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銀河フェニックス物語 <恋愛編>ジョーカーは切られた(27)

三百機もの大量の船がフェニックス号を追いかけてきた。
銀河フェニックス物語 総目次 
<恋愛編>「ジョーカーは切られた」まとめ読み版①  

 ヘッドホンをはずしてレイターは笑った。
「そいつは裏将軍勅令でも抑えらんねぇな。三百機じゃ、音声データも無理だ」 

 その集団からフェニックス号に通信が入った。
 モニター越しにあごひげが豊かな男が鋭い目でレイターをにらみつける。
「レイター、久しぶりだな。S1を見て驚いたぜ。まさか生きていたとはな」
「その声はガーラか」
 レイターが面倒くさそうに反応した。

 ジムが僕に耳打ちした。
「ガーラファミリーって、十二年前、レイターを追っかけて、空港の爆発事故で構成員二十人が死んだんッス。レイターに恨みを持ってるんスよ」

「手下の無念を晴らさでおくべきか。今度こそお前を殺して、百億リルは我々ガーラファミリーがいただく」

「悪いな。俺、最近、死ぬ気がなくなったんだ」
 レイターは船を一気に加速させた。

立ち上がる腕があるゆるシャツ

 ガーラの船団が背後から追いかけてくる。

 フェニックス号めがけて砲撃してきた。

 光の輝きが細く弱い。これは、レーザー砲じゃない。ライトレーザーだ。船の機能を一時的にダウンさせる。僕たちが取り締まりによく使う。
 レーザー砲の購入には面倒な手続きが必要だが、ライトレーザーは身分証明で買うことができる。護身用としてよく売れており、若者によるいたずら照射が問題になっている。
 だが、ガーラはマフィアだ。レーザー砲を違法に複数積載しているのが目視でもわかる。

「どうしてレーザー砲で撃ってこないんだ?」
「昔のことを気にしてるんスよ」
「昔のこと?」
「十二年前、ガーラは、ダグに宇宙空港でレイターを爆殺したって申告して、懸賞金の十億をもらおうとしたんッスよ。けど、首がないって断られたんッス。『緋の回状』にはレイターの首を持ってこいって書いてあったんで」
 レイターを生け捕りにしようとライトレーザーで攻撃してくるのか。

 ライトレーザーの射程距離は短い。
 高速のフェニックス号で逃げ切れればいいのだが。

「レイター、まずいッス!」
 ジムが泣きそうな声を出した。
「どうした?」
「前から集団が迫ってきたッス。千五百機いるッスよ」

ジム 横顔驚き

「そいつらはガーラじゃねぇな。ジム、どこの船か確認しろ」
「前から来た船団はピンクタイガーっス」
桃虎ももとらか」
 レイターが船を停めた。

 ピンクタイガーと言えば、この地域最大のマフィアだ。グレゴリーファミリーの円卓衆。
 首領は桃虎と呼ばれる女性だ。
 我々は挟み撃ちにされた。絶体絶命だ。

 フェニックス号がピンクタイガーとガーラファミリーの通信を傍受した。
「ガーラ、あたしの声、聞こえる?」
 女性の顔がモニターに映る。年齢はよくわからない。気の強そうな色気のある女性。
 桃虎だ。ガーラファミリーと連携を取ろうとしているのか。

n351桃虎逆

「はっ、桃虎の姉貴。ご無沙汰しております」
 ガーラがへりくだった声で答えた。

 ガーラと桃虎の力関係は一目瞭然だ。桃虎は円卓衆で上級幹部だ。
「あんた、手を引きな」

 僕の予測ははずれた。桃虎は懸賞金を独り占めしようとしている。
 桃虎の提案にガーラの髭がピクリと揺れた。ガーラが不満で怒っているのは一目瞭然だが、桃虎には逆らえないようだ。
「そう言われましても」 
「あたしの言うことが、聞こえなかったのかい?」
「……」
「命の大切さは、手下を亡くしたあんたが一番よくわかってるよね」
 優しい言い方なのに怖い。言うことを聞かなければ殺すという意思表示。

「桃虎の姉貴、手を組ませていただけませんか」
「笑止」
 ピンクタイガーの攻撃船がいきなりガーラの母船に向けてレーザー砲を発射した。

 母船が間一髪よける。
 レーザー弾は母船の後ろにいた船に当たり大破した。最新のウルトラレーザー砲。圧倒的な破壊力と物量、まるで軍隊だ。

「今度ははずさないよ」
 桃虎がうれしそうな声で笑った。
「し、失礼いたしました。撤収だ。全船撤収」
 ガーラの一団が反転し、遠ざかっていった。

 挟み撃ちは免れたが、事態は全く好転していない。ピンクタイガーの出現でむしろ悪くなったと言える。レイターはどうするつもりだ。   (28)へ続く

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48ノ月(ヨハノツキ)
ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」 レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」 ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」 レイター「なんか、すげぇな……」

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