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銀河フェニックス物語<恋愛編> 第六話(2) 父の出張

レイターが捕まえた不審な男性はティリーの父親だった。
銀河フェニックス物語 総目次
<恋愛編>第五話「父の出張」①1
<恋愛編>のマガジン

「こんな奴じゃなくて、銀河一の操縦士だっつうの」
 レイターが口を尖らせた。

「ん? 銀河一の操縦士だと! 思い出した」
「あん?」
「おまえ、スチュワートのところのレーサーだな」
「もう辞めたけどな」

「ティリー、おまえの宿敵じゃないか」
「しゅくてき?」
「無敗の貴公子と対決した、憎っくき対戦相手だろ。ティリーがS1でクロノス社を優勝させようと頑張っていたのに、こいつが邪魔をしおって

外向き真面目

「しょうがねぇだろが、レースなんだから」
「私はテレビの前でお前さえいなければ、とハラハラしておったんだ!」
「知るか!」
「もっともエース社長の前に破れ去ったがな」
 パパはレイターを見て勝ち誇ったように笑った。

「うるせえ親父さんだな、ったく」 

「レイター、もうこんな時間よ。パパ、悪いけどわたしたちきょう友人と食事の約束があるの。後で連絡するわ」
 パパが肩を落とした。
「そうか、おまえの予定も聞かずに突然来て悪かったな」
 レイターが仕方ないという表情でわたしに声をかけた。
「親父さんが一緒でも構わねぇぜ、どうせ相手はロッキーだ」
「いいの?」
「ああ」

 レイターが気を使ってくれるのがありがたい。
 せっかく立ち寄ってくれたパパを追い返すのは、わたしも忍びなかった。

* *

 お酒が飲めるカジュアルなレストランバルが待ち合わせの場所だ。予定より早く着いたロッキーは店内を見回した。ティリーさんはいつも五分前には姿を見せるのに、珍しくきょうはいない。
 案内された席について待っていると、不機嫌そうな顔をしたレイターが店に入ってきた。ティリーさんとレイターの間に見知らぬ年配の男性がいる。

「あれ? こちらは?」

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 立ち上がって俺がたずねると、ティリーさんが頭をさげた。
「わたしの父です。すいません、食事、一緒でもいいですか?」
「もちろんですよ」
 ネクタイをかっちり締めたスーツ姿の親父さんは、ティリーさんと同じ緑の髪と赤い瞳をしていた。いやあ、レイターとの仲がそこまで進展していたとはびっくりだ。

「初めまして、ロッキー・スコットです。アンタレスから出ていらしたんですか?」
「ええ」
 あいさつしながら握手をする。俺は普通の社会人だ、ちゃんとマナーはわかってる。
「長旅、お疲れでしたでしょう」
「出張のついでに時間があいたもので、突然おじゃまして申し訳ありませんな」
 真面目な雰囲気はいかにもティリーさんの親父さんだ。
「とんでもありません。ご一緒できてうれしいです」

 レイターの奴、柄にもなく緊張しているのか表情が固い。耳元で声をかけた。
「良かったな。親父さんと食事だなんて」
「ちっともよくねぇ」
「どうして?」
「話してみりゃ、すぐわかる」

 俺の向かいにレイターとティリーさんが並んで座り、俺の隣に親父さんが腰掛けた。食前酒とつまみのカナッペが運ばれてくる。

 レイターの言うことはすぐにわかった。
 親父さんは目の前のティリーさんに「仕事はどうだ?」とか話しかけているが、レイターと目を合わそうともしなかった。
 こいつ、何やったんだ?

 しょうがない、こういう時にできるだけレイターのことを誉めといてやるのが、友人ってもんだ。
「僕はレイターとはハイスクールの頃からの付き合いで、同級生だったんですよ」
「そうでしたか」
 親父さんは興味を持ったようだ。

「とにかく、こいつは学校でも人望があって、みんなから一目置かれていたんです」
「ほう」
「何せ、裏番張って……」

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 テーブルの下でレイターが俺の足を蹴った。
「裏番?」
 ティリーさんの親父さんが聞き返す。
「あ、いやいや。不良グループも手が出せないってことです。こいつ、あの頃はチビでしたけど喧嘩が強くて」
 レイターが怖い顔で俺をにらみつけている。まずいな、この話は止めたほうがよさそうだ。

「何というか、レイターは統率力に秀でてましてね。ハイスクール中退してからも」
「中退?」
「えっと、バイトが忙しくなって、学校を途中で辞めたんです」
 レイターは伝説の宇宙船設計士の『老師』に弟子入りして退学した。間違ったことは言っていないのに、ティリーさんが心配そうに俺を見ている。

「とにかく、レイターはすごかったんですよ。その頃から『銀河一の操縦士』でしてね。免許はなくても、銀河中の飛ばし屋に負けたことがなくて」
 ほめているのに、またレイターに足を蹴られた。
「無免許の暴走族かね」
 親父さんがレイターを見る視線は冷たかった。    (3)へ続く

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<出会い編>第一話「永世中立星の叛乱」→物語のスタート版
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48ノ月(ヨハノツキ)
ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」 レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」 ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」 レイター「なんか、すげぇな……」

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