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銀河フェニックス物語<恋愛編> 第四話(10) お出かけは教習船で
ティリーの操縦でアレグロの船をレッカーし小惑星帯を抜けていくことになった。
銀河フェニックス物語 総目次
<恋愛編>お出かけは教習船で (1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)(8)(9)
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レイターが操縦して降りてきた時はあっという間だった。
上下の縦軸方向に抜けるのに、そんなに時間はかかるはずがない、と思いたい。
アクセルを軽く踏む。
ブウォンッ。
メガマンモスがうなり、衝撃で前のめりにつんのめる。あわてて足を離す。
小惑星が目の前だ。よけるために、操縦桿を回す。
ガ、ガタッ、ガタン。
わたしの操縦を補正するのに、レイターがどれだけ苦労していたのか身にしみる。
小惑星一つ乗り越えるのも大変だ。
ようやくかわした。
ほっとしたら、小惑星が眼前に迫っていた。
「きゃあ」
「ティリーさん、操縦桿をゆっくり右回転で四十五度傾けろ」
レイターの落ち着いた声が聞こえる。
「わかったわ」
指示にあわせて動かす。でも、うまくできない。四十五度のつもりが五十度までいってしまう。
ガガガガガガ……
衝撃が船に走る。翼が小惑星にこすった。
「ご、ごめんなさい。大事な船なのに」
レイターの船、しかも大切な突風教習船に傷を付けてしまった。
「気にすんな。どうせその船に俺は乗れねぇんだ」
レイターが気を使ってくれる。けれど、気にするなと言われても無理だ。ピカピカに磨き上げられた思い出の愛機。
わたしの不安定な操縦で、ワイヤーロープでつないだアレグロさんの船が右に左に揺れる。変な加速がかかって絶叫アトラクションよりひどい、というか危険な状況だ。
レイターが苦しそうに口を押えている。低酸素症の上にこの揺れだ。吐き気がひどいに違いない。
「だ、大丈夫?」
どう対処すればいいのかわからない。
「ティリーさん、いいか、こっちの船のことは気にするな。まず自分の船に集中するんだ」
「う、うん」
ふと計器を見て悲しくなった。さっきの場所からほとんど動いていない。埒が明かないとはこのことだ。
その時、いいことを思いついた。どうして今まで気が付かなかったのか。
「ねえ、レスキューサービスを呼べばいいんじゃないの?」
いつでもどこでも二十四時間サービスで、助けに来てくれるはずだ。
レイターとアレグロさんが顔を見合わせた。
「俺たち、レスキューサービスに入ってねぇんだ」
「え?」
信じられない。任意のサービスだけれど、お客様にはいつも勧めている。宇宙空間は死に直結するから加入率は九十八パーセントだ。
「金がもったいねぇんだよ。自分で修理できるし」
「……」
泣きたくなってきた。わたしが自分の船を持っていれば絶対会員になっていたのに。
とにかく少しずつでも進むしかない。
一つ抜けた。
と、一息ついたところで次の小惑星が目の前にあった。
驚いた瞬間、操縦棹を横に倒してしまった。
きゃ、きゃあ。
右方向に初速がかかる。
ワイヤーロープが変なしなりをみせた。先端につないだ船が滑るように流れていく。
危ない! アレグロさんの船が小惑星に激突する!
このままじゃ船が大破する。レイターたちが怪我をする。いや、怪我じゃ済まないかもしれない。
ど、どうすればいいの?
レイターがやったようにレーザー砲で小惑星を撃つ?
そんなこと無理だ。
ぶつかるっ! (11)へ続く
<出会い編>第一話「永世中立星の叛乱」→物語のスタート版
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