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銀河フェニックス物語Ⅰ【少年編】

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レイターとアーサーが十二歳から十五歳まで乗っていた、戦艦アレキサンドリア号での物語。
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#連載小説

銀河フェニックス物語 総目次

イラスト付き縦スク小説『銀河フェニックス物語』の内容が一目でわかる目次を作ってみました。 <出会い編>第一話「永世中立星の叛乱」記念すべき第一話。新入社員のティリーが「厄病神」のレイターの船で初めての出張に出かけますが、革命規模の大規模デモに巻き込まれて…… <出会い編>第二話「緑の星の闇の向こうに」第一話の一週間後のお話。同期の代わりに出張へ出かけたティリーは、今度は環境テロに巻き込まれます <出会い編>第三話「レースを観るならココ!と言われて」宇宙船レースを観るのが

銀河フェニックス物語【少年編】 第一話 大きなネズミは小さなネズミ(まとめ読み版)

 戦艦アレクサンドリア号に乗って一週間。  僕は地球を出航してからずっと違和感を感じていた。  重量制限をオーバーしながら航行しているというイメージ。ただ、その原因がわからない。質量計も誤差の範囲だ。でも何かが違う。 「艦内に異常を感じるのですが」  僕は艦長のアレック・リーバ大佐に進言した。 「アーサー、いや、トライムス少尉。お前にとっては士官学校を出て初めての任務、しかも長距離航海だからな。神経質になるのも無理はないが大丈夫だ。順調に進んでいる」  と、相手にされなか

銀河フェニックス物語【少年編】 第二話 家庭教師は天才少年 (まとめ読み版)

「アーサーをお前の教育係に任命する」  と、アレック艦長が言った瞬間のレイターの顔は見物だった。 「げげげげげっ」 「アーサーの報告次第ではこの艦から追い出すからな」 「マジかよ」  彼は肩を落として返事とも言えない返事をした。 *  教育係を命ぜられたのはいいが……  僕は戸惑っていた。僕と同じ十二歳というのは一体どんな勉強をしているのだろうか。  ジュニアハイスクールの問題集を取り寄せた。大体のレベルは把握できた。テスト形式の問題をレイターに解かせてみる。  勉学

銀河フェニックス物語【少年編】第三話「流通の星の空の下」

これは、レイターとアーサーが十二歳。出会って一か月後のお話です。 ・銀河フェニックス物語 総目次 ・<少年編>第二話「家庭教師は天才少年」 ・【少年編】のマガジン ・<出会い編>第二十話「バレンタインとフェアトレード」  コンテナ牽引船の操縦席に座ったアーサーは、耳をふさいだ。 「なあ、ちょっとでいいから操縦させてくれよ、なあ、なぁ。あんたより俺のが絶対上手いぜ」  隣の助手席に座るレイターが、とにかくしつこくてうるさい。  その日、料理長のザブリートさんが、レイターを連

銀河フェニックス物語【少年編】第四話「腕前を知りたくて」(まとめ読み版)

レイターとアーサーが十二歳。出会ってまもない頃のお話です。 ・銀河フェニックス物語 総目次 ・<少年編>第三話「流通の星の空の下」  ・<少年編>マガジン ・<出会い編>第三十七話「漆黒のコントレール」  戦艦アレクサンドリア号、通称アレックの艦。  銀河連邦軍のどの艦隊にも所属しないこの船は、要請があれば前線のどこへでも出かけていく。いわゆる遊軍。お呼びがかからない時には、ゆるゆると領空内をパトロールしていた。 *  僕たちの艦は、惑星ガガーブに立ち寄ることになった。

銀河フェニックス物語【少年編】第五話 「誰にでもミスはある」(まとめ読み版)

アーサーの権限でレイターを船に乗せていいと艦長が指示をだした。 ・銀河フェニックス物語 総目次 ・<少年編>第四話「腕前を知りたくて」まとめ読み版 ・<少年編>のマガジン  戦艦アレクサンドリア号、通称アレックの艦。  銀河連邦軍のどの艦隊にも所属しないこの艦は、要請があれば前線のどこへでも出かけていく。いわゆる遊軍。お呼びがかからない時には、ゆるゆると領空内をパトロールしていた。 *  レイターが綴りの試験で一問も間違えなかったら、船の操縦を許可することにした。  や

銀河フェニックス物語【少年編】第八話ムーサの微笑み(まとめ読み版)

 戦艦アレクサンドリア号、通称アレックの艦。  銀河連邦軍のどの艦隊にも所属しないこの艦は、要請があれば前線のどこへでも出かけていく。いわゆる遊軍。お呼びがかからない時には、ゆるゆると領空内をパトロールしていた。 * 「ねえ、ヌイ。ギター弾いてくれないかなぁ」  食堂でアルバイトをしているレイターが僕に初めて話しかけてきた時のことは、よく覚えている。  レイターは十二歳と聞いている。  自分の十二歳の頃を思い出してみるが、こんなに幼かっただろうか。クリクリする目で頼んで

銀河フェニックス物語【少年編】第九話「金曜日はカレーの日」まとめ読み版

銀河フェニックス物語 総目次 <少年編>第八話「ムーサの微笑み」  <少年編>マガジン  戦艦アレクサンドリア号、通称アレックの艦。  銀河連邦軍のどの艦隊にも所属しないこの艦は、要請があれば前線のどこへでも出かけていく。いわゆる遊軍。お呼びがかからない時には、ゆるゆると領空内をパトロールしていた。 *  将軍家の坊ちゃんは、ソツがないと言う言葉がぴったりの少年だった。  アーサー・トライムス少尉。十二歳の彼が絶滅民族インタレス人の血を引き、僕たちには想像も出来ないよ

銀河フェニックス物語【少年編】第十話 二段ベッドの上で見る夢(まとめ読み版)

 戦艦アレクサンドリア号、通称アレックの艦。  銀河連邦軍のどの艦隊にも所属しないこの艦は、要請があれば前線のどこへでも出かけていく。いわゆる遊軍。お呼びがかからない時には、ゆるゆると領空内をパトロールしていた。 銀河フェニックス物語 総目次 <少年編>第九話「金曜日はカレーの日」 <少年編>マガジン  シャワーを浴びて部屋に戻ると床に宇宙服が転がっていた、と思ったら、レイターだった。 「こんなところで寝るなよ」  ヘルメットをとってやったが起きなかった。  今日の任

銀河フェニックス物語<少年編> 自由自在に宙を飛ぶ(1)

14歳のレイターとアーサーが、戦艦アレクサンドリア号に乗っていた時の物語です ・銀河フェニックス物語 総目次 ・<出会い編>第四十話「さよならは別れの言葉」  戦艦アレクサンドリア号、通称アレックの艦。銀河連邦軍のどの艦隊にも所属せず遊軍を務めるこの艦は要請があれば前線のどこへでも出かけていく。お呼びがかからない時にはゆるゆると領空内をパトロールしていた。 * 「くっそー」  怒りながら同室のレイターが、部屋に入ってきた。 「また、逃げられたのか」  今日は、戦闘機

銀河フェニックス物語<少年編> 自由自在に宙を飛ぶ(2)

レイターは”逃げのハミルトン”を捕まえることができなかった。 ・銀河フェニックス物語 総目次 ・【自由自在に宙を飛ぶ】(1) *  ある日、レイターがチラリと私の顔を見ながら寄ってきた。あの顔は何か頼み事をする気だな。 「アーサー、お願いがあるんだ」  やっぱりだ。 「ノア海戦とハロタ決戦の映像データと、航行ログが見てぇんだけど」  ノア海戦はハミルトン少尉が大活躍してエースパイロットとして表彰された五年前の戦いで、一方のハロタ決戦は少尉に敵前逃亡の疑惑がかかった三年

銀河フェニックス物語<少年編> 自由自在に宙を飛ぶ(3)

アーサーの相談を受けて、アレック艦長はレイターに航行ログを見せることを許可した。 ・銀河フェニックス物語 総目次 ・【自由自在に宙を飛ぶ】(1)(2) 「対戦航行ログについて、お前に閲覧権限を付与することになった」  と私がレイターに伝えた時の顔は傑作だった。 「本当か? 本当か? 俺、見てもいいの?」 「その代わり、ブツブツと声に出すのを止めてくれないか」 「わかった、わかった。ありがとう、ありがとう。アーサー、お前、本当にいい奴だよ。思ってた通りだよ。すごい、いい奴だ

銀河フェニックス物語<少年編> 自由自在に宙を飛ぶ(5)

敵であるハゲタカ大尉の航行ログは美しい軌跡を描いていた。 ・銀河フェニックス物語 総目次 ・【自由自在に宙を飛ぶ】(1)(2)(3)(4)  レイターはモニターの前でブツブツとつぶやきだした。 「右六十三度旋回しながら、補助噴射。機体傾けたまま、発射…」  自分が作った航行ログを見ながらハゲタカ大尉の操縦をトレースしている。 「つぶやくのを止めてくれと言っただろう」 「あ、悪りぃ」  珍しくこいつが私に謝った。無意識のうちに口にしていたようだ。 「お前、これまでもそ

銀河フェニックス物語<少年編> 自由自在に宙を飛ぶ(6)

ハミルトンは「死んだらおしまいなんだよ。ゲームじゃないんだ戦闘は」とアーサーに伝えた。 ・銀河フェニックス物語 総目次 ・【自由自在に宙を飛ぶ】(1)(2)(3)(4)(5) *  艦長室に呼ばれた。アレック艦長が喜んでいた。 「アーサー、お前がタルバニア海戦のデータ複製を申請したから、何をしだすかと思ったら、すごいじゃないか。あのアリオロンの敵機航行ログは」 「あれを作ったのはレイターですが」 「知ってるよ。レイターとハミルトンの了解は取った。事後承諾で悪いが、アー