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銀河フェニックス物語Ⅰ【少年編】

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レイターとアーサーが十二歳から十五歳まで乗っていた、戦艦アレキサンドリア号での物語。
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2024年4月の記事一覧

銀河フェニックス物語<少年編> 第十五話(31 最終回)量産型ひまわりの七日間

 俺は夢見心地で頷く。戦闘機乗りだったモリノ副長が「お前ならS1レーサーにだってなれる」って言ったのは本気だったのか。お人好しの副長。俺はずっとあんたを殺す方法を考えてたってのに。  ジュニアクラスではエース・ギリアムが連戦連勝中だ。  師匠のカーペンターに俺は聞いた。 「俺、エースに勝てるかな?」 「エースの持ち味は強さだ。お前は速いがまだ無理だな」  あれからどれだけ経っただろう。俺はこの艦で戦闘機に乗った。地球にいたころより実機の操縦感覚が鋭くなった。エースを打ち破

銀河フェニックス物語<少年編> 第十五話(30)量産型ひまわりの七日間

**   俺はアレックの部屋でじっと気配を消してた。  アーサーは俺が撮影した座標の画像を秘匿通信で送って、鮫ノ口の捜索をさせた。ひまわりが持ってたデータはこの艦の通常回線では伝えられねぇほど秘密で重要なものだってことだ。  モニターに映るフチチの殿下は生意気で頭が悪そうだった。あいつ、操縦も下手くそだったもんな。 「中継地点に着陸します」  艦内放送でヌイの声が流れた。やばい。着いちまった。こっそりとアレックの顔をうかがう。俺の身柄はどうなるんだ? 「お、レイター、

銀河フェニックス物語<少年編> 第十五話(29)量産型ひまわりの七日間

**  アレック艦長の前にレイターを突き出し、動画を再生する。腕から通信機を外す時間ももったいない。  ここに記された鮫ノ口暗黒星雲の座標点こそ、星間物質の観測機設置場所だ。艦長は頭の回転が速い。すぐに状況を理解した。 「秘匿の緊急通信を使え」 「はい」  艦長室からフチチ駐留連邦軍のクナ中将とハヤタマ殿下にホットラインで直接連絡を入れる。 「今、送信した三十の座標点へすぐ向かってください。観測機を発見次第、回収を願います」  フチチ軍と連邦軍の方面本部が共同で鮫ノ口暗黒星

銀河フェニックス物語<少年編> 第十五話(28)量産型ひまわりの七日間

 天才も大変だということを俺は初めて知った。あいつはすべての物事を記憶する。それは便利なだけじゃないらしい。 「感情の振れ幅が閾値を超えると、その記憶が何度も目の前に再現されることがあるんだ」  銃でおっさんを撃ったシーンが、壊れた再生機のように何度も目の前で繰り返されてたっていう。恐ろしくリアルで、血の一粒一粒の飛び散る先まで見えるデータ量の詰まった映像が。  その間も日常生活を送るための脳は別に活動していて、一見何の問題もないるように他人には見える。 「前にもあったの