すんだ。警察や救急隊がたどり着くのが一歩遅かったら、大量の死者がでる大惨事になるような状況だった」
 レイターとわたしの間に線が引かれていく。

「亡くなった人はいるんですか?」
 平静を装ったわたしの声が震えていた。警部は少し考えてから答えた。
「私の知る限りでは……いない」
 肩からふっと力が抜けた。

「あいつの制裁の情報はどこからか流れてきて、われわれはそれに振り回されていた、結果として死者はでなかったが、制裁を受けた奴らは相当な死の恐怖を味わったから、裏将軍の制裁は、死ぬより怖いという噂が瞬く間に広がった」

18歳横顔@逆

 警部は考え込んでからつぶやいた。
「……ひどい奴だと思っていたが、あいつはあれで綿密に計算していたのかも知れん」

* *

「すごかったんスよ。裏将軍の制裁は、死ぬより怖いんッス」
 ジムからギャラクシー・フェニックス当時の話を教えてもらう。
「裏将軍勅令で公道の暴走行為禁止が出た時は、警察サツの取り締まりより、よっぽどみんな守ったッスよ。警察サツも散々利用してたくせに、飛ばし屋の統一、ってなったら突然つぶしにかかってきたんス。ひでぇもんッスよ」
 僕は反論できなかった。社会の秩序を守るためにうちの組織がやりそうなことだ。

マーシー後ろ目一文字

 フェニックス号には、ギャラクシー連合会の総長アレグロから、逐一報告が上がってきた。
 それを聞く限り、連合会はレイターが雑魚と称する暴走族やマフィアをがっちり抑え込んでいた。
 資料を検索する。アレグロ・ハサムは大富豪ハサム一族の正妻第二子で大学生。かつて裏将軍の側近を務めていた。備考欄には「バカ息子との評判」と記載されていたが、大したものだ。

 デリポリスまでの道のりも残り三分の一まできた。このままたどり着きたいと思ったが、簡単には行かないようだ。

 PPPPPP……
「レイター。レーダーの反応が異常ッス!」
 ジムが叫んだ。
「うわっ」
 思わず僕も声に出して驚いた。三次元レーダーが機体を示す紫色に埋め尽くされている。
「三百機ほどいるッスよ。どうします?」     (27)へ続く

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48ノ月(ヨハノツキ)
ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」 レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」 ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」 レイター「なんか、すげぇな……」

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