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銀河フェニックス物語<出会い編> 第三十九話(39) 決別の儀式 レースの途中に

銀河フェニックス物語 総目次
・<出会い編>第三十九話「決別の儀式 レースの前に」①   
第三十九話「決別の儀式 レースの途中に」①  (29) (30) (31) (32) (33) (34) (35) (36) (37) (38) (39)

* *

 小惑星帯に入ったところで、前を行くオクダのマウグルアが横G六十五度で幅寄せしてきた。

 レイターはハールの速度を落とした。
 オクダの奴、いい腕だ。小惑星を利用してハールの弱点を的確に攻めてきやがる。

 いったん後ろへ下がる。

逆振り向き前目逆

 これはケバカーンだな。真っ赤なイメージ。
 横G六十五度の弱点に気づいたか。さすが、魔法使いだ。
 とにかくこの厄介な小惑星帯を耐えるしかねぇ。こんなところでエンジンが止まったらレースに復帰できねぇからな。
 仕掛けず離れずついていく。

 魔法使いと俺の知能戦は、あいつにハールを頼んだ時から始まってる。

 俺は、直線番長のメガマンモスのエンジンを乗せることをケバカーンにあえて漏らした
「もらい火に気を付けるよう伝えておきますよ」と応じたあいつはオクダにこの船の特性を丁寧に伝えたはずだ。

 だから、オクダは無理に接触してこない。

 小惑星帯を抜けてコーナーを回る。

 ホームストレートの直線に入った。
 俺はマウグルアに追い越しをかける。
 オクダは再度、横G六十五度で俺の動きを封じようとする。

「レイター、下がって距離をとれ」
 アラン・ガランの声が聞こえる。

アラン・ガラン@2叫ぶ

 あんたの指示は正しい。

 だが、優勝するためにゃ、いつまでもオクダとちんたらやってる余裕はねぇんだよ。トップのエースからこれ以上引き離されるわけにはいかねぇ。

 マウグルアが横G六十五度で寄せてきたところで、俺はアラン・ガランの指示とは逆にエンジンを吹かした。さあ、メガマンモス、お前の大好きな直線だぞ。食い尽くせ。

 ブォオオオンンンンンンンンンンン。

 雄たけびを上げて急加速をする。
「止めろ! 燃えるぞ!」
 アラン・ガランの叫び声がうるせぇ。

 さすが直線番長だ。くっつ。戦闘機よりきつい加速。俺は歯を食いしばる。

殴られ@

 加速のGで、すべての血液が持っていかれそうになる。やられやしねぇよ。俺は銀河一の操縦士だ。

 ハールが赤く光りだした。
 前でオクダが慌てているのがわかる。

 魔法使いから情報がいってるんだろ。
 メガマンモスが吠えたら「もらい火に気をつけろ」ってな。

 燃えたくなかったらどきやがれっ。

* *

 
 ケバカーンの忠告を、オクダは思い出した。

「横G六十五度で攻めれば、ハールが積んでいるメガマンモスエンジンが止まります。それから、ボリデン合金のハールは燃えやすいので気を付けてください。」
「ボリデン合金?」

ケバカーンとオクダ

「メガマンモスが全開まで回ると、ハールはパラドマ発火を起こして炎上します。相当な火力になるので機体が赤く光りだしたら巻き込まれないように距離を取ってください」

 ケバカーンは研究所で、ボリデン合金のハールに、メガマンモスを乗せたシミュレーションを繰り返したという。
「この色になったら危険です」
 赤く光るハールの動画を俺に見せた。船は輝きあっという間に炎に包まれた。

「エンジンをふかせないんじゃ、折角の直線番長が生かせないじゃないか」
 メガマンモスエンジンの速さには、レーサーとして憧れがある。それが封印されていては宝の持ち腐れだ。

「パイロットが死んでもよければ生かせます。船が燃えながらでもゴールを切れば順位にカウントされますから」
 俺は背筋に寒いものが走った。動画の機体は火の玉になったまま慣性で飛び続けていた。
 何て危険な船だ。


 ブォオオオンンンンンンンンンンン。

 独特なメガマンモスのエンジン音。背後のハールが赤く光りだした。

 危ない。動画で見た色と同じだ。

 こんなところで、巻き添えを食う訳にはいかない。
 俺は、きょうエースに勝たなくちゃいけないんだ。

振り向き後ろ目笑顔

 俺に横G六十五度で散々攻められて、銀河一の操縦士は焦ったな。勝負をかけるところを見誤った。
 まだ二周ある。ここで燃えてはゴールは切れない。

 俺はハールに道を開けた。
 あとはパラドマ発火を起こして、ハールが勝手に棄権してくれるのを待つ。

 そして俺は、エースとの対決に専念する。     (40)へ続く

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48ノ月(ヨハノツキ)
ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」 レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」 ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」 レイター「なんか、すげぇな……」

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