銀河フェニックス物語 <ハイスクール編> 第一話(7) 転校生は将軍家?!
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モニターの立体画像が三次元化した。WINNERの文字がカラフルに点滅し、激しい音楽と共にコインが出てきた。
三十枚ある。
でも、それで終わりだった。
「伝説ってこれだけかよ」
オレは肩透かしをくった気分だった。
「そうさ。ゲームメーカーはあおってやがるが、あんまり大したことじゃねぇ。このコインの有効期限が延びるとかなら、もうちょっとマシだがな」
コインには有効期限がついている。十二時間しか使えない。
きょう使い切らなきゃ意味がない。
レイターは二枚抜いた。
「あとはやるよ」
なんだかんだ言って、オレにとってはうれしいコインだ。
だが、レイターにとってはほとんど意味がない訳だ。完走すれば、二枚出てくるのだから、いつまでもゲームが続けられる。
「おまえ、目をつぶってても完走しそうだな」
「今度は完走できるか、わかんねぇよ」
そう言いながら、あいつはまた一号機に乗り込んだ。
どういう意味だろう。
スタートさせた船を見て、その理由がわかった。
最初からエンジン全開だ。めちゃくちゃ飛ばしている。
さっきもびっくりしたけど、その比じゃない。多分、あいつの狙いはラップの更新。
相手はゼロ号機じゃない。自分との戦い。
それにしても、すごい集中力だ。
と、小惑星帯で翼がこすった。
レイターの船がきりもみ状態になる。
あ~あ、あいつでも、あの速度で突っ込んだら事故るんだ。
レイターは体勢を素早く立て直して、コースへ戻った。
オレが驚いたのはあいつの真剣度だ。遅れを取り戻そうと、さらなる加速をかけている。
これゲームだぜ、失敗したらクリアして最初からやり直せばいいのに。
コインはたっぷりある。あのミスじゃラップは更新できない。
なのにあいつ、勝負をあきらめてない。必死になってる。凄い形相だ。
ヒリヒリする緊張感が俺にも伝わる。
これは、遊びじゃない。
訓練、って言葉が頭に浮かんだ。
*
ゲーセンで使う最初の二百リルは、毎回オレが貸した。というか、あいつは倍以上にして返してくるから、まさに投資だ。
「お前、金持って無いの?」
オレは聞いてみた。
将軍家からの小遣いは無いらしい。
「必要なものは買ってくれるんだけどさ」
ゲーセンで遊ぶ金は必要経費とは言えないだろうな。
かと言って、全くの文無しというわけでも無さそうだ。四年間、艦に乗って貯めたバイト代があると言っていた。
「金貯めてんだ。だから無駄には使えねぇ」
「へぇ、貯めて何に使うんだ?」
「宇宙船買うのさ」
「は?」
宇宙船って一隻いくらだよ。小遣い貯めて買えるもんじゃないだろが。
*
オレはサッカー少年だ。
足が速くてガキの頃には、地区大会で選手賞をもらったこともあるのだ。
実は今も、学校の弱小サッカー部のキャプテンを務めてる。
上手い奴は、みんな地域のクラブチームに入っちまうから、うちの学校のサッカー部は、下手だけど好き、って奴が集まった同好会だ。
週に二回集まって練習する。その日はゲーセンに行かない。きょうはその練習日だ。
「お前もサッカーやってみる?」
オレはレイターに声をかけた。 (8)へ続く
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