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銀河フェニックス物語<出会い編> 第四十二話(3) 同級生が言うことには

「悪口言ってんじゃねぇよ」ロッキーの後ろにレイターが立っていた
第一話のスタート版 
第四十二話(1)(2

* *

 レイターが月の御屋敷に帰ってきた。

 レイターと目が合ったティリーは不安になった。彼はわたしに見舞いに来てほしくない、と言っていたのだ。

「おやおや、珍しいお客さまだな。俺の部屋で話そうぜ」

n39横目 @3白襟やや口

 と笑うレイターの様子は元気そうで普段と変わらなかった。わたしは、同級生だというロッキーさんと一緒に部屋へ入った。
 本当は、レイターと二人きりで話がしたかった。

 

 拉致されたゲリラ船から逃げ出して、アーサーさんのキャメロット号に着艦した時、レイターが耳元でつぶやいた。

 『ティリーさん、愛してる』 とわたしには聞こえた。

バックハグバックなし大けが大

 確認したくて、わざわざ月の御屋敷まで来たのに。
 他人の前でこんな話は聞けない。

 連邦軍の特命諜報部のことも聞きたかったけれど、家族にも言えない秘密なのだ。これも話すわけにはいかない。
 当たり障りのない話しかできない。どこかでレイターと二人きりになるチャンスを作らなくては。

 この御屋敷のレイターの部屋も、フェニックス号と同じように散らかっている。

 どこからかレイターがクッションを取り出した。
 三人で床に座り、わたしが手土産で持ってきたプリンを食べる。

プリンを食べる後ろ目シャツ

「サンキュ、ティリーさん。うめぇや」
 レイターが幸せそうな顔をしている。ちょっとうれしい。

「もう、体調はいいの?」
「ああ、指はまだつながってねぇんだけどな」
 よく見ると指に透明なテーピングテープが巻かれていた。

「また食べさせてくれてもいいぜ」
 レイターがにやりと笑った。アーサーさんのふねでレイターの食事を手伝ったことを思い出し顔が赤くなる。

食べさせる2

 ロッキーさんの前で恥ずかしいこと、言わないでほしい。

「普通に両手、使えてるじゃないの」
「ばれたか」

 自白剤が残っている感じはまるでない。

「レイター、お前って、ほんとプリン好きだよな」
「だって、うめぇじゃん。栄養抜群だしな」
「違うだろ、風邪ひいて寝てる時にお袋が作ってくれたからだろ。こいつ、オレと違ってマザコン…」

 バシッツ。
 レイターがロッキーさんの頭をはたいた。

はたくゆるシャツ

「あんたは、一言多いんだよ。ロッキーんちのお袋はすごいんだぜ。将軍家に殴り込みに来たんだ」
「なぐりこみ?」

 ロッキーさんが照れて笑った。
「オレ、レイターと一緒に家出したことがあるんです。うちの親は俺が将軍家のバカ息子と遊ぶのを嫌がって、ていうか、レイターは、ほとんどの保護者に嫌われてて」
 というロッキーさんの頭を、またレイターがはたいた。
「一言多い癖を直せ、っつってんだ」

 ロッキーさんは面白かった。
 二人が話している様子はまるで掛け合い漫才だ。

この汚い部屋で、よくこいつと遊んだんですよ。ゲームやったりトランプでババ抜きしたり」

トランプ

「ババ抜き、ですか?」

 レイターが口を尖らせた。
「アーサーの野郎に勝つためにゃ、偶然性の高い競技を選ぶ必要があんだよ。なのに、このバカが神経衰弱やろうとか言い出した時には、殴ろうかと思ったぜ」

 アーサーさんがこの部屋で遊んでいた、というのは不思議な感じがした。きっとフローラさんも一緒だったのだろう。

「いや、あの時お前、俺を殴ったぞ、頭を叩いたよな」

大人正面ゆるシャツ怒り

「いちいち覚えてねぇよ」

「レイターの奴、ババ抜き始めたら、アーサーにイカサマが見抜かれて、ふてくされちゃって」
「あんた、ここで今、その話するか!」
 と言いながら、レイターがロッキーさんの頭をまたはたこうとした。

「やめなさいよ」
 慌ててわたしが止める。
「ティリーさん、ありがとうございます。レイターは裏番だったんで、すぐ手が出るんですよ」

「裏番?」
 似合ってる。

「あんたは、いつも一言多いんだ」
 と言いながらもレイターが楽しそうだ。
 アーサーさんやフェルナンドさんに見せる表情とは全く違う。ロッキーさんは「普通の友達ダチ」なのだ。


* *

 ロッキーは懐かしく思った。

 レイターの散らかった部屋は、七年前とちっとも変わっていない。
 ハイスクールの教科書とかもそのまんまなんだよな。よくこうやって床に座ってバカ話を繰り返した。

 レイターがオレの頭をはたこうとすると「やめなさいよ」ってフローラが笑って止めてくれた。

 うわあ、ティリーさんとレイターと三人で話をすると、ますますあの頃を思い出す。

振り向き逆

「ロッキー、どうしたんでい?」
「な、何でもない」

 レイターは鋭いからめんどくさい。     (4)へ続く

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48ノ月(ヨハノツキ)
ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」 レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」 ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」 レイター「なんか、すげぇな……」

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