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銀河フェニックス物語Ⅰ【少年編】

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レイターとアーサーが十二歳から十五歳まで乗っていた、戦艦アレキサンドリア号での物語。
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2023年11月の記事一覧

銀河フェニックス物語<少年編> 第十五話(9) 量産型ひまわりの七日間

 宣戦布告も何もないまま、我が同盟は農業星系のフチチへ攻め込んだ。奇襲は司令部から命じられた作戦だった。フチチ王室が抱えている独自軍を叩くという名目だった。戦ってみると、敵は軍と呼べるほどのものを備えていなかった。  首都大空襲にも参加した。反粒子爆弾が着弾し建物が破壊される様子を爆撃機内のモニターで確認する。「よし、命中っ」興奮して声が出た。  緑の星は真っ赤に燃え上がっていた。空から見る光の渦は、故郷で見るどんなイルミネーションより美しく輝いていた。我々のこの成果がタロ

銀河フェニックス物語<少年編> 第十五話(8) 量産型ひまわりの七日間

**  拘束されて三日目。  打撲の痛みもほとんど引いた。運動不足を解消するためベッドの上で腕立て伏せをする。この部屋から出る口実としてトレーニングルームの利用を願い出たが即座に却下された。次の策を考えなければ。  部屋を見回す。トイレとシャワーが完備され、出される食事も上手い。随分と快適な牢獄だ。  我々アリオロン同盟とは違い、連邦は世襲の王政を採用している。民衆は搾取され虐げられていると聞かされていた。捕虜になったらひどい目にあうという噂があったが、実態は違っていた。

銀河フェニックス物語<少年編> 第十五話(7) 量産型ひまわりの七日間

**  この艦から追い出されねぇためには、どうすればいい? 裏社会から追われてることをモリノ副長に正直に伝えるか? いや、真面目でお節介な副長だ、話がおかしな方向にいきかねねぇ。  俺は副長と顔をあわせないように避けていた。  けど、狭い艦内だ、限界はある。 「ほい、ステーキランチだよ」  軽く焼いた肉をプレートにのせて配膳していると、モリノ副長が目の前に立っていた。 「気持ちは決まったか?」 「俺、どうしてもソラ系には帰りたくないんです」  目を見て本気だと訴えかけて

銀河フェニックス物語<少年編> 第十五話(6) 量産型ひまわりの七日間

**  僕はアレック艦長が一人の時間を狙って艦長室を訪れた。 「ふむ、敵のひまわりが鮫ノ口の機密を持っている可能性は分かった。アーサー、わかっていると思うが、この件の取扱いには注意しろ」 「はい」  もし、亜空間破壊兵器につながる情報が洩れたら大変なことになる。艦長に直接報告したのもそのためだ。  アレック艦長は不機嫌そうな顔で尋問調書を指ではじいた。 「生のアリオロン人と話す機会なんてそんなにないんだぞ。雑談でもして、もうちょっと読んで楽しい調書にしろ」 「はい」  と