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銀河フェニックス物語<少年編>第十一話 情報の海を泳いで渡れ(2)
レイターと仲がいいのか問われたアーサーは、答えることができなかった。
銀河フェニックス物語 総目次
<少年編>第十一話「情報の海を泳いで渡れ」
<少年編>マガジン
僕とレイターは年は同じ十二歳だが、噛み合う共通の話題はほとんどない。それでもレイターは話しかけてくる。
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「なあなあ、バルダンってさあ、めちゃくちゃカレーが嫌いって知ってるか? あいつやっつけるならカレー食べた後がいいぜ」
「銀河の歌姫の新曲がまたエロいぞ、特に歌詞がヤベエんだよ。あんた、興味ねぇの? あ、音楽は嫌いなんだっけ」
「ザブが玉ねぎ切らしちまったんだ。注文ミスってやんの。あすのランチメニュー変更になるぜ。知りたかったら金くれよ」
他愛無い内容。これが普通の十二歳の会話、雑談というものなのだろうか。僕には聞き流すしか術がない。
「あんた、つまんねぇなあ」
そんな中、彼から聞き出した裏社会の情報には興味がそそられた。特に『裏社会の帝王』ダグ・グレゴリーから『緋の回状』が回され、十億リルの懸賞金を懸けられた彼が、どうやって、マフィアから逃れることができたのか。
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彼が住んでいた地球の地図を見ながらレイターがとった行動を聞き取って再現するとひじょうに面白いことが見えてきた。
レイターは随分と策士だった。緻密に作戦を練り、襲いかかるマフィアを罠にかけた。なぜ、彼にそんなことができたかと言えば、彼にはマフィアの動向に関して大量の情報が与えられていたからだ。情報戦で圧倒的に優位な立場にあったのだ。
「俺はここで『シャーク』にブラフをかけたんだ。それに『クロコダイル』が反応した」
「もう半日待った方がさらに効果はあがったな」
まだまだ作戦に甘い点もあった。僕がそれを指摘するとレイターは悔しがった。
だが、十二歳とは思えない読みの深さだ。と、十二歳の僕が言うのも変だが、作戦司令部の若手参謀並みの先読みができている。
「よくこの手を思いついたな」
「夕飯の後、ダグとよく遊んだんだ。マフィアの陣取りゲームってボードゲームでさ。そこでダグが『シャーク』に使ったんだ」
レイターの話には時々陣取りゲームが出てくる。マフィアの構成員の数、武器、幹部の名前と性格、随分細かい設定だ。どうやらこのゲームは裏社会の実戦で使える極秘の生データが満載のようだ。ゲームを通してダグは情報の使い方を随分丁寧に伝えている。そして、レイターはその期待に十分応えていた。
マフィアと一戦を交えるための武器として銃や爆弾などをレイターはグレゴリー一家から調達していた。ファミリーから出ると決めてから、少しずつ外へ持ち出して隠していたという。
何かが変だ。ダグはわかって見逃していたとしか思えない。
机上の陣取りゲームを実際に追体験させようとしたのではないだろうか。
「ダグ・グレゴリーは今、君のことをどう思っているだろうか?」
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「十億リル払わねぇで抹殺できたし、俺が随分マフィアを潰したから喜んでんじゃねぇの」
レイターへの『緋の回状』でマフィアの勢力図は大きく変わった。命を狙ってきたマフィアにレイターが壊滅的な打撃を与えたため、ダグは労せずして地盤を固めた。
レイターは慎重で用心深かった。おちゃらけた見た目からは想像できないほど綿密だ。
「だってさぁ、パン盗みに行くのも命がけなんだぜ」
「マフィアの目をかいくぐって行くということか」
「そうさ。いっぱい考えるのさ。信号が赤だったらどうする。青だったらこうする。撃ってきたら、どこへ逃げる。全部決めてから出る」
リスクの洗い出し。
「もし、パン屋が臨時休業だったらどうするんだ?」 (3)へ続く
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<出会い編>第一話「永世中立星の叛乱」→物語のスタート版
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